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(……いやだぁぁぁ! やっぱり行きたくない! このままこの別荘を四次元空間に隠して、歴史から抹消してしまいたい!!)
出発の朝。私は、修復したばかりの豪華な馬車の前で、目に見えないほどの速さでガタガタと震えていた。
王都。それは私にとって、コミュ障の天敵がひしめく魔窟だ。
どこを見ても人間、人間、人間……。しかも、私の「悪女」という二つ名を楽しんでいるような連中ばかり。
(マカロン……マカロンのためよルミール。あの虹色に輝く奇跡を食べれば、全ての恐怖は糖分と共に消え去るはず……!)
私は、自分に言い聞かせるように、魔力で固めた拳を握りしめた。
あまりの気合の入り方に、私の顔面は「これから王都に壊滅的な呪いを振りまき、全人類を支配下に置こうとする覇王」の表情を完成させていた。
「……っ!」
私が馬車に一歩踏み出しただけで、見送りに来ていた村の人々(魔法でお世話になったので少し仲良くなった)が、一斉に道を開けてひれ伏した。
「お、お気をつけて……! 賢者様が王都を焼き尽くさないことを祈っております!」
(焼かないわよ! ただお菓子を食べに行くだけよ!)
私は心の中で絶叫したが、口から出たのは重厚な沈黙だけだった。
馬車の中に入ると、そこには既に正装を整えたカイル様が待っていた。
「おはよう、ルミール。今日の『心の声』は、いつにも増してバイブレーションが効いているね。……そんなに僕との王都デートが楽しみなのかな?」
(デートじゃないわよ! 出撃よ! それにカイル様、その服、反則だわ! 軍服風の礼装なんて、私の心臓を物理的に握り潰す気なの!?)
カイル様は、漆黒の布地に金色の刺繍が施された、目の毒すぎるほど端正な姿をしていた。
私はボードを取り出し、震える手で文字を書いた。
『カイル様、その格好は威圧感がありすぎます。私がさらに怖く見えるので、もっと地味な服に着替えてください。あと、王都までの道中で私が気絶したら、そのまま森に捨てていってください』
「ははは。捨てないよ。気絶したらお姫様抱っこで会場まで運ぶだけさ。……そっちの方が、王都の連中には刺激が強いかもしれないけれどね」
(……っ!? 絶対にダメ! そんなことされたら、私の社会的な死に加えて物理的な死が訪れるわ!)
私は、顔面を「今すぐこの男を時空の狭間に追放してやろうか」という鋭い眼光で固定し、カイル様を睨みつけた。
「……運ぶ、な」
(「お姫様抱っこ禁止令」を、断固として発令!)
「分かった、善処するよ。……さて、出発だ」
馬車が動き出す。
窓の外を流れていく辺境の景色。私の安息の地が遠ざかっていく。
(バイバイ、私の温泉……バイバイ、私の石像執事たち……。戻ってくるまで、家を壊さないでね)
数日の旅路を経て、ついに馬車は王都の巨大な門を潜った。
街の喧騒。人々の話し声。馬車の車輪が石畳を叩く音。
それら全てが、私の精神をガリガリと削っていく。
「見て、あの紋章……隣国の公爵家だわ!」
「乗っているのは誰かしら? ……えっ、まさか、あの『氷の悪女』ルミール様が乗っているって噂よ!」
「まさか、追放されたはずじゃ……!」
馬車のカーテンの隙間から、人々の好奇の視線が突き刺さる。
私は、緊張が限界を突破した。
(……あああああ、見ないで! 石になる! 私、今すぐ石になって門の飾りになりたい!)
「ルミール、そんなに縮こまらなくていい。君は、僕が誇る最高のパートナーなんだから」
カイル様が、そっと私の手を握った。
その温かさに、私の脳内のパニックが、ほんの一瞬だけ凪いだ。
(……カイル様。……あ。この人の手、大きい。……安心する。悔しいけど、すごく安心するわ)
私は、真っ赤になった顔(外見は「周囲の雑音全てを沈黙させる冷徹な処刑人」)を俯かせ、カイル様の手をぎゅっと握り返した。
「((((((((離さないでね、絶対よ……!))))))))」
私の「心の悲鳴」を聞いたカイル様は、愛おしそうに目を細めた。
「ああ。地獄の果てまで、離さないよ」
(……地獄!? 舞踏会ってそんなにヤバいところなの!?)
私の壮大すぎる勘違いを乗せて、馬車は王城へと滑り込んでいく。
そこには、既に私たちの到着を待ち構える、エリオット王子とラーナの姿があった。
(……決戦の時ね。マカロンのために、私は戦うわ!)
