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第21話 ありがとう、という気持ち
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「あら、転んじゃったの? 大変! 急いで手当しないと……」
保健室に到着すると、救護の先生はちょうど職員室へ行くところのようで、何か書類を持って保健室のカギを閉めようとしているところでした。
「先生、大丈夫です! ガーゼと絆創膏だけ出してもらえますか?」
「私達で出来るから心配しないで!」
「出してもらった物以外、触らないので安心してください!」
「なんなら先生が戻ってくるまでお留守番してましょうか?」
華奈は、勢いに押されて見ているだけで、グループの子達が笑顔で次々に言いました。
「そう? じゃあお願いしようかしら」
先生はそう答え、テキパキとガーゼ、清潔なタオル、絆創膏を机の上に置いて「すぐ戻ってくるから、待っていてね」と言って、保健室から出て行きました。
「……さて。とりあえずあなたはそこに座りなさい」
絢音が机横のイスを指して言いました。
華奈の膝は、こすれた痕があるだけで血は出ていないし、痛みもほんの少しだけです。なので、自分の怪我よりも、どこかにいってしまったペンダントのことが気がかりでしょうがなく、急いでさっきの所に戻りたい気持ちでいっぱいでした。
「でも……手当てするほどじゃ……」
すると、沙耶が口に人差し指を当てて言いました。
「ひどくはないけど、擦りむいているのは事実だし。小さな絆創膏一つでいいから、つけておきなよ」
四人に囲まれながら華奈がイスに座ると「とりあえずキレイにしよう」と沙耶がぬれたガーゼで膝をそっとふいてくれます。
「ありがとう…………」
華奈は申し訳なさそうに言いました。すると、沙耶の横にいる絢音が菜々子に言います。
「菜々子、お願い」
「わかったわ」
そう言うと菜々子は、部屋の入り口付近へ行き、ドアの前に立ちました。
「?」
華奈が横目でそれを確認している間に、綺麗にされた膝は、真理子によって絆創膏が貼られていきます。 そして、絢音が華奈を見つめながら話しだしました。
「コレでしょ? あなたが探していた物」
絢音がポケットから取り出したのはなんと、シオンの力のペンダントでした。
「……!……」
あの時、筆箱から飛び出たペンダントは、絢音の所まで転がっていたのです。
「それは…………!」
華奈の心臓の鼓動は、これまでにないほどに大きくなり、口から飛び出してきそうでした。
(どうしよう……! なんて説明しよう……学校に必要のないペンダントを持ってきていることを……)
華奈の頭は「どうしよう」でいっぱいになります。
『華奈、落ち着け。彼女達の……絢音の顔をちゃんと見るんだ』
シオンの優しい声が頭に響き、華奈は瞬きを数回して、絢音の顔をじっとみつめてみました。すると、
「心配しないで。特に誰かに言おうとか、思ってないから」
よっぽど華奈が、おびえた顔をしていたからか、絢音は呆れたような顔をして言います。
「鏡のこと、ああ言ってくれていたあなたのことだもん。わかるわよ……何か理由があるんだって」
華奈は驚いた目で絢音を見ました。
「…………」
「別に理由なんて聞きたくないし。まぁ……これからは、もっと気をつけることね」
そう、いじわるそうに言いながら、絢音は華奈の手をとりペンダントを乗せます。すると、すぐ横に立つ沙耶が、ポカッと絢音の頭を軽くなぐりました。
「全く。絢音はなんでそういじわるな言い方するの⁈」
「そうよ、素直に言ったらいいのに。興味はありまくるけど聞かないし、誰にも言わないよ、って」
「そうそう。そんないじわるなこと言ってると、誤解されちゃうよー」
菜々子と真理子も続いて言いました。すると絢音はフンッと言ってそっぽを向いてしまいます。
三人はそう言っていたけれど華奈には、絢音が意地悪だなんて全然思えませんでした。だって絢音の耳は、てれているのか、恥ずかしそうに真っ赤になっていたから……
「……ありがとう!」
華奈と絢音たちは、好きなアニメやアクセサリーの話に花を咲かせました。
昼休みが終わり午後の授業が始まると、じめじめとした空気の中だったけれど、華奈はそんなことが気にならないくらい嬉しい気持ちでした。
そしてその日の夜、眠る時間になって布団に潜り込んだ時、華奈はずっと感じていたことを口にし始めます。
「今日は絢音ちゃんたちに助けてもらって、すごくうれしかった……今もすごく心が温かいの……」
するとシオンが言います。
「ありがとうっていう気持ちもあるだろ?」
「……うん」
「その、ありがとうって言う気持ちや、心が温かいっていうのが、良い行いをした時に助けられた者から生まれるモノで、俺の力にもなるんだ」
「これが……?」
華奈は、ベッドの上からシオンの方を見ました。シオンは今、横の絨毯の上に置いた大きなクッションに寝そべっています。
「そう。昨日鏡が見つかった後も……そう言えば帰る時に話していた時にもその子から生まれてたな」
「彩音ちゃんから?」
「あぁ」
あの時は、かわいいウサギの消しゴムをもらって、私こそありがとうと思ったのに。
「華奈が悩んでいたことの話。それも彼女にとっては良いものだったらしいな」
そう言ってシオンはにっこりと笑いました。
『良い行い』をしてシオンに返ってくるという力。それは華奈が行えば華奈自身に『良い何か』をもたらしてくれるのだろう、そうシオンは言いました。
「じゃあ、この温かい気持ちはシオンの力になるものと同じで、絢音ちゃん達がしてくれた『良いこと』でもあるのね」
