転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜

れおぽん

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異世界スパルタ義務教育化計画

女神「先生の赤ペン(解答インストール機能付き)送ったわ〜」 →賢者「【絶対真理の奔流に自我を焼かれる虚無の啓示】を受けた……!」

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「前回、あいつら答え合わせすらビビってできなかったじゃん?」 「やっぱさ、教育には『導き手』が必要なのよ!」

わたしは天界のデスクで、赤いボールペンをくるくると回していた。 横ではミオちゃんが、前回の賢者たちのパニック映像を見て頭を抱えている。

「でもセンパイ……。現地の人に『先生』をやらせるって、どうやって?」 
「彼らの知識レベルじゃ、センパイのドリルの『正解』は理解できないんじゃ……」

「だ・か・ら! わたしの知識を直接ダウンロードさせんの!」

わたしは不敵に笑った。 神の叡智(ただし小学一年生レベル)を、一時的に彼らの脳内にインストールする。 そうすれば、彼らは迷いなく丸付けができるはず!

そこでこれ!

【先生の採点用・赤ボールペン(神の知識データ『小1国語・算数』入り)】

これを持った瞬間、使用者の脳内にドリルの全解答と解説が流れ込む、ハイテク・ラーニング・デバイス。 迷わず「花丸」が描けるようになる、教師の神器。

「これを一番賢そうなジジイ……アルトリウスに持たせる!」 
「そうすれば彼が『先生』として覚醒し、みんなを導いてくれるはず!」

「知識のインストール! これぞスマート教育!」

(──頼むよジジイ! あんたがこの世界の金八先生になるのよ!)

叡智の赤き光、転送ポチー!

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


──王立魔導図書館・禁書解読室──

「……答えが、わからん」

賢者アルトリウスは、憔悴しきっていた。 目の前には、自分たちが必死に埋めたドリル。 しかし、その答えが正しいのか、間違っているのか。 「正解」を知らぬまま進む恐怖に、精神は限界を迎えていた。

「誰か……! 誰か私に『真理』を教えてくれ……!」

その時。 机の上に、一本の『鮮血の如き赤き杖(赤ペン)』が突き刺さった。

「!!」

「賢者様! 天から赤き光が!」

アルトリウスは震える手で、その杖を握りしめた。 瞬間。

バチバチバチバチッ!!!!

「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!??」

脳髄に、膨大な情報が直接叩き込まれる。 それは宇宙の真理。神の領域の知識(※学習指導要領)。

『1たす1は、2です』 『犬は、わんわん』 『氷が解けると、水になります』

「な、なんだこの情報はぁぁぁ!?」

アルトリウスは白目を剥いて絶叫した。 あまりにもシンプル。あまりにも純粋。 だが、それゆえに──彼の持つ「魔導の常識」と決定的に矛盾した。

(馬鹿な……! 『1+1=2』だと!?) (魔力の共鳴係数は!? 環境マナの干渉は無視するのか!?) (条件なしで『2』になるなど、ありえん! これは『完全なる固定化された世界』の理か!)

彼の脳内で、数万の魔導式が崩壊していく。 「氷が解ければ水になる」? 違う! 水属性のエーテル変換には、触媒と詠唱が必要なはずだ! それを「ただ溶ければ水」と言い切る、この暴力的なまでの単純さ!

「わからん……! わからんぞぉぉぉ!」

アルトリウスは赤ペンを握りしめたまま、床を転げ回った。

「賢者様!? どうされました!」 「神の知識を得たのでは!?」

「違う! これは知識ではない!」 「これは……『思考の放棄』だ!」

アルトリウスは涙を流して訴えた。 「神は仰っている! 『余計なことを考えるな』と!」 「『1+1』は、ただ『2』なのだ! そこに理由も、過程も、ロマンもない!」 「ただ結果だけが存在する……『虚無の真理』なのだぁぁぁ!」

彼はドリルを開き、震える手で赤ペンを走らせようとした。 しかし、手が動かない。

「○(マル)が……つけられない!」 「この答えは合っている(と神は言う)。だが、私の魂がそれを拒絶している!」 「『夕焼けが赤い』のは、太陽光の散乱ではないのか!? ただ『きれいだから』で済ませていいのかぁぁぁ!」

あまりに高度な(?)シンプルさに、賢者の複雑すぎた脳はショートした。

「許してください……! 私のような卑小な存在には、神の『単純(シンプル)』さは受け止めきれません!」 「深淵だ……! 『1+1=2』という深淵が、私を飲み込もうとしているぅぅぅ!」

プツン。

アルトリウスの理性の糸が切れた。 彼は虚ろな目で、赤ペンを宙に向け、ブツブツと呟き始めた。

「……ワンワン……ニャーニャー……」 
「……リンゴは赤い……バナナは黄色い……」

「賢者様ぁぁぁ!!」 「知識の濁流に飲まれた! 賢者様が『幼児退行』してしまわれたぞぉぉぉ!」

王立図書館には、世界一の賢者が、幼児レベルの言葉を呪文のように繰り返し、赤ペンで自分の顔にグルグルと花丸を描き続けるという、悲劇的な光景が広がっていた。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


「……嘘でしょ?」

わたしは赤ペンをへし折っていた。 ミオちゃんが「ひぃっ」と悲鳴を上げる。

「なんで幼児退行してんの!?」 「『1+1=2』だよ!? そこ疑い出したらもう何も進まないじゃん!」

「『思考の放棄』って何!? 基礎だよ基礎!」

ミオちゃんがおずおずと言う。 「……センパイ。たぶん、彼らにとって『基礎』っていうのは、数百年かけて積み上げる魔術理論のことなんです……」 「センパイの『答え』は、彼らにとっては『過程を無視した魔法』に見えるのかも……」

「めんどくさっ!!」

わたしは大きくのけぞりながら頭を抱えた。

 知識を与えてもダメ。 
自習させてもダメ。 
先生役を作ろうとしてもパンクする。

「……詰んだ?」 「もしかして、教育って無理ゲー?」

へらり、と落ち込みかけるわたし。 だが、ミオちゃんが小さな声で呟いた。

「……あの、センパイ」 「知識を与えるんじゃなくて……『一緒に考える』仲間がいれば、あるいは……」

「一緒に……?」

わたしの脳裏に、あるアイデアが閃いた。 人間じゃ無理なら、人間じゃない「完璧な教育マシーン」を送ればいいんじゃない? 感情を持たず、ただ淡々と、根気強く教え続ける、鋼鉄の教師を!

「それだわ!!」

「次はもう、人間の手には負えない!」 「科学の力で強制教育よ!」

「AI搭載! おしゃべり知育ロボットを送るわ!」

「機械相手なら、遠慮なく学べるでしょ!? ……たぶん!」
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