ルミールの「王都進撃」は、こうして波乱の幕を開けたのである。
出発の朝。私は、修復したばかりの豪華な馬車の前で、目に見えないほどの速さでガタガタと震えていた。
王都。それは私にとって、コミュ障の天敵がひしめく魔窟だ。
どこを見ても人間、人間、人間……。しかも、私の「悪女」という二つ名を楽しんでいるような連中ばかり。
(マカロン……マカロンのためよルミール。あの虹色に輝く奇跡を食べれば、全ての恐怖は糖分と共に消え去るはず……!)
私は、自分に言い聞かせるように、魔力で固めた拳を握りしめた。
あまりの気合の入り方に、私の顔面は「これから王都に壊滅的な呪いを振りまき、全人類を支配下に置こうとする覇王」の表情を完成させていた。
「……っ!」
私が馬車に一歩踏み出しただけで、見送りに来ていた村の人々(魔法でお世話になったので少し仲良くなった)が、一斉に道を開けてひれ伏した。
「お、お気をつけて……! 賢者様が王都を焼き尽くさないことを祈っております!」
(焼かないわよ! ただお菓子を食べに行くだけよ!)
私は心の中で絶叫したが、口から出たのは重厚な沈黙だけだった。
馬車の中に入ると、そこには既に正装を整えたカイル様が待っていた。
「おはよう、ルミール。今日の『心の声』は、いつにも増してバイブレーションが効いているね。……そんなに僕との王都デートが楽しみなのかな?」
(デートじゃないわよ! 出撃よ! それにカイル様、その服、反則だわ! 軍服風の礼装なんて、私の心臓を物理的に握り潰す気なの!?)
カイル様は、漆黒の布地に金色の刺繍が施された、目の毒すぎるほど端正な姿をしていた。
私はボードを取り出し、震える手で文字を書いた。
『カイル様、その格好は威圧感がありすぎます。私がさらに怖く見えるので、もっと地味な服に着替えてください。あと、王都までの道中で私が気絶したら、そのまま森に捨てていってください』
「ははは。捨てないよ。気絶したらお姫様抱っこで会場まで運ぶだけさ。……そっちの方が、王都の連中には刺激が強いかもしれないけれどね」
(……っ!? 絶対にダメ! そんなことされたら、私の社会的な死に加えて物理的な死が訪れるわ!)
私は、顔面を「今すぐこの男を時空の狭間に追放してやろうか」という鋭い眼光で固定し、カイル様を睨みつけた。
「……運ぶ、な」
(「お姫様抱っこ禁止令」を、断固として発令!)
「分かった、善処するよ。……さて、出発だ」
馬車が動き出す。
窓の外を流れていく辺境の景色。私の安息の地が遠ざかっていく。
(バイバイ、私の温泉……バイバイ、私の石像執事たち……。戻ってくるまで、家を壊さないでね)
数日の旅路を経て、ついに馬車は王都の巨大な門を潜った。
街の喧騒。人々の話し声。馬車の車輪が石畳を叩く音。
それら全てが、私の精神をガリガリと削っていく。
「見て、あの紋章……隣国の公爵家だわ!」
「乗っているのは誰かしら? ……えっ、まさか、あの『氷の悪女』ルミール様が乗っているって噂よ!」
「まさか、追放されたはずじゃ……!」
馬車のカーテンの隙間から、人々の好奇の視線が突き刺さる。
私は、緊張が限界を突破した。
(……あああああ、見ないで! 石になる! 私、今すぐ石になって門の飾りになりたい!)
「ルミール、そんなに縮こまらなくていい。君は、僕が誇る最高のパートナーなんだから」
カイル様が、そっと私の手を握った。
その温かさに、私の脳内のパニックが、ほんの一瞬だけ凪いだ。
(……カイル様。……あ。この人の手、大きい。……安心する。悔しいけど、すごく安心するわ)
私は、真っ赤になった顔(外見は「周囲の雑音全てを沈黙させる冷徹な処刑人」)を俯かせ、カイル様の手をぎゅっと握り返した。
「((((((((離さないでね、絶対よ……!))))))))」
私の「心の悲鳴」を聞いたカイル様は、愛おしそうに目を細めた。
「ああ。地獄の果てまで、離さないよ」
(……地獄!? 舞踏会ってそんなにヤバいところなの!?)
私の壮大すぎる勘違いを乗せて、馬車は王城へと滑り込んでいく。
そこには、既に私たちの到着を待ち構える、エリオット王子とラーナの姿があった。
(……決戦の時ね。マカロンのために、私は戦うわ!)
ルミールの「王都進撃」は、こうして波乱の幕を開けたのである。
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