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第一の事件 「浮き花の姫」事件
弍
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依頼人を見送り、二人は一階の居住スペースに移る。そっと障子を閉めたあと、一樺は琳に尋ねた。
「、、、花の姫様ってなに?っていうか、琳って幽霊を信じる人だっけ」
「信じてはないよ。なんとなく言っただけ。その方が話が通じるかなって思って」
琳はひらりと手を揺らしてから、座布団の上へおさまった。一階のスペースのうち、土間で繋がっている台所を除き、ほとんど畳が敷かれている。そのため座布団は必需品だ。琳の座布団にはカワセミが描かれている。ちなみに一樺の座布団には真っ赤な椿があしらわれており、青系でまとめられている琳のものと比べると対照的だ。
「で、依頼人さんはなんていう方だっけ」
拍子抜けしてしまう琳の質問に、一樺は答える。
「あの子は、薫留。ここに来てからあたしはよく会ってるんだけど、、、琳は初対面だったよね」
「、、、あぁ、、、名前は聞いたことあるね。青嵐堂の娘さんでしょ」
琳が言った青嵐堂というのは、楽路に面している呉服屋の大店だ。浮城中に顧客がいるとも言われており、品質も文句なしのため、評判も上々だ。
依頼人ー薫留が上等な着物を着ていたのも、生家が裕福だというものあるし、主人である五十嵐満之丈が親バカだからというのも、大きな要因だ。
「でも、琳ってよく青嵐堂に行ってるよね」
「人がいないときに行くからね。娘さんにも会ったことはなかったし」
「ふうん」
琳は疑問が解決したからか、ゴロリと畳の上に横になる。慌てて一樺は駆け寄り言った。
「ねぇ、謎は解けたの?教えてよ」
「あぁ、、、なんとなくは」
「じゃあ尚更!」
「細かいことはあとで話すよ。眠くてしょうがないから、、、」
大きな欠伸をすると、一樺にワンフレーズ。
「青嵐堂に、亡霊がいるわけよ。しかも、あの薫留さんに良く似た人がさ」
琳が再び稼働したのは、夕方近くなってからだった。毎度のことだが、一樺にしてみれば複雑。ただきちんと理由もわかっていて、琳の頭脳があまりにも多くのことを同時処理するからだろうと考えている。平均値の頭脳を持つ一樺には起きない症状なのだから、特殊と言わざるおえない。
「今日は夕焼けが綺麗だね」
「ってことは明日晴れるじゃん!よかったーあたし、雨が嫌いなんだよね、、、」
立ち並ぶ商店の隙間から、橙に透き通った空が見える。琳を伺うと、純粋な瞳をしていた。薫留に向けていたような鋭敏さはうせ、年齢並みのあどけなさ。
いつもこんな表情をしてくれればいいのに。あのときから、関係性は変わらないままだ。
、、、ほんの少しくらい相談してくれればいいのに。
台所で夕飯のチャーハンを炒めながら、漠然と思っていたそのとき、一樺のかたわらに霧が現れ、人の形を作る。
「、、、うわぁ!おいしそう!琳の料理と違って、一樺のやつは絶品だものねっ!」
18歳を数えた一樺と比べ、少し小さな少年。ぱっと見では15歳ほどに見える。朗らかな声で一気に言い募ると、大雑把な笑顔を浮かべた。
そして、畳でぼんやりしていた琳に近寄り、その顔を両手で挟む。
「どうしたの?一段と疲れてるじゃん。あんまし琳は頭を使わない方がいいんだよ?自分で分かってるだろうけどさっ」
「、、、理弦は元気でいいね。一日でそんな回復できるもの」
理弦の足は少しだけ畳から浮いている。当然だ。理弦は妖の力の塊。生きているものとは違う。
「、、、花の姫様ってなに?っていうか、琳って幽霊を信じる人だっけ」
「信じてはないよ。なんとなく言っただけ。その方が話が通じるかなって思って」
琳はひらりと手を揺らしてから、座布団の上へおさまった。一階のスペースのうち、土間で繋がっている台所を除き、ほとんど畳が敷かれている。そのため座布団は必需品だ。琳の座布団にはカワセミが描かれている。ちなみに一樺の座布団には真っ赤な椿があしらわれており、青系でまとめられている琳のものと比べると対照的だ。
「で、依頼人さんはなんていう方だっけ」
拍子抜けしてしまう琳の質問に、一樺は答える。
「あの子は、薫留。ここに来てからあたしはよく会ってるんだけど、、、琳は初対面だったよね」
「、、、あぁ、、、名前は聞いたことあるね。青嵐堂の娘さんでしょ」
琳が言った青嵐堂というのは、楽路に面している呉服屋の大店だ。浮城中に顧客がいるとも言われており、品質も文句なしのため、評判も上々だ。
依頼人ー薫留が上等な着物を着ていたのも、生家が裕福だというものあるし、主人である五十嵐満之丈が親バカだからというのも、大きな要因だ。
「でも、琳ってよく青嵐堂に行ってるよね」
「人がいないときに行くからね。娘さんにも会ったことはなかったし」
「ふうん」
琳は疑問が解決したからか、ゴロリと畳の上に横になる。慌てて一樺は駆け寄り言った。
「ねぇ、謎は解けたの?教えてよ」
「あぁ、、、なんとなくは」
「じゃあ尚更!」
「細かいことはあとで話すよ。眠くてしょうがないから、、、」
大きな欠伸をすると、一樺にワンフレーズ。
「青嵐堂に、亡霊がいるわけよ。しかも、あの薫留さんに良く似た人がさ」
琳が再び稼働したのは、夕方近くなってからだった。毎度のことだが、一樺にしてみれば複雑。ただきちんと理由もわかっていて、琳の頭脳があまりにも多くのことを同時処理するからだろうと考えている。平均値の頭脳を持つ一樺には起きない症状なのだから、特殊と言わざるおえない。
「今日は夕焼けが綺麗だね」
「ってことは明日晴れるじゃん!よかったーあたし、雨が嫌いなんだよね、、、」
立ち並ぶ商店の隙間から、橙に透き通った空が見える。琳を伺うと、純粋な瞳をしていた。薫留に向けていたような鋭敏さはうせ、年齢並みのあどけなさ。
いつもこんな表情をしてくれればいいのに。あのときから、関係性は変わらないままだ。
、、、ほんの少しくらい相談してくれればいいのに。
台所で夕飯のチャーハンを炒めながら、漠然と思っていたそのとき、一樺のかたわらに霧が現れ、人の形を作る。
「、、、うわぁ!おいしそう!琳の料理と違って、一樺のやつは絶品だものねっ!」
18歳を数えた一樺と比べ、少し小さな少年。ぱっと見では15歳ほどに見える。朗らかな声で一気に言い募ると、大雑把な笑顔を浮かべた。
そして、畳でぼんやりしていた琳に近寄り、その顔を両手で挟む。
「どうしたの?一段と疲れてるじゃん。あんまし琳は頭を使わない方がいいんだよ?自分で分かってるだろうけどさっ」
「、、、理弦は元気でいいね。一日でそんな回復できるもの」
理弦の足は少しだけ畳から浮いている。当然だ。理弦は妖の力の塊。生きているものとは違う。
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