転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜

れおぽん

文字の大きさ
25 / 63
女神、現代を布教したい編

女神「ストップウォッチ(スポーツ用)送ったわ〜」→現場監督「【命の残量を刻み減らす死神の懐中時計】だ……!」

しおりを挟む
「あー、目が回る。ローションの件、マジやりすぎた」

わたしは天界のデスクで、前回騎士団が森の奥まで滑っていった映像を見ながら反省会を開いていた。 物理的な干渉って、制御不能になると大惨事だよね。 やっぱ「力技」じゃ文明は進まないわ。

「大事なのはパワーじゃない。『効率』っしょ!」

今日の下界チェック。 王国の辺境で、巨大な防壁を建設している現場にズームイン。 何百人もの労働者が、石を運んだり、土を掘ったりしてるけど……。 遅い。マジで遅い。 ダラダラ歩いてるし、お喋りしてるし。

「あんなペースじゃ、完成する頃には国が滅んでるって」 
「時は金なり! タイム・イズ・マネー! 時間を意識させなきゃ!」


彼らに必要なのは、時間の流れを可視化し、スピード意識を高めること。 スポーツ選手だって、タイムを計るから速くなるんだし!

そこでこれ!

【デジタルストップウォッチ(1/100秒計測・ラップタイム機能付き)】

首から下げる黄色いアイツ。 ボタンを押せば数字が勢いよくカウントアップされ、もう一度押せば止まる。 単純だけど、人間に「焦り」と「競争心」を植え付ける最強のツール。

「これで作業タイムを計って、最速レコード目指しちゃって!」 
「目指せ、建設業界のウサイン・ボルト!」


レッツ・タイムアタック! 転送ポチー!

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
 ──国境防衛線・大防壁建設現場──

「ええい、手を動かせ! 日が暮れるぞ!」

現場監督のボルフが鞭を振るう。 労働者たちは疲弊しきっていた。 終わりの見えない重労働。士気は底辺を這っている。

「監督……もう無理です……」 
「腹が減って力が出ねぇ……」

その時、ボルフの足元に、鮮やかな黄色の『奇妙な首飾り』が落ちてきた。

「なんだ? 金……ではないな」

ボルフはそれを拾い上げた。 中央には灰色の窓。その中には『00:00:00』という数字が並んでいる。 上部には二つの突起。

「魔導具か? 数字が……静止している」

ボルフは何気なく、右側の突起を押した。

ピピッ!

電子音が鳴り、一番右の数字が猛烈な勢いで回転を始めた。 『00:00:01』……『05』……『10』……。

「うおっ!? 動き出した!」 
「数字が増えていく! 心臓の鼓動よりも速く!」

ボルフは戦慄した。 この数字は何だ? 何が増えている? いや、違う。この機械は何かを「吸い取って」カウントしているのだ。

「……時間だ」

ボルフの直感が、最悪の解釈を導き出した。

「これは時間を生み出しているのではない。『我々の寿命を吸い取って数値化している』のだ!」

「な、なんですと!?」 労働者たちが青ざめる。

「見ろ! この猛烈な速度を! 我々がこうして呆けている間にも、生命の灯火が秒単位で削り取られている!」 
「神は怒っておられる! 『貴様らの命など、あとこれだけだ』とカウントダウンを開始されたのだ!」

「ひぃぃぃ! 死ぬ! 数字がいっぱいになったら死ぬんだ!」

「監督! 止めてください! その死神の時計を止めてください!」

ボルフは再びボタンを押した。 ピピッ! 数字が止まる。

「止まった……。だが、見てみろ」

止まった画面には『00:15:89』。 ボルフは深刻な顔で告げた。

「止めている間、我々の時間は進まない。つまり……『仕事をしていない時間は、生きたことにならない』ということだ!」 
「逆に、この数字が動いている間だけ、我々は生きることを許されている!」

(※真逆の解釈だが、パニック状態の彼らには通じない)

「動かせ! 数字を回せ! そしてその数字に追い越されないよう、死に物狂いで働くのだ!」 
「寿命が尽きるのが先か、壁ができるのが先か、神との競争だぁぁぁ!!」

ピピッ!

再起動音と共に、地獄のデスマーチが始まった。

「うおおおお! 走れぇぇぇ! 秒針に殺されるぞぉぉぉ!」 
「石を積め! もっと速くだ! 1秒で1個積め!」

労働者たちは恐怖に駆られ、限界を超えた速度で動き始めた。 本来なら二人で運ぶ岩を一人で担ぎ、走る。 セメントが乾く前に次を積む。

「速い! いつもの3倍の速度だ!」 
「監督! 北側の壁、もう組み上がりました!」

「よし! 次は南だ! 休むな! 休めば時計が止まり、貴様らの心臓も止まるぞ!」

現場は狂乱の渦と化した。 安全確認? 基礎工事? そんなことをしている暇はない。 ただひたすらに、目の前の数字が増えるスピードに合わせて、何かを積み上げ続けるだけだ。

そして数時間後。 信じられない速度で、巨大な防壁が完成した。 ……かに見えた。

グラッ……。

「あ」

基礎を無視して積み上げられた石の塔が、風に煽られて揺らぐ。

「監督……。なんか、傾いてませんか?」 
「馬鹿者! 気のせいだ! 数字を見ろ! まだ回っているぞ!」

ズズズズズ……ドゴォォォォォォン!!!!

完成したはずの壁が、音を立てて崩落した。 あまりに雑な工事と、接着不足が原因だった。

「わ、わぁぁぁぁ! 崩れたぁぁぁ!」 
「俺たちの命(労働時間)が、瓦礫の山に!」

ボルフは崩れゆく壁を前に、ストップウォッチを握りしめて絶叫した。

「なぜだぁぁぁ! あんなに速く動いたのに!」 
「速さだけでは……神は満足されなかったのかぁぁぁ!!」

現場には、粉塵と徒労感、そして無慈悲に時間を刻み続ける電子音だけが残された。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

【パート3】天界の女神パート 「……はぁ」

わたしは深く、深ーくため息をついた。

「速けりゃいいってもんじゃないのよ」

崩れちゃったじゃん。 ジェンガじゃないんだからさぁ。 基礎とか、手順とかあるでしょ?

「『寿命を吸い取る』って何?」 
「ただの経過時間だから! むしろ長生きしたかったら休んで!」

でも、今回の件でハッキリわかったわ。 人間って、ただ急かしてもダメなのね。 パニックになって、クオリティ下がるだけ。

「必要なのは『スピード』じゃない……『管理』よ」
 「正しい手順、正しい記録、そして効率的な事務処理!」

そう、肉体労働を効率化するには、まず頭脳労働(オフィスワーク)を極めなきゃいけないんだわ! 野蛮な現場主義はもう古い。これからは「スマートな事務の時代」よ!

「よし、決めた! 次は彼らに、文明的な『デスクワーク』ってやつを叩き込んでやる!」

(こうして女神は、次の「シュレッダー」や「コピー機」などのオフィス用品シリーズへと暴走していくのであった……)

「待ってろ異世界! お前らを一流のビジネスマンにしてやるからなーーっ!?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月中旬出棺です!! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...