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「キラリ、少し目を閉じていてくれないか。君に、どうしても見せたい場所があるんだ」
新作発表会の興奮も冷めやらぬ翌晩。
アルベルト様が、私の手を取って王宮の奥深くへと案内してくれました。
彼の掌は温かく、エスコートの仕方も以前よりずっと「慣れて」きましたわね。
これぞ、私の毎晩の教育的指導の賜物ですわ。
「あら、サプライズかしら? アルベルト様、期待してもよろしくて? 私の視神経を刺激し、ドーパミンを放出させるほどの美しさがそこにあるのかしら」
「……ああ、約束するよ。君の美学を形にした、世界で唯一の場所だ」
大きな扉の前で足が止まりました。
アルベルト様が扉を開け、私の背中を優しく押します。
「さあ、目を開けて」という声に従って私が瞼を持ち上げると……。
「……っ! まあ……なんてこと……!」
そこは、床から天井まで、四方八方が「鏡」で埋め尽くされた広大な回廊でした。
しかも、ただの鏡ではありません。
第17話で紹介したあの『真実の魔鏡』の技術を応用しつつ、肌を最も美しく見せる「黄金比のライティング」が魔法陣によって組み込まれているのです。
「ここは、君専用の『鏡の間(サロンド・ミロワール)』だ。君がどこを向いても、どの角度から自分を眺めても、常に最高の自分を確認できるように設計させた」
「……アルベルト様。あなた、なんて恐ろしいお方かしら」
私は震える足取りで、鏡の海へと踏み出しました。
右を向けば斜め45度の完璧なフェイスライン。
左を向けばうなじから背中にかけての優雅な曲線。
上を見上げれば、まつ毛の一本一本までが、まるで星屑のように輝いて映し出されています。
「これなら……これなら、死角がありませんわ! 自分の背中のニキビの予備軍さえも、一瞬で見つけ出して殲滅できますわ!!」
「……感動のポイントが相変わらず独特だが、喜んでくれたようで何よりだ。……キラリ、こちらへ」
アルベルト様が、部屋の中央にあるクリスタル製のソファに私を座らせました。
彼は私の前に跪き、私の両手をそっと包み込みます。
鏡に映る私たちは、無限に繰り返され、まるで世界が私たち二人だけで満たされているような錯覚に陥ります。
「キラリ。君を追放したあの国は、君を『悪役』と呼んだ。だが、私にとっては、君はこの凍てついた心を溶かし、光を与えてくれた唯一の女神だ」
「アルベルト様……。そんな、脂の乗りすぎたステーキのような甘い言葉……。今の私には、最高の美容液より効きますわ」
「……例えが相変わらずだが、本気だ。私は、君の隣で、君が作り出す『美しい世界』を一生見守っていきたい。君が自分自身を愛するように、私も君を愛し抜くと誓おう」
アルベルト様の瞳が、真実の鏡の反射を受けて、サファイアのように強く輝きました。
彼の顔がゆっくりと近づいてきます。
……ああ、なんて完璧な鼻筋。
……毛穴、一つも見当たりませんわ。
合格。合格ですわ、アルベルト様!!
「……アルベルト様、一つだけよろしいかしら」
「なんだい、愛しい人」
「今のあなたの瞳……。私の姿が、最高に綺麗に映り込んでいますわ。……そのまま、動かないで。あと五分ほど、その瞳に映る私を観察させてちょうだい!」
「……っ。……はは、君には敵わないな」
アルベルト様は脱力したように笑い、そのまま私の額に優しく口づけを落としました。
鏡の中の私たちは、幸せそうに、そして何より「最高にキラキラした状態」で寄り添っていました。
「愛していますわ、アルベルト様。……私の美しさを理解し、増幅させてくれる、最高のパートナーとして!」
「ああ、私もだ。……私の『美しい暴走特急』さん」
私たちは、無限の鏡に囲まれながら、甘く、そして極めて自惚れに満ちた夜を過ごしたのでした。
……さて、アルベルト様。
感動のシーンはここまでですわ。
今、鏡に映ったあなたの襟足、わずかに一ミリほどカットが乱れていますわよ。
さあ、ハサミを持ってきなさい!
「……プロポーズの直後に散髪を命じられるのは、私くらいだろうな」
隣国の夜は、愛とハサミの音と共に、更けていくのでした。
新作発表会の興奮も冷めやらぬ翌晩。
アルベルト様が、私の手を取って王宮の奥深くへと案内してくれました。
彼の掌は温かく、エスコートの仕方も以前よりずっと「慣れて」きましたわね。
これぞ、私の毎晩の教育的指導の賜物ですわ。
「あら、サプライズかしら? アルベルト様、期待してもよろしくて? 私の視神経を刺激し、ドーパミンを放出させるほどの美しさがそこにあるのかしら」
「……ああ、約束するよ。君の美学を形にした、世界で唯一の場所だ」
大きな扉の前で足が止まりました。
アルベルト様が扉を開け、私の背中を優しく押します。
「さあ、目を開けて」という声に従って私が瞼を持ち上げると……。
「……っ! まあ……なんてこと……!」
そこは、床から天井まで、四方八方が「鏡」で埋め尽くされた広大な回廊でした。
しかも、ただの鏡ではありません。
第17話で紹介したあの『真実の魔鏡』の技術を応用しつつ、肌を最も美しく見せる「黄金比のライティング」が魔法陣によって組み込まれているのです。
「ここは、君専用の『鏡の間(サロンド・ミロワール)』だ。君がどこを向いても、どの角度から自分を眺めても、常に最高の自分を確認できるように設計させた」
「……アルベルト様。あなた、なんて恐ろしいお方かしら」
私は震える足取りで、鏡の海へと踏み出しました。
右を向けば斜め45度の完璧なフェイスライン。
左を向けばうなじから背中にかけての優雅な曲線。
上を見上げれば、まつ毛の一本一本までが、まるで星屑のように輝いて映し出されています。
「これなら……これなら、死角がありませんわ! 自分の背中のニキビの予備軍さえも、一瞬で見つけ出して殲滅できますわ!!」
「……感動のポイントが相変わらず独特だが、喜んでくれたようで何よりだ。……キラリ、こちらへ」
アルベルト様が、部屋の中央にあるクリスタル製のソファに私を座らせました。
彼は私の前に跪き、私の両手をそっと包み込みます。
鏡に映る私たちは、無限に繰り返され、まるで世界が私たち二人だけで満たされているような錯覚に陥ります。
「キラリ。君を追放したあの国は、君を『悪役』と呼んだ。だが、私にとっては、君はこの凍てついた心を溶かし、光を与えてくれた唯一の女神だ」
「アルベルト様……。そんな、脂の乗りすぎたステーキのような甘い言葉……。今の私には、最高の美容液より効きますわ」
「……例えが相変わらずだが、本気だ。私は、君の隣で、君が作り出す『美しい世界』を一生見守っていきたい。君が自分自身を愛するように、私も君を愛し抜くと誓おう」
アルベルト様の瞳が、真実の鏡の反射を受けて、サファイアのように強く輝きました。
彼の顔がゆっくりと近づいてきます。
……ああ、なんて完璧な鼻筋。
……毛穴、一つも見当たりませんわ。
合格。合格ですわ、アルベルト様!!
「……アルベルト様、一つだけよろしいかしら」
「なんだい、愛しい人」
「今のあなたの瞳……。私の姿が、最高に綺麗に映り込んでいますわ。……そのまま、動かないで。あと五分ほど、その瞳に映る私を観察させてちょうだい!」
「……っ。……はは、君には敵わないな」
アルベルト様は脱力したように笑い、そのまま私の額に優しく口づけを落としました。
鏡の中の私たちは、幸せそうに、そして何より「最高にキラキラした状態」で寄り添っていました。
「愛していますわ、アルベルト様。……私の美しさを理解し、増幅させてくれる、最高のパートナーとして!」
「ああ、私もだ。……私の『美しい暴走特急』さん」
私たちは、無限の鏡に囲まれながら、甘く、そして極めて自惚れに満ちた夜を過ごしたのでした。
……さて、アルベルト様。
感動のシーンはここまでですわ。
今、鏡に映ったあなたの襟足、わずかに一ミリほどカットが乱れていますわよ。
さあ、ハサミを持ってきなさい!
「……プロポーズの直後に散髪を命じられるのは、私くらいだろうな」
隣国の夜は、愛とハサミの音と共に、更けていくのでした。
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