2 / 40
-第2夜- 閉鎖都市
しおりを挟む
トナードから歩いた私は馬車を拾い、乗せてもらっていた。1日程掛けて着いた街は閉鎖された都市であった。
「ご苦労さま」
ここまで運んでくれた馬とおじさんに礼を言い、私は閉鎖された都市へと入る。関所では都市の警務局関係者が私を待っていたんだ。
「教会本部のサテライト=ヴィル・アストレア」
聖職者が持っている“誓いの紋章”が入ったペンダントを彼らに見せ、私は街入りを果たす。
街の人々は私を見て、ヒソヒソと話しては指をさしたりしてる。なんて失礼な奴らだ。
「トナードの単独調査で少し遅くなった」
本部の聖職者らに私はそう言う。
どうやら事件を防げなかったらしい。本部の者が一般人が立ち入らぬ様に規制線を現場に敷いている。
「おう赤ずきん。ご苦労だったな」
特務殲滅課の課長トルグレム・アートが声を掛けてくる。
「トルグレム、一体どうなっている。何故、人が襲われた?」
「圧倒的人手不足だ。我々の数ではこの広い街を完全には守り切れない」
「そうか…遺体は?」
「酒場ミルフィレムのマスター。ハリントン・ベス。65歳の男性だ」
「……65歳?」
「あぁ」
目下には右半身を喰いちぎられた亡骸が横たわっていた。あまり時間は経っている様には思えない。木製の床板にはテカテカとした血痕が残っており、それが事件の生々しさを教えてくれる。
「人狼が、65歳の男性を…ねぇ」
珍しい話ではなかったが余り見られないケースだ。ま、これを人は珍しいと言うのだろうが。
「トルグレム。間違いなく“狼”はこの街にいるんだ。焦る必要も無い。少しずつ範囲を絞っていって、確実に活動範囲を一箇所に追い込めば殺せる」
「しかし、今は人狼の居場所がまるで検討付かない。そして種類も……」
トルグレムは険しい表情だ。
「安心しろ。私が来た。確実に人狼は殺す。この手で…例え、どんな手段を使ってでも……」
「そうか。頼もしいな。流石は赤ずきんだ」
「その呼び方、あまり好きじゃないんだ。トルグレム」
私は現場を立ち去り、対策本部が設けられているホテルに入る。
『トナードのホテルとは大違いだ事』
これが外観を見た第一感想だった。私が今、居る都市は我が国メルエムの中でも4番目に次ぐ大きさの大都市であり、有名な観光名所でもあった。その名は“レイクシティ”。煉瓦の家が多く建ち並んでいるのが印象的な街だ。
対策本部はホテル4階の多目的広場にあった。
「遅くなって済まない。先程シティ入りした」
席が立ち並び会議室となった多目的広場に私は顔を出す。
「待ったぞ、赤ずきん。トルグレムから聞いていると思うが、圧倒的人手不足だ。狼の種類も未だ、特定出来ていないし規模も検討すら付いていない。街丸ごと一つを閉鎖するのでやっとって所だ」
副課長のメイル・ノワークが私を待ち侘びた表情で迎え入れてくれた。
「メイル。現状報告はそれだけか?教会は笑われ者になるぞ。なんとしてでも3日以内に見つけ出して殲滅しなければ」
「3日以内……赤ずきん、どうするんだ?」
「一先ず、一連の事件の目撃者……を探そうか」
「ご苦労さま」
ここまで運んでくれた馬とおじさんに礼を言い、私は閉鎖された都市へと入る。関所では都市の警務局関係者が私を待っていたんだ。
「教会本部のサテライト=ヴィル・アストレア」
聖職者が持っている“誓いの紋章”が入ったペンダントを彼らに見せ、私は街入りを果たす。
街の人々は私を見て、ヒソヒソと話しては指をさしたりしてる。なんて失礼な奴らだ。
「トナードの単独調査で少し遅くなった」
本部の聖職者らに私はそう言う。
どうやら事件を防げなかったらしい。本部の者が一般人が立ち入らぬ様に規制線を現場に敷いている。
「おう赤ずきん。ご苦労だったな」
特務殲滅課の課長トルグレム・アートが声を掛けてくる。
「トルグレム、一体どうなっている。何故、人が襲われた?」
「圧倒的人手不足だ。我々の数ではこの広い街を完全には守り切れない」
「そうか…遺体は?」
「酒場ミルフィレムのマスター。ハリントン・ベス。65歳の男性だ」
「……65歳?」
「あぁ」
目下には右半身を喰いちぎられた亡骸が横たわっていた。あまり時間は経っている様には思えない。木製の床板にはテカテカとした血痕が残っており、それが事件の生々しさを教えてくれる。
「人狼が、65歳の男性を…ねぇ」
珍しい話ではなかったが余り見られないケースだ。ま、これを人は珍しいと言うのだろうが。
「トルグレム。間違いなく“狼”はこの街にいるんだ。焦る必要も無い。少しずつ範囲を絞っていって、確実に活動範囲を一箇所に追い込めば殺せる」
「しかし、今は人狼の居場所がまるで検討付かない。そして種類も……」
トルグレムは険しい表情だ。
「安心しろ。私が来た。確実に人狼は殺す。この手で…例え、どんな手段を使ってでも……」
「そうか。頼もしいな。流石は赤ずきんだ」
「その呼び方、あまり好きじゃないんだ。トルグレム」
私は現場を立ち去り、対策本部が設けられているホテルに入る。
『トナードのホテルとは大違いだ事』
これが外観を見た第一感想だった。私が今、居る都市は我が国メルエムの中でも4番目に次ぐ大きさの大都市であり、有名な観光名所でもあった。その名は“レイクシティ”。煉瓦の家が多く建ち並んでいるのが印象的な街だ。
対策本部はホテル4階の多目的広場にあった。
「遅くなって済まない。先程シティ入りした」
席が立ち並び会議室となった多目的広場に私は顔を出す。
「待ったぞ、赤ずきん。トルグレムから聞いていると思うが、圧倒的人手不足だ。狼の種類も未だ、特定出来ていないし規模も検討すら付いていない。街丸ごと一つを閉鎖するのでやっとって所だ」
副課長のメイル・ノワークが私を待ち侘びた表情で迎え入れてくれた。
「メイル。現状報告はそれだけか?教会は笑われ者になるぞ。なんとしてでも3日以内に見つけ出して殲滅しなければ」
「3日以内……赤ずきん、どうするんだ?」
「一先ず、一連の事件の目撃者……を探そうか」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる