糸がもつれるようなもどかしい思いが恋らしい。

刹那玻璃

文字の大きさ
29 / 34

それは何?歯並びチェックです。

しおりを挟む
 翌日、目を覚ましたボクは、起き上がってうーんと背伸びをした。
 ボクが腕をいっぱい伸ばしても、当たったりしないんだから大きいよね。
 シアはいないから、先に出て行ったのかな?
 カーテンを少し開けて、顔を出してキョロキョロした。
 あまり、物音がしない。
 みんな寝てるのかな?
 身を乗り出して見ると、奥の部屋にアイドとセディが背を向けてソファに座っている。
 何か冊子を読んでるみたい……と、思ったら、テーブルの向こうに見たことのない人が2人座っていた。
 一人は、セラスよりキラキラの髪……金色っていうらしい……で緑の目のお兄さん。
 もう一人は、葉っぱが枯れた色……黄色よりもう少し灰色っぽい髪をしてる。

「あれ? ユーザー。起きたの?」

 振り返ったセディが、おいでおいでと手招きをしてるけど、行っていいのかな?
 ちょっと躊躇ったけど、パジャマの上に上着を着て、出てみた。
 お兄さんたちはボクを見て、驚いてる。
 早足で一番近いアイドの背中に隠れるようにくっついて、何回か息を吸って吐いて……ちょっとだけ顔を出して頭を下げた。

「お、おはようございます。ユーザーです」
「ユーザー。おはよう」
「偉いよ。ちゃんとおはようって言えるなんて!」

 アイドに頭を撫でてもらい、ホッとした。

「えっと……お兄さんたちは……」
「あ、レイ先生の後輩だって。こっちの金色……キラキラでふわふわの髪と緑の目のお兄さんがウェイト先生で、こっちの真っ直ぐの髪の人がリオン先生」
「ウェイト先生がこんな仕事があるよって言うのを教えてくれる先生で、リオン先生が他の先生の授業のお手伝いだって」

 アイドがボクを抱っこしてくれて、膝の上に乗せてくれる。
 あったかくて嬉しい。

「はじめまして、ユーザーでいいかな?」

 ちょっとだけ高い声のウェイト先生の横で、なぜか目の横の方をぐりぐりしてるリオン先生?

「リオン先生……頭痛い?」
「あ……えっと、寝不足なんだ……」
「んっと、親指と人差し指の付け根を、ちょっと指で押さえるといいみたい?」
「みたい?」

 リオン先生が首を傾げて聞きかえしてくれるので、左手を右の親指で押さえて説明する。

「ここのあたりにね? くぼみがあるの。そのくぼみのあたりを力一杯じゃなくて、ちょっと痛いなってくらい? ちょっとグリグリすると楽になるの。虫歯の痛みも大丈夫だって」
「む、虫歯? ユーザーあるの?」

 セディがボクの口を覗き込もうとしたので、ブンブン首を振る。

「ない? ちょっと確認のために、歯を見せて? あ、私一応救急師の資格持ってるから」

 リオン先生が、胸ポケットから手帳を出して見せてくれる。
 リオン先生、幾つか資格があるみたい?

「……この前、歯が抜けちゃったから……」
「乳歯が永久歯になったんじゃないかな? 歯並びも確認したいから見せて? 歯並びが悪いと虫歯になりやすくなるんだ」
「大丈夫だよ? 俺が抱っこしてるし、痛くしないよね? リオン先生?」
「なんにもしないよ。うん、ちょっと口を開けてくれるだけでいいよ?」

 ちょっとごめんね?

 近づいてきたリオン先生が、開けた口の中の歯を確認して……。

「あぁ、前歯、ここ生え変わってるね……でも、綺麗に真っ直ぐ伸びてるみたいだから、大丈夫だね。永久歯の奥歯は、左右上下4本しかない。乳歯もまだ大半残ってるから……ユーザーって、8歳か9歳……だと思う」
「えっ? もっと上じゃないのか?」

 ウェイト先生が焦ったように言う。

「だって! 小柄だが、ものすごく賢くないか?」
「いえ、乳歯が残ってますから。もう少し年齢が上なら順番に、前歯から奥にグラグラし始めるんですよ。ユーザーは、まだ前歯しか永久歯になっていないので……あ、もういいよ? ありがとう」

 リオン先生は、手帳の別のページに何かを書き始める。

「本当に、本当に10歳以上じゃないのか?」
「だって、先輩。ユーザーの上の歯が12本、下の歯も同じ数です。その奥はもう少し大きくなってから生えるんです。確認したら、上下左右の奥歯各一本ずつ永久歯です。乳歯って少し小さいし、それに乳歯と永久歯って色が違います。子供によって伸びたり生え変わる時期って違いますから推定ですけど、でも、平均的に見てこの年齢だって推測できるんですよ。ちなみに、フィアとレーヴェは奥歯が生えそろうのは遅かったです」
「……それは、正確だ」
「でしょ? 私は早い方でしたが」

 知らない人の名前……それより、気になるから、ギディアンやセラス、マデリーンの歯を見せてもらおう。
 その前に……。

「アイドとセディの歯は?」
「俺たちはもう、全部生え変わってるよ。奥歯も揃ってる」
「いいなぁ……ボクこーんなの」

 アイドが見えるように大きく口を開けて見せると、覗き込んで何度も頷いてくれた。

「うん、ユーザーの歯も揃ってるよ。これから順番に伸びるね?」

 アイドがボクを抱いたまま立ち上がった。

「ギディアンたちは朝ごはん食べに行ったから、ユーザーはまず顔を洗おうね。今日の俺たちの朝ごはんは、おにぎりとスープと卵焼きと、お魚だよ」
「楽しみ!」

 ボクは、朝ごはんで頭が一杯になってて、先生たちの事すっかり忘れてしまった。



~*~~*~~*~


 乳歯については、一般、平均的年齢のものです。
 でも、自分の奥歯がいつ揃ったかって覚えていないものですね……親知らずは変な方向に生えましたので、ほぼ全部きました。
 ……うん、岩を砕くような道具を使って歯科で、抜くより砕く感じで処置してもらいました。

 それと、親指と人差し指の間のツボは、合谷ごうこくですね。
 歯の痛み以外にも効きますが、ちょっと3秒くらい押して、離してを何回か繰り返すと良いそうです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

誰もが我儘な私ではないお方が良かったようなので、悪役の私は残忍な猛将達に手酷く扱われに行きます。戻れ? 絶対に離れるなと脅されているのですが

迷路を跳ぶ狐
ファンタジー
 魔法もろくに使えない役立たずと言われ、婚約者にも彼の周りの人達にも馬鹿にされてきた私。ずっと耐えてきたつもりだったけど、誰もがこんな私よりも、もっと優秀な魔法使いがいたはずなのに、とため息をつく。  魔法によって栄え、王都にまでその名を知らしめた貴族の婚約者は、「なんでこんな役立たずが……」と私を蔑み、城の中で魔法使いたちを統率する偉大な魔法使いは、「こんな女がこの領地を任されるだなんて! なんて恐ろしく愚かなことだ!!」と嘆く。  貴族たちに囲まれ詰られて、婚約者には見放され、両親には罵声を浴びせられ、見せ物のように惨たらしく罰せられた。「なんでこんな役立たずがこの城に来たんだ……」そう落胆されながら。  魔法が苦手でここを出る手段はないけど……もうこんなところにいられるか!  そう決意した私に、私を虐げていた誰もが腹を立てる。激しくぶたれた私は、機嫌を損ねた残忍な竜たちに、枷をされて隣の領地まで連れて行かれることになった。  重労働を言いつけられ、魔物や魔獣、竜たちがうろつく森の城についてからは、暗く小さな部屋に放り込まれた。  たった一人で食事をして、何もない部屋から見窄らしい格好で窓の外を見上げる。  なんだこれ………… 「最高…………」  もう、私を踏み躙る奴らに好きに扱われることはないんだ! それだけで、何もかもが最高!!  金もなければ能力もまるでない! 魔法すらまともに使えない! だけど今は思いのままに身につけに行ける!! 何もないのでこれから欲しいもの全部、手に入れに行きます!  そんな風にして竜族の城に住むことになった私。気づいたらやけに皆さんとの距離が近い? 元婚約者も「戻って来い」なんてうるさいけど、知りません!! 私は忙しいので!

私たちの離婚幸福論

桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。 しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。 彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。 信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。 だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。 それは救済か、あるいは—— 真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。

慈愛と復讐の間

レクフル
ファンタジー
 とある国に二人の赤子が生まれた。  一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。  慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。  これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。  だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。 大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。  そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。  そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。  慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。  想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……

女神様、もっと早く祝福が欲しかった。

しゃーりん
ファンタジー
アルーサル王国には、女神様からの祝福を授かる者がいる。…ごくたまに。 今回、授かったのは6歳の王女であり、血縁の判定ができる魔力だった。 女神様は国に役立つ魔力を授けてくれる。ということは、血縁が乱れてるってことか? 一人の倫理観が異常な男によって、国中の貴族が混乱するお話です。ご注意下さい。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クゥクーの娘

章槻雅希
ファンタジー
コシュマール侯爵家3男のブリュイアンは夜会にて高らかに宣言した。 愛しいメプリを愛人の子と蔑み醜い嫉妬で苛め抜く、傲慢なフィエリテへの婚約破棄を。 しかし、彼も彼の腕にしがみつくメプリも気づいていない。周りの冷たい視線に。 フィエリテのクゥクー公爵家がどんな家なのか、彼は何も知らなかった。貴族の常識であるのに。 そして、この夜会が一体何の夜会なのかを。 何も知らない愚かな恋人とその母は、その報いを受けることになる。知らないことは罪なのだ。 本編全24話、予約投稿済み。 『小説家になろう』『pixiv』にも投稿。

私は……何も知らなかった……それだけなのに……

#Daki-Makura
ファンタジー
第2王子が獣人の婚約者へ婚約破棄を叩きつけた。 しかし、彼女の婚約者は、4歳年下の弟だった。 そう。第2王子は……何も知らなかった……知ろうとしなかっただけだった…… ※ゆるい設定です。ゆるく読んでください。 ※AI校正を使わせてもらっています。

処理中です...