夜が長いこの世界で

柿沼 ぜんざい

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-第2夜- 閉鎖都市

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 トナードから歩いた私は馬車を拾い、乗せてもらっていた。1日程掛けて着いた街は閉鎖された都市であった。

「ご苦労さま」

 ここまで運んでくれた馬とおじさんに礼を言い、私は閉鎖された都市へと入る。関所では都市の警務局関係者が私を待っていたんだ。

「教会本部のサテライト=ヴィル・アストレア」

 聖職者プリーストが持っている“誓いの紋章”が入ったペンダントを彼らに見せ、私は街入りを果たす。

 街の人々は私を見て、ヒソヒソと話しては指をさしたりしてる。なんて失礼な奴らだ。

「トナードの単独調査で少し遅くなった」

 本部の聖職者らに私はそう言う。

 どうやら事件を防げなかったらしい。本部の者が一般人が立ち入らぬ様に規制線を現場に敷いている。

「おう赤ずきん。ご苦労だったな」

 特務殲滅課の課長トルグレム・アートが声を掛けてくる。

「トルグレム、一体どうなっている。何故、人が襲われた?」

「圧倒的人手不足だ。我々の数ではこの広い街を完全には守り切れない」

「そうか…遺体ガイシャは?」

「酒場ミルフィレムのマスター。ハリントン・ベス。65歳の男性だ」

「……65歳?」

「あぁ」

 目下には右半身を喰いちぎられた亡骸が横たわっていた。あまり時間は経っている様には思えない。木製の床板にはテカテカとした血痕が残っており、それが事件の生々しさを教えてくれる。
 
「人狼が、65歳の男性を…ねぇ」

 珍しい話ではなかったが余り見られないケースだ。ま、これを人は珍しいと言うのだろうが。

「トルグレム。間違いなく“狼”はこの街にいるんだ。焦る必要も無い。少しずつ範囲を絞っていって、確実に活動範囲を一箇所に追い込めば殺せる」

「しかし、今は人狼の居場所がまるで検討付かない。そして種類タイプも……」

 トルグレムは険しい表情だ。

「安心しろ。私が来た。確実に人狼は殺す。この手で…例え、どんな手段を使ってでも……」

「そうか。頼もしいな。流石は赤ずきんだ」

「その呼び方、あまり好きじゃないんだ。トルグレム」

 私は現場を立ち去り、対策本部が設けられているホテルに入る。

 『トナードのホテルとは大違いだ事』

 これが外観を見た第一感想だった。私が今、居る都市は我が国メルエムの中でも4番目に次ぐ大きさの大都市であり、有名な観光名所でもあった。その名は“レイクシティ”。煉瓦レンガの家が多く建ち並んでいるのが印象的な街だ。

 対策本部はホテル4階の多目的広場ホールにあった。

「遅くなって済まない。先程シティ入りした」

 席が立ち並び会議室となった多目的広場に私は顔を出す。

「待ったぞ、赤ずきん。トルグレムから聞いていると思うが、圧倒的人手不足だ。狼の種類タイプも未だ、特定出来ていないし規模も検討すら付いていない。街丸ごと一つを閉鎖するのでやっとって所だ」

 副課長のメイル・ノワークが私を待ち侘びた表情で迎え入れてくれた。

「メイル。現状報告はそれだけか?教会は笑われ者になるぞ。なんとしてでも3日以内に見つけ出して殲滅しなければ」

「3日以内……赤ずきん、どうするんだ?」

「一先ず、一連の事件の目撃者……を探そうか」



 

 
 

 


 

 

 

 
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