物理部のアオハル!!〜栄光と永幸の輝き〜

saiha

文字の大きさ
27 / 37

26話:力学と波力のボレロ(後編)

しおりを挟む
 すぐに再開された爪楊枝タワー大会だったが、寺野と下原は怒られるどころか梓馬から褒められていた。

「お前らよくやったな!調べたところではあのタービンで動く大会用の酸は何者かによってピラニア酸に変えられてたようだぞ。あと少し遅れていたら、溶け死んでたかもな!(笑)」
「そうですね…とりあえず、今は大会の行方を見守りましょう!」
「寺野の言う通りだな!先生も審査員長だからここにいるとまずいので戻りましょう」

 それぞれの席に戻ったが、下原の寺野は偶然な事に笑いまくった。彼らの建てた爪楊枝タワーは、そんなピラニア酸に負けるほどのヤワなものではなかったので2つ目の審査をパスした。これぞまさに石角マジック。

「よし、最後は津波と液状化現象か」

 石角がつぶやいた津波と液状化も今回の大会初の項目で、今現在残ったタワーは35タワーだった。進行係と最高審査員を兼任している梓馬が壇上へ立った。

「今残っているタワーは35本!という事は、35校の物理部が残った。65校の方々は惜しかったが、最後まで楽しんでくれると嬉しい。これから行われる津波は5回に分けて行う。最初は小規模な程度の津波から観測史上最大クラスまでと津波を発生させるのでそのつもりで」

 会場内は盛り上がっていた。参加した学校にも参加賞として何かと豪華であることから、脱落しても殆どの人たちが残っていた。

「さて、残る学校の本当のお手並みを拝見といきますかね!我々石角率いる物理部が強いってことを証明するべき時が来た」
「それもそうだね、でも折れて接着剤付けてどうにか持ち堪えてるけど大丈夫かな」

 寺野と石角が話している中、接着剤を購入して組み立て直した湯田と下原が来た。

「その心配はないやろ。基盤さえ出来てれば押し寄せる津波に勝てるはず、寺野のせいでこんなバカなことになったんだからな」
「それは言えてるわ。これが商品とかだったら弁償じゃ済まされないよ」

 ブラック下原とアニリンブラック湯田のブラックジョークに寺野は笑うことしか出来なかった。そんな津波も一つずつタワーが流されていく様子を見ていた。残り20本となった時に、石角たちのタワー審査が始まった。

「流れるなよ…?」
「ここで決めればあとは大丈夫のはず…!」

 左右田と鶴居は祈った。5回の津波が終わり、瞑っていた目を見開いた。

「やった…残ってる!!」
「あとは液状化現象だ。節目の優勝は俺たちがあの水素自動車を貰うぞ!」

 物理部員は歓喜した。しかし、審査側から1つのルールが追加された。

「えー、この新項目でこのタワー1本だけ残った場合は無条件で優勝になります!もう既に自動車会社と優勝トロフィーもここにありますのでそのつもりで先ほどの審査を合格した学校は結果を見届けて下さい」

 梓馬の最終判断により、このルールが適用された。喜ぶ姿を見て親指立てて喜んでいた。その後の行われた審査で、いくつものタワーが津波の脅威に押し流されて中には悔し涙を流す人も続出した。最後のタワーとなり、審査に合格したのは石角たちだけだった。

「このタワーが残れば液状化現象…耐えれなかったら俺たちの優勝」
「さぁ…どうなる?」

 同様にしてまた祈る。目を瞑って5回行われる津波の結果を待った。終了後、恐る恐る目を開けると無慈悲な事にそのタワーは倒れる事なくその姿を保っていた。

「現実は甘くないですね、仕方ない」
「流石に生クリームしゃぶしゃぶ並の甘さじゃこの大会は終わらないよね」

 石角と湯田は呟いた。次の液状化現象審査は地震で地盤が緩み、沈んでしまう時にどこまで耐えれるかまたは、対応力が問われるものだった。改良時間が設けられており、その計算も欅は既に答えを出していた。

「この足のようなものを作っておいた。浮力で最後は勝負する」
「なるほど、意味がよく分からん!」

 欅の創造力は他の物理部よりも凌駕していた。作業が終わると同時に時間を告げるチャイムが鳴り、2校による一騎討ちとなった。この決勝では、タワーがそのまま沈み倒れるまで行うという事だった。

「これで勝つぞ。水素自動車は俺たちのだ!間違えても湯田、壊すなよ?」
「何で僕だけこうなの?」

 石角の疑問に疑問で返す湯田だったが、すぐに始まった。固唾を飲む物理部員はただひたすらタワーを見守ることしか出来なかった。

「ん?この液ってダイラタンシーだ。この勝負、勝ったな」
「何でこれがダイラタンシーって言えるの?」

 欅の観察力によく分からない喬林だった。すぐに欅はダイラタンシーについて話した。

「ダイラタンシーは刺激を与える事で硬くなるが、それは一瞬のみ。すぐに液体へと戻るんだ。今は何も加えていない状態でタワーの重さのみでやってるんだと仮定したら、この勝負は俺たちのタワーが無限に保てれる」
「なるほど…本当だ。足のようなもののおかげで沈んでない。相手のタワーはもう壊滅ギリギリにまで迫ってる」

 相手のタワーも途中耐えていたが、タワーの基礎である足が弱かった。そして何もなかったかのようにそのまま相手のタワーは、綺麗な放物線を描いて倒壊した。

「俺たちの優勝だ!」
「やったー!!」

 石角の優勝宣言に部員たちはハイタッチして勝利を噛み締めていた。梓馬は、ただひたすら拍手していた。この優勝は海外にいる前桜へ良い土産が出来たと物理部員は確信した。最後まで計算し尽くした欅は、ただひたすら涙を流していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...