20 / 27
第20話 学校で、落としてしまったペンダント
しおりを挟む
その日は、朝からずっと雨が降り続けていました。そのせいで校舎から外に出る生徒はほとんどいません。短い十分の休み時間中は、どこに行っても誰かがいて、華奈は一人になれる場所を見つけることができませんでした。
お昼休みも同じで、教室も図書室も人がいっぱいです。華奈は心の中でシオンに話しかけ続けていました。
『シオン、ごめん……人のいない場所が全然見つからないの……』
『そういう日もあるさ……気にするな!』
『もうちょっと探してみる……!』
華奈はスケッチブックと筆箱をかかえ、校舎の端から端まで、急ぎ足で人のいない場所を探しました。けれども見つからず、体育館の方まで行ってみると、そこではサッカーやバスケットを遊んでいる子達が沢山いました。
「やっぱりここも人でいっぱい……」
体育館の中を入り口からのぞいた華奈はつぶやきます。舞台の袖なら一人になれるかもしれませんが、様々な機材の置かれたそこは、入ることを禁じられています。
「どうしよう……」
少しながめて考えた後、華奈は教室の方へ戻ることにしました。くるりと振り向き校舎の方を見ると、絢音たち、グループの子たちが、わたり廊下を体育館の方に向かってきています。華奈は、笑顔で手を振りながら話しかけました。
「絢音ちゃんたち! 体育館で遊ぶの?」
絢音が華奈をじっと見つめ、手を軽く振ってから言います。
「少しでも人の少ない所を探しているだけよ。教室も他の所も人が多いし雨のせいでジメジメしているし」
その様子を見ていたグループの子たちが、絢音の頭をグリグリとなで回したり、背中をポンポンと叩いたりしています。絢音は「やめてよ、もう」といいながらも、本気で嫌がってはいないようでした。そして、
「華奈さんは?」
と、聞いてきます。そんな彼女たちの様子を、なぜだかうれしい気持ちで華奈は見ていました。そして、私もよ、と答えようとしたその時──
「──‼──」
華奈の後ろ、体育館の中からバスケットボールが飛んできて、なんと華奈の背中に当たってしまいました。
華奈は前のめりに倒れ、はずみで持っていた筆箱もスケッチブックも地面に落ちてしまいました。
「ごめーん! 大丈夫かー?」
ボールを投げたらしい上級生が、体育館の中の方から叫びます。
「だ……大丈夫です。背中とひざがちょっと痛いけど……」
華奈がなんとか立ち上がると、シオンの声が聞こえてきました。
「華奈! 大丈夫か⁈」
目をパチクリさせると華奈は、シオンの姿を探して落としてしまった筆箱を見ました。するとなんと、蓋が開いてしまっています。
急いで拾い確認すると、中は空でシオンもいません。鉛筆だけは筆箱のすぐ横に落ちていたので拾って戻しましたが、ペンダントもどこかに転がっていってしまったようで、見当たりません。
『俺はここだ。心配するな』
再びシオンの声が聞こえて、今度はそれが心に直接話しかけられているのだとわかりました。
『シオン、どこにいるの?』
『華奈の肩の上』
言われて少し首を振ると、何も見えないけれど、左肩の上に何かが乗っているような感じがすることに気がつきます。
『ゴメンね、転んじゃった……シオンは大丈夫?』
『俺は大丈夫。それよりペンダントが……』
シオンがそう言いかけた時、心配してやってきた絢音たちが華奈に話しかけました。
「華奈さん、大丈夫?」
「ほんとごめんな……」
先程大丈夫かと聞いてきた上級生も駆けつけて、すまなさそうにそう言いました。
「先輩たちは、もっとボールのコントロールを上手にしてくださいよー!」
わいわいと、集まってきた人たちに囲まれて、華奈は「大丈夫、ありがとう」と言いながらスケッチブックを拾い、さらに地面の上をキョロキョロと見ながらペンダントを探します。
「華奈ちゃん、何か落としたの?」
「う……うん……」
(どうしよう、学校に持ってきたらダメなペンダントを探してるなんて言えないし……)
華奈が暗い顔をして下を向いていると、絢音が華奈の手をつかんで言いました。
「華奈さん、念のため保健室に行くわよ!」
「え、あ……でも私……!」
絢音に問答無用でひっぱられ、グループの子達に囲まれた華奈は、保健室へと連れていかれました。
お昼休みも同じで、教室も図書室も人がいっぱいです。華奈は心の中でシオンに話しかけ続けていました。