くすぐったいような笑顔で言う華奈に、やわらかい笑顔でシオンは答えました。
「そうだな」
保健室に到着すると、救護の先生はちょうど職員室へ行くところのようで、何か書類を持って保健室のカギを閉めようとしているところでした。
「先生、大丈夫です! ガーゼと絆創膏だけ出してもらえますか?」
「私達で出来るから心配しないで!」
「出してもらった物以外、触らないので安心してください!」
「なんなら先生が戻ってくるまでお留守番してましょうか?」
華奈は、勢いに押されて見ているだけで、グループの子達が笑顔で次々に言いました。
「そう? じゃあお願いしようかしら」
先生はそう答え、テキパキとガーゼ、清潔なタオル、絆創膏を机の上に置いて「すぐ戻ってくるから、待っていてね」と言って、保健室から出て行きました。
「……さて。とりあえずあなたはそこに座りなさい」
絢音が机横のイスを指して言いました。
華奈の膝は、こすれた痕があるだけで血は出ていないし、痛みもほんの少しだけです。なので、自分の怪我よりも、どこかにいってしまったペンダントのことが気がかりでしょうがなく、急いでさっきの所に戻りたい気持ちでいっぱいでした。
「でも……手当てするほどじゃ……」
すると、沙耶が口に人差し指を当てて言いました。
「ひどくはないけど、擦りむいているのは事実だし。小さな絆創膏一つでいいから、つけておきなよ」
四人に囲まれながら華奈がイスに座ると「とりあえずキレイにしよう」と沙耶がぬれたガーゼで膝をそっとふいてくれます。
「ありがとう…………」
華奈は申し訳なさそうに言いました。すると、沙耶の横にいる絢音が菜々子に言います。
「菜々子、お願い」
「わかったわ」
そう言うと菜々子は、部屋の入り口付近へ行き、ドアの前に立ちました。
「?」
華奈が横目でそれを確認している間に、綺麗にされた膝は、真理子によって絆創膏が貼られていきます。 そして、絢音が華奈を見つめながら話しだしました。
「コレでしょ? あなたが探していた物」
絢音がポケットから取り出したのはなんと、シオンの力のペンダントでした。
「……!……」
あの時、筆箱から飛び出たペンダントは、絢音の所まで転がっていたのです。
「それは…………!」
華奈の心臓の鼓動は、これまでにないほどに大きくなり、口から飛び出してきそうでした。
(どうしよう……! なんて説明しよう……学校に必要のないペンダントを持ってきていることを……)
華奈の頭は「どうしよう」でいっぱいになります。
『華奈、落ち着け。彼女達の……絢音の顔をちゃんと見るんだ』
シオンの優しい声が頭に響き、華奈は瞬きを数回して、絢音の顔をじっとみつめてみました。すると、
「心配しないで。特に誰かに言おうとか、思ってないから」
よっぽど華奈が、おびえた顔をしていたからか、絢音は呆れたような顔をして言います。
「鏡のこと、ああ言ってくれていたあなたのことだもん。わかるわよ……何か理由があるんだって」
華奈は驚いた目で絢音を見ました。
「…………」
「別に理由なんて聞きたくないし。まぁ……これからは、もっと気をつけることね」
そう、いじわるそうに言いながら、絢音は華奈の手をとりペンダントを乗せます。すると、すぐ横に立つ沙耶が、ポカッと絢音の頭を軽くなぐりました。
「全く。絢音はなんでそういじわるな言い方するの⁈」
「そうよ、素直に言ったらいいのに。興味はありまくるけど聞かないし、誰にも言わないよ、って」
「そうそう。そんないじわるなこと言ってると、誤解されちゃうよー」
菜々子と真理子も続いて言いました。すると絢音はフンッと言ってそっぽを向いてしまいます。
三人はそう言っていたけれど華奈には、絢音が意地悪だなんて全然思えませんでした。だって絢音の耳は、てれているのか、恥ずかしそうに真っ赤になっていたから……
「……ありがとう!」
華奈と絢音たちは、好きなアニメやアクセサリーの話に花を咲かせました。
昼休みが終わり午後の授業が始まると、じめじめとした空気の中だったけれど、華奈はそんなことが気にならないくらい嬉しい気持ちでした。
そしてその日の夜、眠る時間になって布団に潜り込んだ時、華奈はずっと感じていたことを口にし始めます。
「今日は絢音ちゃんたちに助けてもらって、すごくうれしかった……今もすごく心が温かいの……」
するとシオンが言います。
「ありがとうっていう気持ちもあるだろ?」
「……うん」
「その、ありがとうって言う気持ちや、心が温かいっていうのが、良い行いをした時に助けられた者から生まれるモノで、俺の力にもなるんだ」
「これが……?」
華奈は、ベッドの上からシオンの方を見ました。シオンは今、横の絨毯の上に置いた大きなクッションに寝そべっています。
「そう。昨日鏡が見つかった後も……そう言えば帰る時に話していた時にもその子から生まれてたな」
「彩音ちゃんから?」
「あぁ」
あの時は、かわいいウサギの消しゴムをもらって、私こそありがとうと思ったのに。
「華奈が悩んでいたことの話。それも彼女にとっては良いものだったらしいな」
そう言ってシオンはにっこりと笑いました。
『良い行い』をしてシオンに返ってくるという力。それは華奈が行えば華奈自身に『良い何か』をもたらしてくれるのだろう、そうシオンは言いました。
「じゃあ、この温かい気持ちはシオンの力になるものと同じで、絢音ちゃん達がしてくれた『良いこと』でもあるのね」
くすぐったいような笑顔で言う華奈に、やわらかい笑顔でシオンは答えました。
「そうだな」
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