転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜

れおぽん

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異世界スパルタ義務教育化計画

女神「黒板とチョーク送ったわ〜」 →軍議「【深淵の石板に刻まれし白骨の予言】におののけ……!」

「よーし、今日からスパルタ教育開始ね!」

「まずは形から! 勉強といえばこれでしょ!」

わたしはカタログ(スクール用品特集)を広げて、鼻息荒くタップする。

「あいつらさ、議論が空中戦すぎんのよ」

「言った言わないで揉めるし、図を描いても地面じゃすぐ消えるし」

「情報を共有する『場』が必要なわけ!」

そこでこれ!

【学校用・大型可動式黒板(暗線入り・マグネット対応)&ダストレスチョーク(白・赤・黄)&黒板消しクリーナー付き】

教室のド定番。 深緑のボードに、カツカツと文字を書くあの感触。 粉が飛びにくいダストレスチョークで、健康にも配慮した優しさ設計。

「これに作戦とか書き出して、みんなで『あーだこーだ』議論しなよ!」

「これぞ『知の共有』! アカデミックな風、吹かせちゃって~!」

はい、青雲の志、転送ポチー!

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


──王国軍・最前線司令部「作戦天幕」──

「……敵の布陣が読めん。霧が出てきた」

将軍ベルガルドは、泥だらけの地図を睨みつけていた。 斥候(せっこう)からの情報は断片的。 参謀たちも疲労困憊で、議論は堂々巡りを繰り返している。

「くそっ……。我々の運命は、五里霧中か……」

その時。 天幕の中央に、ズズズン……と重苦しい音を立てて『深緑の巨壁』が出現した。

「な、なんだ!? モノリスか!?」

人の背丈ほどもある、巨大な長方形の板。 その色は、森の奥深くよりも濃く、夜の闇よりも深い『深緑(アビス・グリーン)』。 そして、足元にはキャスター付きの銀色の脚。

「……壁だ。だが、ただの壁ではない」

ベルガルドが近づく。 壁の下にある受け皿には、数本の『白い棒』と、『茶色い毛のついた直方体』が置かれている。

「白い棒……。これは……骨か?」

参謀が震える声で囁く。 
「将軍、これは『聖人の指骨』かもしれません」 

「この深緑の闇に、聖なる骨で『未来』を刻めという、神の啓示かと!」

「なるほど……。未来を、刻むか」

ベルガルドは、白いチョークを一本手に取った。 軽い。そして、指先に粉がつく。 これは『遺灰』だ。死者の魂が凝縮されているのだ。

彼は覚悟を決め、黒板の表面に、敵軍を表す『×』印を書き込もうとした。

カツッ……。

キィィィィィィィーーーッ!!!!

「ぐわぁぁぁぁぁ!!??」

天幕内に、脳髄を直接やすりで削られるような、不快極まりない高音が響き渡った。 (※チョークの角度が悪くて音が鳴っただけ)

「ひぃぃぃ! 悲鳴だ! 板が叫んだ!」 
「呪いだ! 深淵に傷をつけた報いだぞ!」

将軍ベルガルドも耳を押さえてうずくまる。 
「恐ろしい……! だが、見ろ!」

深緑の闇の中に、くっきりと浮かび上がる白い線。 それは、松明の光を受けて妖しく輝いている。

「書けた……! 闇の中に光が刻まれた!」 
「これぞ『運命の記述』! 一度書かれたことは、決して覆らぬ絶対の予言となるのだ!」

「将軍! 試しに『敵の敗北』と書いてください!」 
「いや待て! 書き損じたらどうする? 予言が暴走するぞ!」

「消せ! 一度消して書き直すのだ!」

ベルガルドは、受け皿にあった黒板消し(イレーザー)を掴んだ。 そして、恐る恐る白い線の上を擦った。

ザザッ……。

ボフッ。

「うわっ!?」

白い粉が舞い上がる。 線は消えたが、粉塵がキラキラと空中に拡散した。

「き、消滅した……!」 
「存在を……粉に変えて霧散させたぞ!」

「ゴホッ! ゲホッ! 煙だ! 白い煙が出た!」

吸い込んだ参謀が咽(む)せる。 
「はっ……! 将軍、この煙……少し甘い匂いがします(※石膏の匂い)」 「吸い込むと……頭が白くなるようです……」

「なんと……! これは『忘却の霧』か!」 「書けば現実に、消せば虚無に! そしてその代償として、術者の記憶を蝕むのか!」

「だがやるしかない! この戦、勝つためには!」

ベルガルドは狂気じみた形相で、再びチョークを握りしめた。 そして、黒板に向かって猛烈な勢いで書き殴り始めた。

カッカッカッカッカッ!!(高速筆記音)

「敵! ここ! 包囲! 殲滅!」

「違う! そこじゃない!」
「消せ! その作戦は『死』だ!」

ボフッ! ボフッ! ボフボフボフッ!!

黒板消しが乱舞する。 書記と抹消が繰り返されるたびに、天幕内は白いチョークの粉で充満していく。

「見えん! 真っ白だ!」
 「ゲホッ! オエッ! 肺が……肺が白く染まる!」

「構わん! もっと書け! もっと粉を撒け!」 
「我々は今、神と対話しているのだぁぁぁ!」

やがて、全身真っ白になった将軍と参謀たちは、粉塵爆発寸前の天幕の中で、互いの顔も見えないまま叫び続けた。

「キィィィィィッ!!(黒板引っ掻き音)」 
「ギャァァァァァ!!(精神崩壊)」

「書けたぞ! これが『勝利の文字』だ!」 (※実際には粉まみれで何も読めない)

「おおお! 白い! 世界が白いぞぉぉぉ!」

翌朝。 敵軍の偵察兵が見たのは、真っ白な粉を全身にまとい、幽霊のように白目を剥いて立ち尽くす王国軍首脳部の姿であった。 敵は「アンデッドの軍団か!?」と恐怖し、戦わずして撤退したという。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

「……はぁ」

わたしはモニターの前で、深ーいため息をついた。

「汚っ」

画面の中、おじさんたちが粉まみれになってる。 ドリフのコントのオチみたいになってるじゃん。

「なんで換気しないの?」 「『忘却の霧』って何? ただの粉塵だから! 肺に悪いだけだから!」

(──ねぇ、学習効果ゼロなの? バカなの?)

(──せっかくの『知の共有』が、ただの『粉の共有』になってるんですけど……)

しかも、あの「キィィィ!」って音。 あれ聞いて「悲鳴だ!」とか言ってるけど、チョークの持ち方が悪いだけだから。 もっとこう、短く持って、角度をつけて……!

「あーもう! 基礎がなってない!」

「次はもっと、こう、手元でじっくり学べるやつにする!」

「粉が出なくて、静かで、でも知性を刺激するアレよ!」

「今度こそ、お行儀よくお勉強させてやるからなーーっ!?」
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