夜が長いこの世界で

柿沼 ぜんざい

文字の大きさ
37 / 40

-第37夜- そして恐怖の夜が幕を開ける

しおりを挟む
 時を少し遡り、3時過ぎ。再度集められた参加者らが解散してからある程度経ってからの頃だった。

 オーエンと探偵は踊り子の踊りを見ながらこんな話をしていた。


「まさか、人狼が殺人を起こすなんてな。想像もしてなかったよ」

「言ったでしょう?私のいる所、必ず事件は起こる、と」

 互いにテーブルの上に置いてあるスナック菓子をツマミ、一口酒で流し込むとまた一つツマミを手に取った。

「所でポルア。はついているんだろうな?」

 オーエンは覗き込むように尋ねる。

「済まない、まだ見当がついていないんだオーエン」

 探偵はツマミをまた取ろうとする。するとオーエンはその手を止めた。

「た・べ・す・ぎ・だ。ポアロしっかりしろ、想定外の事態で驚いているのも無理も無い。だが、運良くこの屋敷内には保安官と王国騎士団の分隊長がいる。彼らにだけでも本当の事を話し、味方になってもらおう」

 探偵は当主の提案に「うーん」と悩むような態度を取ると「騎士団の方はともかく、保安官の方は他国のだろ?たまたまこの屋敷を訪れただけなら、話す必要は無いでしょ?あの瞳の色の感じからして彼は恐らく、北欧人だ。私はあっちの方の国の人は信じていなくてね」と返す。

 するとこのタイミングで踊を終えた踊り子の女性が彼らの席へと戻ってきた。

「どぉ?どうだった?良かったでしょ?私のダンス」

 自信満々にそう訊く彼女に対し2人は「良かった」と答える。「お前らも良かったよな?」とオーエンはお世話係3人にも尋ねるが彼女らも「えぇ良かったです」とだけ答える。

「ホントに!?それなら良かったよ!結構、練習したんだよね?私どう?上手いでしょ?あのケーキ屋のおばさんより腰使い上手いしね!私にも扇いでよ!お世話係の人!」

 そう陽気に答える彼女。しかし、次の瞬間踊り子は「ちっ」と舌打ちをし「話に夢中でちゃんと見てなかった癖に」と微かな声で呟いたのだった。探偵はその一言を聞き逃さなかった。


 同時刻、場面は代わり、ある2人の部屋。


「お姉様……私は一体、どうすれば?」

「大丈夫です。ミカエラ。私と神を信じなさい。私達は必ず生き残ります、この暗い夜を。太陽神 イムルナ様を信じましょう。さぁ、お祈りを」

「えぇ、お姉様」

 修道女の様な格好をしている2人は月も見えない霞んだ空に窓から祈りを捧げた。


 ***


 暗く長い廊下を一人同等と歩く女性在りけり。其の者、すれ違う者に声を掛けられるも何やら不思議な幻術を使い、邪魔者を傷付ける事無く遠避ける。

 其の者、目の前からある存在に声を掛け、微笑む。

「へぇ、面白いことやってんじゃん?(笑)」

 其の者、人の姿をしておりながら圧倒的な恐怖心を目先の者に植え付ける。

 其の者、ある者に問い掛ける。

「ねぇ、良かったら私と手を組まない?断っても私の能力ちからで無理矢理でも従わすけどね?」
 
 其の者、ある者と共にある人物の部屋を訪れる。

「へぇ、あんた鍵持ってんだ?マスターキー?」

 ある者、其の者の問いに答えず、扉を開ける。

「まぁ、どっちでもいいけど。さぁ、喰ってきな。たんとお食べ。もう一人の方の頭は私が操っとくから」

 其の者、玄関の前で腕を組み不敵な笑みを浮べる。

「これから何日間は楽しい夜になりそうね。なぁんだ、

 其の者、部屋から聞こえる咀嚼そしゃくの音に歯を見せ、唇に長い爪を添える。

「今度は勝てるといいな。赤 ず き ん」

 其の者、余裕有りけり。


 ***


 時、同じくして白百院 蓮弥の部屋。

 未だ素性知れない老人はベッドの上で坐禅ざぜんを組み、瞑想にけていた。

 そして、そんな彼の部屋の前を居座る男。白百院の監視を任せられた保安官だ。睡魔と戦いながらも彼は白百院が外を出ないか或いは彼の部屋を訪れようとする者がいないかオーエンの言いつけを守って監視していたのだった。

 (寝みぃ……けど、朝までは寝れねぇな。あと何時間で夜が開けるんだ?2、3かぁ?)

 そんなことを考えていると保安官の目の前を2人の執事が通った。

「おぅ、お疲れ。巡回か?」

 寝惚け眼で保安官は2人の男に声を掛ける。すると男のうち1人が止まり、保安官に言った。

「いえ、僕らは巡回では無くある者に呼び鈴で呼ばれて」

「あ~そういうことね。んまぁ、お互いにご苦労ちゃんって事で」

 保安官に労いの言葉を掛けられ2人は良い気持ちで廊下を後にした。

 視点は執事2人彼らに移り、進む。

「かったるいよなぁ~なんで俺らが」

「仕方ないよ、ミシェルさんの命令だもん」

 2人はある部屋の前へと止まると「コンコン」と扉を叩いた。

「軽食とお飲み物を用意しましたよ。

ガチャリと音を立てて扉が内側に開く。

「遅いよぉ~執事さぁんんん、もうボクお腹ペコペコ~」

 猫背気味の長髪の男が狭い扉の隙間からヌッと顔を出した。

「ねぇ、所でこの屋敷ここって幼女いる?」

 ハーメルンはニィっと気持ち悪い笑顔を浮かべた。
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します

冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」 結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。 私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。 そうして毎回同じように言われてきた。 逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。 だから今回は。

処理中です...