婚約者を陥れ処刑した王子が、自らの言葉によって永遠をループすることになる物語

刹那玻璃

文字の大きさ
118 / 129
第10章

【番外編】双子のメイド〜瓜二つの双子

しおりを挟む
 王弟であり、若くして宰相の地位に就くアルフレッドの屋敷で、アルフレッドの上の娘アルフィナには瓜二つの双子のメイドがいる。
 姉がエリ、妹がリリである。
 一度見ただけでは覚えられない程、背丈も体格も顔もほぼ一緒で、髪も金髪なのだが、ただ一つ違うのは瞳の色である。
 エリは青、リリは青紫である。



 エリとリリは、地方のとある貴族の家に生まれたらしい。
 だが、その地域は迷信深く、双子や紫の瞳の子供は魔物だと伝えられており、しかも、生んだ母親が産後すぐ死んだこともあって、父親ではなく祖父母にあたる夫婦が孤児院に押し付けて去っていったらしい。

 らしいと言うのは、その孤児院では子供の出入りが多く、それに見目のいい子供はすぐに何処かに行くことが多かった。
 院長は、その孤児院で働く者に、子供達の養子先が見つかったと言っており、貧しいその地域は仕事を失っては生きていけず、皆口をつぐむことが多かった。
 実際、その孤児院は名ばかりで、他国に奴隷として売られたり、貴族の口にも出来ない慰み者として送り出され、そしてその金は孤児院の院長とその地の領主たちの懐に入るのだった。

 そして、エリとリリは普通の子供たちより目鼻立ちが整っており、肌も白く愛らしかったので、院長たちは磨き上げて奴隷市に出す日を待っていた。

 だが、それを前もって調べ上げていたアルフレッドと騎士団長のラインハルトたちが、孤児院と奴隷商人たちを一気に制圧し、売られそうになっていた女性や子供たちを保護した。
 その時に、無表情で鳥籠型の檻に押し込められていた双子を見つけたのが、アルフレッドの乳兄弟で執事見習いのガイだった。

 二人は抱き合い、目は生気にかけ心を閉ざしていた。

 ガイは乱暴に鍵を壊し扉を開くと、

「おいで。君達は自由だよ。お兄ちゃんと行こう」
「……」
「ほら、ご覧。お兄ちゃんたちは、悪いことをした人を捕まえた。君達はお家に帰れるよ?」

エリを抱いていたリリは青紫の瞳を向けて、

「……おうちないもん。リリのせいだもん……リリは化物なの」

と呟き、ボロボロと涙を流す。

「エリは悪くないの……リリは化物なの……」
「何で?化物はお兄ちゃんたちがやっつけたんだよ?だからおいで。お兄ちゃんたちが守るから」
「……」

 顔を背け、心を閉ざそうとする双子に、ガイは檻に入り、二人を抱え上げるとそのまま連れ出した。
 抵抗すらしない双子に焦り、アルフレッドの元に走る。

「旦那様!」
「どうしたの?」

 20歳……初恋は実らず、相手はもう手に届かない所に行ってしまったアルフレッドは、夜遊びなどはしないが、外で暴れる……今回も本当は待機をするはずが、この大捕物の総大将のラインハルトたちの目を盗み、ここまで来ていた。
 少々ヤンチャはすぎるが、若さゆえ仕方がないと両親や伯父、そして生母であるアマーリエも目をつぶっていた。
 抵抗するものを全て始末し……自供させる為殺してはいないが、歩けないようにしたりしておいた彼は、剣の血をぬぐい、鞘に納める。

「あのっ! あの檻に入れられていた子供達です。少し話しただけですが、心を閉ざしてしまって!」
「……うわっ。可愛い子だね。誘拐されたの?」
「違うようです。ほら……」

 先見つけた時に見えていた左手の甲の印……前前から探りを入れていた孤児院の子供に院長がつける焼き印……。

「くっそっ! あのクズ! ……あいつは殺す! 絶対に殺す! 領主共に!」
「旦那様。そんな言葉を使うものではないと、常々申し上げておりますが?」
「口うるさいぞ。ガイ。いつのまにかジョンやイーリアスが増えた」
「……坊っちゃまと申し上げた方が、よろしいでしょうか?」
「同い年で、坊っちゃま言うな。執事見習い」

 睨み合う二人に、妙な体勢のまま抱かれている双子が、身動きをした。

「旦那様。一人お願いします」
「分かった」

 アルフレッドが一人を抱き上げると、双子がハッと我に返り、離れた片割れに手を伸ばし泣きじゃくり始める。

「わぁぁ! 待って! 泣かなくても大丈夫。ほら、そこの馬車に乗ろう。お兄ちゃんたちが安全な所に連れて行ってあげるから!」
「一緒」
「一緒じゃなきゃ」
「大丈夫。一緒だよ」

 あやしながら馬車に乗り込む。
 すると、目立つからと言う理由で外に出られなかったラインハルトが、

「おらっ! アル! テメェ、俺には出るなと言っておいて、そっちは何してた?」

 巨軀を押し込め、苦々しげに舌打ちするのを見て驚いた双子が、本格的にギャン泣きする。

「うわっ! 何だ? このちこまいのが……」
「兄上、泣かせないで下さいよ。ガイが保護した子達です。ほら例の」
「あぁ、あのクズが、今日の目玉商品とか抜かしてた……うーん。よく似た双子だなぁ」
「確か、エリとリリと言っていたはずです。多分エリーゼとかリリーナと言う名前でしょう」
「で、どっちがどっちだ?」

 グズグズしている双子をアルフレッドの横に並べて座らせ、持ってきていたお菓子を握らせていたガイが、

「リリが青紫の瞳です。エリは見ていません」
「エリ、おやつ食べないの? 毒は入ってないよ?」

 アルフレッドは両手を握ったままのエリに問いかける。
 すると、ぐらっと倒れ込んだ。

「えっ? エリ? ちょっと待って!」

 双子が抱き合っていた為、確認していなかったが、ボロボロの服の裂け目から覗く身体中にあざがあった。
 額に手を当てると熱が出ている。
 それに、ガイも確認すると、リリも腕や足などに青黒いアザがあった。

「……痛かったね……怖かったね……ごめんね、ごめん。もっと早く助けていたら……」

 声を詰まらせ、アルフレッドは涙声でエリの頭を撫でる。

「ごめんね。私が……」
「メソメソ泣くな! アル! お前がこの地域の領主か? この国の国王か? お前が謝ったところで、こう言う悲惨な目に遭う被害者が減るのか? 泣く前に、誓え! 1日でも早く母親のスカートの後ろに隠れていると、陰口を叩かれないようになれ! 一人でも救える命をお前の力で救えるように、権力を行使出来るようになれ!」
「……はい、兄上」
「ほら、行け。早く治療を」

 ラインハルトは、自分の横にガイを座らせ、御者に指示する。
 そして、馬車は走り始めた。
 双子は、クッキーを握ったまま寝入ってしまう。
 用意していた毛布を双子にかけた。



 次に目が覚めた二人は、綺麗な部屋と清潔なベッドに寝かされていて、お互いを見ると、手当てをされ、真新しいネグリジェを身につけていた。

「まぁ、目が覚めたのね?」

 微笑むのは所々白髪はあるが丁寧に撫でつけられ、結い上げている貴族の女性。

「お帰りなさい。エリア、リリア」

 二人は抱き合うが、女性は警戒した子猫のような双子に、

「私は、レディット伯爵夫人ユイシア。貴方達の母となりました。私は、夫と離婚していて子供がいないのです。まぁ、別れた夫とは政略結婚ですので、向こうには血の繋がりのない馬鹿娘はいますけれど、あの子には財産を譲るつもりはありません。昨日、とある方から養女にと貴方達を紹介されました」
「リリだけ?」
「エリだけ?」
「二人ともですよ。ほら、ご覧なさい」

大切そうに膝に置いていた書類を見せる。

「青い目のエリアはエリア・ブルーベル、紫の瞳のリリアはリリア・ウィステリアです。もう手続きは済んでいますからね? 安心なさい。貴方達に手を出すと大変な目に遭うのだから……あの男や愛人、その娘が愚かでないといいわね」

 最後の言葉は聞き逃したが、双子はユイシアの微笑みにホッとし、救われたと思ったのだった。



……………………

エリとリリの話です。
本当はヘタレ執事ガイとリリを書きたかったです(笑)
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...