転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜

れおぽん

文字の大きさ
27 / 63
文明進化(?)編

女神「テプラ(ラベルライター)送ったわ〜」→宝物庫番「【万物の真名を書き換えし創造の神具】を手に入れた……!」

しおりを挟む
「あー、マジでない。どこやったっけ、あの資料」

わたしは天界のデスクの下に潜り込んで、ガサゴソと探し物をしていた。 シュレッダーで国史を消滅させちゃった件の始末書、書き直したのにまたなくしちゃったんだよね。

「やっぱさ、整理整頓の基本は『ラベリング』だと思うわけ」 「どこに何があるか書いて貼っとけば、探す時間ゼロ秒じゃん? タイパ命っしょ!」

下界の宝物庫とか見てても、ゴチャゴチャしすぎ。 「勇者の剣」とか「魔王の骨」とか、適当に床に転がってるし。 あれじゃ間違って捨てちゃうって。

モノには名前が必要。 名前があれば、愛着も湧くし、管理もバッチリ! オフィス用品シリーズ第二弾、これ送ってあげるから、世界を分かりやすく定義しちゃってよ!

そこでこれ!

【高機能ラベルライター(キーボード式・強粘着テープカートリッジ付き)】

文字を打ち込むと、裏がシールになったテープが「ウィーン」って出てくる、事務職の必須アイテム。 ファイルの背表紙とか、引き出しとかに貼るアレね。

「これ、ボタン押してシールが出てくる瞬間が、なんかクリエイティブで楽しいんだよね~」 「ペタペタ貼って、自分だけの宝物庫を作っちゃえ!」

名前のない世界に秩序を、転送ポチー!

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

──帝国地下・王立宝物庫「未鑑定遺物の間」──

「……鑑定官殿。このガラクタの山、どう整理しろと言うのですか」

若き管理人が溜息をつく。 ここには、数千年にわたって集められた、正体不明の魔法道具や呪物が乱雑に積み上げられていた。 どれがゴミで、どれが国宝かも分からない。 触れれば爆発するかもしれない恐怖と戦いながらの棚卸し作業だ。

「嘆くな。これも修行だ……ん?」

老齢の鑑定官が、瓦礫の山の上に鎮座する『小さな箱』を見つけた。 四角いボディ。多数のボタン(キーボード)。 そして、緑色の液晶画面が薄暗い闇の中で光っている。

「古代の計算機か……? いや、文字盤がある」

鑑定官は震える指で、適当な文字キーを押してみた。 『聖』『剣』。 そして、大きく目立つ『印刷』ボタンを押す。

ウィィィィン……

「! 紙を吐き出した!」

側面から、細長い帯状の紙が排出される。 自動カッターが作動し、パチンと切り離された。

「……読める。古代語で『聖剣』と書かれている」

「ただの紙切れでは? 裏が……粘着質になっています」

鑑定官は、その小さなシールを、近くに転がっていた「ただの錆びた鉄パイプ」に貼ってみた。

ペタリ。

その瞬間、二人の空気が凍りついた。

「おい……見ろ。この鉄パイプが……『聖剣』に見えてきたぞ」

「な、なんてことだ……! ただのゴミなのに、この『御札』が貼られただけで、神々しいオーラを感じます!」

「まさか……これは物の名前を表示する札ではない」 「その存在の本質を決定づける**『真名(まな)の書き換え』**を行う神器なのか!?」

鑑定官は戦慄した。 この世の理(ことわり)において、名前とは支配そのものだ。 それを自由に書き記し、対象に貼り付けることで、因果律を上書きできるとしたら?

「試すぞ。あの、どう見ても呪われているドクロの置物を持ってこい」

部下がドクロを持ってくる。禍々しい瘴気を放っている。 鑑定官は、ラベルライターに打ち込んだ。 『可』『燃』『ゴ』『ミ』。

ウィィィン……パチン。

シールをドクロの額に貼る。

スゥ……ッ。

「き、消えた! 瘴気が消えました!」 「ただの燃えるゴミになったぞ! 呪いが『ゴミ』という概念に上書きされたのだ!」

「す、すげぇぇぇ! 神の御業だ!」

二人は狂喜乱舞した。 この宝物庫にある危険物を、すべて安全なものに書き換えられる! いや、それだけではない。 ガラクタを『国宝』に変え、ただの石ころを『ダイヤモンド』に変えることも可能なのだ!(※あくまでそう見えるだけだが、プラシーボ効果が極まっている)

「貼れ! 片っ端から貼るのだ!」 「このガラクタには『伝説の盾』! このボロ布には『天女の羽衣』!」

ウィィィン! ペタッ! ウィィィン! ペタッ!

宝物庫は、ラベルシールだらけの異様な空間に変貌していく。 やがて、部下が恐ろしいことに気づいた。

「鑑定官殿……。これ、人間にも効くのでしょうか」

「……なんだと?」

部下の視線が、鑑定官の胸元に向けられる。 鑑定官はゴクリと唾を飲んだ。

「もし、私の額に『奴隷』と貼られたら……私はお前の奴隷になるのか?」 「逆に、『王』と貼れば、私はこの国の王になれるのか……?」

欲望と恐怖が交錯する。 ラベルライターという名の「神の筆」を持つ者が、世界の創造主となるのだ。

「よ、よこせ! その機械は私が管理する!」 「いいえ鑑定官殿! あなたの額に『無能』と貼って差し上げますよ!」

「やめろぉぉ! 私のアイデンティティが書き換わるぅぅ!」 「俺は『勇者』になるんだぁぁぁ!」

二人は揉み合いになり、機械を取り合った。 その拍子に、キーボードが乱打され、意味不明な文字列が印刷される。

『ぬるぽ』『あああ』『殺殺殺』

ウィィィン……ウィィィン……

「ヒィィッ! 呪いの言葉が吐き出される!」 「触れるな! あのテープに触れたら、わけのわからない存在にバグらされるぞ!」

「テープが! テープが切れたぁぁぁ!!」

「インク切れか!? 神のインクが尽きたのか!?」 「あぁぁぁ! 世界が未完成のまま終わってしまうぅぅぅ!」

地下宝物庫の暗闇の中で、体中に「取扱注意」「割れ物」などのシールを貼り付け合った男たちが、テープ切れの絶望に打ちひしがれていた。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

「……は?」

わたしはガサゴソする手を止めて、呆然としていた。

「なんでシールごときで人生賭けてんの?」

ただの整理整頓グッズだよ? 貼ったからって中身変わんないから。 鉄パイプは鉄パイプだし、ドクロはドクロだから。

「『真名の書き換え』って何?」 「そんなデスノートみたいな機能ついてないから!」

しかも、お互いの顔にシール貼りまくってるし。 お爺ちゃんの額に『天地無用』って貼ってあるけど、逆立ちさせちゃダメってこと? 部下の人、『生もの』って貼ってるけど、腐るの?

「意図としては、キレイに収納して欲しかっただけなのに……」 「なんか、存在論的な哲学論争の末に、取っ組み合いの喧嘩になっちゃった?」

ま、いっか。 少なくとも、どれがゴミかはハッキリしたみたいだし(全部ゴミって貼ってあったけど)。 整理整頓への第一歩は踏み出せたってことで!

女神「あ、わたしの始末書あった! ……って、これ『裏紙』って書いてあるじゃん。捨てるとこだった~!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月中旬出棺です!! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...