『シオン、ごめん……人のいない場所が全然見つからないの……』
『そういう日もあるさ……気にするな!』
『もうちょっと探してみる……!』
華奈はスケッチブックと筆箱をかかえ、校舎の端から端まで、急ぎ足で人のいない場所を探しました。けれども見つからず、体育館の方まで行ってみると、そこではサッカーやバスケットを遊んでいる子達が沢山いました。
「やっぱりここも人でいっぱい……」
体育館の中を入り口からのぞいた華奈はつぶやきます。舞台の袖なら一人になれるかもしれませんが、様々な機材の置かれたそこは、入ることを禁じられています。
「どうしよう……」
少しながめて考えた後、華奈は教室の方へ戻ることにしました。くるりと振り向き校舎の方を見ると、絢音たち、グループの子たちが、わたり廊下を体育館の方に向かってきています。華奈は、笑顔で手を振りながら話しかけました。
「絢音ちゃんたち! 体育館で遊ぶの?」
絢音が華奈をじっと見つめ、手を軽く振ってから言います。
「少しでも人の少ない所を探しているだけよ。教室も他の所も人が多いし雨のせいでジメジメしているし」
その様子を見ていたグループの子たちが、絢音の頭をグリグリとなで回したり、背中をポンポンと叩いたりしています。絢音は「やめてよ、もう」といいながらも、本気で嫌がってはいないようでした。そして、
「華奈さんは?」
と、聞いてきます。そんな彼女たちの様子を、なぜだかうれしい気持ちで華奈は見ていました。そして、私もよ、と答えようとしたその時──
「──‼──」
華奈の後ろ、体育館の中からバスケットボールが飛んできて、なんと華奈の背中に当たってしまいました。
華奈は前のめりに倒れ、はずみで持っていた筆箱もスケッチブックも地面に落ちてしまいました。
「ごめーん! 大丈夫かー?」
ボールを投げたらしい上級生が、体育館の中の方から叫びます。
「だ……大丈夫です。背中とひざがちょっと痛いけど……」
華奈がなんとか立ち上がると、シオンの声が聞こえてきました。
「華奈! 大丈夫か⁈」
目をパチクリさせると華奈は、シオンの姿を探して落としてしまった筆箱を見ました。するとなんと、蓋が開いてしまっています。
急いで拾い確認すると、中は空でシオンもいません。鉛筆だけは筆箱のすぐ横に落ちていたので拾って戻しましたが、ペンダントもどこかに転がっていってしまったようで、見当たりません。
『俺はここだ。心配するな』
再びシオンの声が聞こえて、今度はそれが心に直接話しかけられているのだとわかりました。
『シオン、どこにいるの?』
『華奈の肩の上』
言われて少し首を振ると、何も見えないけれど、左肩の上に何かが乗っているような感じがすることに気がつきます。
『ゴメンね、転んじゃった……シオンは大丈夫?』
『俺は大丈夫。それよりペンダントが……』
シオンがそう言いかけた時、心配してやってきた絢音たちが華奈に話しかけました。
「華奈さん、大丈夫?」
「ほんとごめんな……」
先程大丈夫かと聞いてきた上級生も駆けつけて、すまなさそうにそう言いました。
「先輩たちは、もっとボールのコントロールを上手にしてくださいよー!」
わいわいと、集まってきた人たちに囲まれて、華奈は「大丈夫、ありがとう」と言いながらスケッチブックを拾い、さらに地面の上をキョロキョロと見ながらペンダントを探します。
「華奈ちゃん、何か落としたの?」
「う……うん……」
(どうしよう、学校に持ってきたらダメなペンダントを探してるなんて言えないし……)
華奈が暗い顔をして下を向いていると、絢音が華奈の手をつかんで言いました。
「華奈さん、念のため保健室に行くわよ!」
「え、あ……でも私……!」
絢音に問答無用でひっぱられ、グループの子達に囲まれた華奈は、保健室へと連れていかれました。
0
あなたにおすすめの小説
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
アリアさんの幽閉教室
柚月しずく
児童書・童話
この学校には、ある噂が広まっていた。
「黒い手紙が届いたら、それはアリアさんからの招待状」
招かれた人は、夜の学校に閉じ込められて「恐怖の時間」を過ごすことになる……と。
招待状を受け取った人は、アリアさんから絶対に逃れられないらしい。
『恋の以心伝心ゲーム』
私たちならこんなの楽勝!
夜の学校に閉じ込められた杏樹と星七くん。
アリアさんによって開催されたのは以心伝心ゲーム。
心が通じ合っていれば簡単なはずなのに、なぜかうまくいかなくて……??
『呪いの人形』
この人形、何度捨てても戻ってくる
体調が悪くなった陽菜は、原因が突然現れた人形のせいではないかと疑いはじめる。
人形の存在が恐ろしくなって捨てることにするが、ソレはまた家に現れた。
陽菜にずっと付き纏う理由とは――。
『恐怖の鬼ごっこ』
アリアさんに招待されたのは、美亜、梨々花、優斗。小さい頃から一緒にいる幼馴染の3人。
突如アリアさんに捕まってはいけない鬼ごっこがはじまるが、美亜が置いて行かれてしまう。
仲良し3人組の幼馴染に一体何があったのか。生き残るのは一体誰――?
『招かれざる人』
新聞部の七緒は、アリアさんの記事を書こうと自ら夜の学校に忍び込む。
アリアさんが見つからず意気消沈する中、代わりに現れたのは同じ新聞部の萌香だった。
強がっていたが、夜の学校に一人でいるのが怖かった七緒はホッと安心する。
しかしそこで待ち受けていたのは、予想しない出来事だった――。
ゾクッと怖くて、ハラハラドキドキ。
最後には、ゾッとするどんでん返しがあなたを待っている。
野良犬ぽちの冒険
KAORUwithAI
児童書・童話
――ぼくの名前、まだおぼえてる?
ぽちは、むかし だれかに かわいがられていた犬。
だけど、ひっこしの日に うっかり わすれられてしまって、
気がついたら、ひとりぼっちの「のらいぬ」に なっていた。
やさしい人もいれば、こわい人もいる。
あめの日も、さむい夜も、ぽちは がんばって生きていく。
それでも、ぽちは 思っている。
──また だれかが「ぽち」ってよんでくれる日が、くるんじゃないかって。
すこし さみしくて、すこし あたたかい、
のらいぬ・ぽちの ぼうけんが はじまります。
理想の王妃様
青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。
王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。
王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題!
で、そんな二人がどーなったか?
ざまぁ?ありです。
お気楽にお読みください。
王さまとなぞの手紙
村崎けい子
児童書・童話
ある国の王さまのもとに、なぞの手紙が とどきました。
そこに書かれていた もんだいを かいけつしようと、王さまは、三人の大臣(だいじん)たちに それぞれ うえ木ばちをわたすことにしました。
「にじ色の花をさかせてほしい」と――
*本作は、ミステリー風の童話です。本文及び上記紹介文中の漢字は、主に小学二年生までに学習するもののみを使用しています(それ以外は初出の際に振り仮名付)。子どもに読みやすく、大人にも読み辛くならないよう、心がけたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる