28 / 50
ものがたり
第二十八話 転(3)
しおりを挟む
「大丈夫、大丈夫よ。霞……」
(菖蒲様……。まさかこんな風に行動できるお方だとは思わなかったわ。それにしてもどうしてそこまでして私を……)
菖蒲が霞の背を優しくさすってくれたこともあり、強張っていた体が解れていくのが分かった。左腕の痛みも引いていく。
「如何されましたか?菖蒲様!」
反対側の御簾から女官達の声がする。菖蒲が声を掛けてくれたお陰だろう。
「急いで!水仙様がお倒れになったの!他にも人を呼んで!」
「水仙様が……?承知致しました」
女官が慌ただしく他の人を呼びに戻る。水仙が入室してきた方角の御簾からドタドタと重厚感のある足音がした。
(男性の足音……)
冷静さを取り戻した霞が察すると同時に御簾越しに聞き馴れた声がして霞は肩を落とす。
「失礼致します。第一王妃様。……蔵人頭でございます。騒ぎを聞きつけました故、駆けつけました」
「楓様……!」
霞はどうにか事態を収束させようと御簾と倒れたままの水仙に近づこうとするがそれを菖蒲が阻んだ。
「霞はそこで休んでいて。この場は私がなんとかするから」
「できません……。この場を収めるのが世話役の……私の仕事ですから」
菖蒲は首を左右に振る。いつもの子供ぽく、あどけない少女の姿は無い。
「ごめんなさい。私のせいで霞の辛い出来事を思い出させてしまって」
「……!」
菖蒲の苦しげな、それでも慈愛に満ちた眼差しが霞の心を揺さぶった。ドクドクと不規則に心臓が鳴る。
(どうして人を疑うことをしないの?私があなたを引き立てたせいでこんなことになってるっていうのに……)
「楓様。水仙様が倒れてしまわれました。どうかお手をお貸しください。局に入ることを私が許可します」
はっきりとした口調と共に鮮やかな薄桃色の小袿が翻る。
「失礼致します」
菖蒲に導かれて御簾を潜り抜けてきた楓は、目の前に広がっている光景に言葉を失っていた。後ろから紙燭を手に入って来た伊吹も目を見開いている。
「これから水仙様の局へお運びします」
人で騒がしくなっていく菖蒲の局の中。周りは慌ただしく動いているのに、霞は微動だにしなかった。
自分だけがこの空間に取り残されているような、不安な気持ちになる。
水仙を運び出すために、正面の御簾が女官によって抱えあげられた時。何気なく視界に入った水仙の局に違和感を覚えた。
(何かが……通り過ぎて行った?)
明かりがついたままの水仙の局の前を何かが横切った気がしたのだ。
(あれは……?こんなところでぼうっとしてる場合じゃない。楓様にも詳細を聞かなければ)
立ち上がろうとした霞は辺りが暗かったのと、衝撃的な光景を目にしてしまったせいで眩暈を起こした。ぐらりと揺れる身体を小さくて白い。美しい手が支える。
「霞、大丈夫?体調が悪いの?」
霞は俯ぎながら強く唇を噛み締める。心の中で弱っている自分を責め立てた。
(何をしているの。早くこの状況を解明しなさい。化け物がまた動き出したっていうのに……怖がってる暇なんてないでしょう。とっとと動け……。動け、私の身体)
「申し訳ございません。本来私がやるべき仕事でしたのに……」
自分を叱咤する言葉をしまい込み、世話役の仕事を全うできなかった謝罪を口にする。
「いいのよそんなこと。後片付けも他の者に頼んだから……。霞は私の御帳台で休んでいて」
「……え?」
菖蒲の提案に霞は目を丸くする。第一王妃の豪華な寝台で休むなど恐れ多いことだ。霞は大きく頭を左右に振った。
「なりません!自分の局に戻って休ませていただきます」
「そんな顔色でとても戻れそうになさそうだけれど……」
そこで初めて霞は自分が想像以上に疲労しているのを自覚する。そんな自分の弱さに怒りとやるせなさが込み上げてきた。
「ね?だからここで眠って構わないわ。何なら明日、暇を出してもいいから」
「そんなこと……できません」
ずっと顔を俯かせたままの霞の手を菖蒲が優しく包む。突然感じる温かさに霞は肩を揺らした。
「霞。自分の心の声をちゃんと聞いてあげて。あなたは今、とても怖がってる……」
「私に怖いものなどありません。怖いものなど何も……」
菖蒲が幼い子に言い聞かせるように穏やかな口調で続ける。
『自分の弱さを知ることこそ誰にも負けない強さを手にする』
榊の声が聞こえた気がして霞は慌てて顔を上げた。その言葉を発したのは他の誰でもない。菖蒲だ。
「……って前に私に言ってくれたでしょう?怖いと思った自分の弱さを持っていていいの。だからもうこれ以上、無理をしないで。霞が辛そうにしていると私も辛いから」
「菖蒲様……」
「それとも楓様を呼び戻しましょうか?霞の局に運んでもらって……」
「……結構です!」
即答する霞に菖蒲はくすくすと笑い声をあげた。口元に手を覆うことなく、明け透けに笑うその姿は霞と出会った頃と同じ。少女の眩しい笑顔だ。
「殿方に元気のない姿は見せたくないわよね」
「いえ……そういうわけでは」
(こんな情けない姿を見せたら呆れられるに決まってる。萎れた私を見ていい気になりそうだし……)
「さあ。遠慮はいらないから」
菖蒲に手を引かれながら霞は御帳台の中に足を踏み入れる。既に寝具が整えられていた。
(こんなに高貴な場所で眠れるわけがない)
「ほら!何してるの?早く横になって!」
菖蒲に促されるがまま霞は寝具の上に横になった。さすがに上掛けまで借りる気にはなれなくて重ね着している着物をそのまま布団代わりにする。
「それじゃあ。私は後片付けの続きをしてくるから。大人しくしているのよ!」
慌ただしく御帳台から姿を消すと、菖蒲が女官達に指示を出している声が御帳台の帳越しに聞こえてきた。四方を囲まれた寝台は霞に自然と安心感を与えたようだ。最初は緊張していた霞だが、横になるとすぐに瞼が閉じ深い闇に溶けこんでいった。
(菖蒲様……。まさかこんな風に行動できるお方だとは思わなかったわ。それにしてもどうしてそこまでして私を……)
菖蒲が霞の背を優しくさすってくれたこともあり、強張っていた体が解れていくのが分かった。左腕の痛みも引いていく。
「如何されましたか?菖蒲様!」
反対側の御簾から女官達の声がする。菖蒲が声を掛けてくれたお陰だろう。
「急いで!水仙様がお倒れになったの!他にも人を呼んで!」
「水仙様が……?承知致しました」
女官が慌ただしく他の人を呼びに戻る。水仙が入室してきた方角の御簾からドタドタと重厚感のある足音がした。
(男性の足音……)
冷静さを取り戻した霞が察すると同時に御簾越しに聞き馴れた声がして霞は肩を落とす。
「失礼致します。第一王妃様。……蔵人頭でございます。騒ぎを聞きつけました故、駆けつけました」
「楓様……!」
霞はどうにか事態を収束させようと御簾と倒れたままの水仙に近づこうとするがそれを菖蒲が阻んだ。
「霞はそこで休んでいて。この場は私がなんとかするから」
「できません……。この場を収めるのが世話役の……私の仕事ですから」
菖蒲は首を左右に振る。いつもの子供ぽく、あどけない少女の姿は無い。
「ごめんなさい。私のせいで霞の辛い出来事を思い出させてしまって」
「……!」
菖蒲の苦しげな、それでも慈愛に満ちた眼差しが霞の心を揺さぶった。ドクドクと不規則に心臓が鳴る。
(どうして人を疑うことをしないの?私があなたを引き立てたせいでこんなことになってるっていうのに……)
「楓様。水仙様が倒れてしまわれました。どうかお手をお貸しください。局に入ることを私が許可します」
はっきりとした口調と共に鮮やかな薄桃色の小袿が翻る。
「失礼致します」
菖蒲に導かれて御簾を潜り抜けてきた楓は、目の前に広がっている光景に言葉を失っていた。後ろから紙燭を手に入って来た伊吹も目を見開いている。
「これから水仙様の局へお運びします」
人で騒がしくなっていく菖蒲の局の中。周りは慌ただしく動いているのに、霞は微動だにしなかった。
自分だけがこの空間に取り残されているような、不安な気持ちになる。
水仙を運び出すために、正面の御簾が女官によって抱えあげられた時。何気なく視界に入った水仙の局に違和感を覚えた。
(何かが……通り過ぎて行った?)
明かりがついたままの水仙の局の前を何かが横切った気がしたのだ。
(あれは……?こんなところでぼうっとしてる場合じゃない。楓様にも詳細を聞かなければ)
立ち上がろうとした霞は辺りが暗かったのと、衝撃的な光景を目にしてしまったせいで眩暈を起こした。ぐらりと揺れる身体を小さくて白い。美しい手が支える。
「霞、大丈夫?体調が悪いの?」
霞は俯ぎながら強く唇を噛み締める。心の中で弱っている自分を責め立てた。
(何をしているの。早くこの状況を解明しなさい。化け物がまた動き出したっていうのに……怖がってる暇なんてないでしょう。とっとと動け……。動け、私の身体)
「申し訳ございません。本来私がやるべき仕事でしたのに……」
自分を叱咤する言葉をしまい込み、世話役の仕事を全うできなかった謝罪を口にする。
「いいのよそんなこと。後片付けも他の者に頼んだから……。霞は私の御帳台で休んでいて」
「……え?」
菖蒲の提案に霞は目を丸くする。第一王妃の豪華な寝台で休むなど恐れ多いことだ。霞は大きく頭を左右に振った。
「なりません!自分の局に戻って休ませていただきます」
「そんな顔色でとても戻れそうになさそうだけれど……」
そこで初めて霞は自分が想像以上に疲労しているのを自覚する。そんな自分の弱さに怒りとやるせなさが込み上げてきた。
「ね?だからここで眠って構わないわ。何なら明日、暇を出してもいいから」
「そんなこと……できません」
ずっと顔を俯かせたままの霞の手を菖蒲が優しく包む。突然感じる温かさに霞は肩を揺らした。
「霞。自分の心の声をちゃんと聞いてあげて。あなたは今、とても怖がってる……」
「私に怖いものなどありません。怖いものなど何も……」
菖蒲が幼い子に言い聞かせるように穏やかな口調で続ける。
『自分の弱さを知ることこそ誰にも負けない強さを手にする』
榊の声が聞こえた気がして霞は慌てて顔を上げた。その言葉を発したのは他の誰でもない。菖蒲だ。
「……って前に私に言ってくれたでしょう?怖いと思った自分の弱さを持っていていいの。だからもうこれ以上、無理をしないで。霞が辛そうにしていると私も辛いから」
「菖蒲様……」
「それとも楓様を呼び戻しましょうか?霞の局に運んでもらって……」
「……結構です!」
即答する霞に菖蒲はくすくすと笑い声をあげた。口元に手を覆うことなく、明け透けに笑うその姿は霞と出会った頃と同じ。少女の眩しい笑顔だ。
「殿方に元気のない姿は見せたくないわよね」
「いえ……そういうわけでは」
(こんな情けない姿を見せたら呆れられるに決まってる。萎れた私を見ていい気になりそうだし……)
「さあ。遠慮はいらないから」
菖蒲に手を引かれながら霞は御帳台の中に足を踏み入れる。既に寝具が整えられていた。
(こんなに高貴な場所で眠れるわけがない)
「ほら!何してるの?早く横になって!」
菖蒲に促されるがまま霞は寝具の上に横になった。さすがに上掛けまで借りる気にはなれなくて重ね着している着物をそのまま布団代わりにする。
「それじゃあ。私は後片付けの続きをしてくるから。大人しくしているのよ!」
慌ただしく御帳台から姿を消すと、菖蒲が女官達に指示を出している声が御帳台の帳越しに聞こえてきた。四方を囲まれた寝台は霞に自然と安心感を与えたようだ。最初は緊張していた霞だが、横になるとすぐに瞼が閉じ深い闇に溶けこんでいった。
0
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
皇太后(おかあ)様におまかせ!〜皇帝陛下の純愛探し〜
菰野るり
キャラ文芸
皇帝陛下はお年頃。
まわりは縁談を持ってくるが、どんな美人にもなびかない。
なんでも、3年前に一度だけ出逢った忘れられない女性がいるのだとか。手がかりはなし。そんな中、皇太后は自ら街に出て息子の嫁探しをすることに!
この物語の皇太后の名は雲泪(ユンレイ)、皇帝の名は堯舜(ヤオシュン)です。つまり【後宮物語〜身代わり宮女は皇帝陛下に溺愛されます⁉︎〜】の続編です。しかし、こちらから読んでも楽しめます‼︎どちらから読んでも違う感覚で楽しめる⁉︎こちらはポジティブなラブコメです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる