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改稿版
第2話 解放されたパンツ
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「あれ、そういえば鬼さん珍しい。二本の角なんだね?」
二本角が珍しい、だと──!?
一本角は戦闘力に長け、二本角は知略に長ける。迷信にも近い謂れではあるが、どちらも特に珍しいものではないはずだ。
「鬼さん、大丈夫? 一緒に遊べる?」
パンツを引っ張ったままの少女が問うてくる。
「一緒に遊ぶも何も」
自分は鬼長を探さなければならないから、と続けようとしたその時。突然何かが陽射しを遮った。
「‼︎」
この俺に気配も察知されず、ここまで接近してくるとは一体何なんだ⁉︎ そう思った瞬間、わずかだが、その“何か”から確かな殺気を感じ、
「お前たち! 伏せるんだ‼︎」
咄嗟に子供たちを背に、守るようにして立ち、右手に持っていた金棒を、ソレに向かって投げた。
ガキィイイン!!
響いたのは金属音。
鉄の塊でも飛んできたのか⁉︎
目を細めて見据えていると、ソレはパラパラと小さな破片を散らしながら、ドゴッという音をたてて地面に墜落した。
「坊主たち、怪我はないか⁈」
飛んできた破片は手で払い落としたが、一応振り返り確認すると、子供達は皆無事のようだ。俺のパンツも無事解放されていて、全員が頭を抱えてしゃがんでいる。
ほっと一息つくと、ソレから殺気が消えていることに気づいた。確認しようと目を向けると、その付近に竹とんぼのような形をした物がパラパラと散らばるように落ちている。
さっきこっちに飛んできた破片も同じようなものだったと思うが……。
「一体何だってんだ……?」
落ちた大きな黒い塊を見にいくと、それは金棒が見事に命中し、ひしゃげていた。
「ちょっと分厚くて、丸い盆……?」
それは多分、元々はそんな形だったのだろう。近くに落ちていた金棒を拾い上げ、見ていると、ソレはパリパリと小さな雷のような物を発し始めた。そして間をおかずに突然大きな音を出す。
ビーッビーッビーッビーッ‼︎
「⁉︎ なんなんだコイツは…………?」
「鬼さん大変! 警報音だ!」
「まずいよ! 警察が来るよ!」
「鬼さん何も悪いことしてないのに!」
「鬼さん逃げて! 捕まっちゃう!」
あまりのけたたましい音に、両耳を塞ぎたいくらいなのだが。パンツは再び同じ少女に引っ張られ、手を離すわけにはいかず。
「捕まる、だと……?」
俺は金棒を持つ右手で何とか片耳だけ押さえ、顔をしかめながらつぶやいた。
一体何に。人に怖がられるからと、一族の大半を連れて島へと移り住み、自給自足をしている俺達が。なんなら、外敵が来た時には倒して人のいる本島を守っているというのに。
一体何に捕まるというのだ?
「そこの赤い髪の鬼! こっちへ! 早く‼︎」
慌てる子供達の騒ぎ声を越えて、一人の女の声が俺に届いた。見ると野原の向こうには山へと続く森があり、森に飲み込まれたかのようなすすぼけた鳥居がある。女はそこに立っていた。
「鬼灯さん!」
「鬼さん行って!」
「鬼灯さんのとこなら大丈夫!」
「行って行って!」
パンツは再び解放され、子供達に押されて数歩そちらに歩く。その慌て具合からも、捕まるということは、あまり楽しいことでは無さそうだ。
「ありがとうな!」
訳がわからない状態ではあるが、決意した俺は礼を言って、自らそちらに走り出した。
振り向き様に子供達の方を見ると、その後方にそびえ立つ四角い何かの群が、改めてここは鬼ヶ島……自分の場所ではないと理解させてくる。
一体なんなんだ⁉︎ ここは…………!
二本角が珍しい、だと──!?
一本角は戦闘力に長け、二本角は知略に長ける。迷信にも近い謂れではあるが、どちらも特に珍しいものではないはずだ。
「鬼さん、大丈夫? 一緒に遊べる?」
パンツを引っ張ったままの少女が問うてくる。
「一緒に遊ぶも何も」
自分は鬼長を探さなければならないから、と続けようとしたその時。突然何かが陽射しを遮った。
「‼︎」
この俺に気配も察知されず、ここまで接近してくるとは一体何なんだ⁉︎ そう思った瞬間、わずかだが、その“何か”から確かな殺気を感じ、
「お前たち! 伏せるんだ‼︎」
咄嗟に子供たちを背に、守るようにして立ち、右手に持っていた金棒を、ソレに向かって投げた。
ガキィイイン!!
響いたのは金属音。
鉄の塊でも飛んできたのか⁉︎
目を細めて見据えていると、ソレはパラパラと小さな破片を散らしながら、ドゴッという音をたてて地面に墜落した。
「坊主たち、怪我はないか⁈」
飛んできた破片は手で払い落としたが、一応振り返り確認すると、子供達は皆無事のようだ。俺のパンツも無事解放されていて、全員が頭を抱えてしゃがんでいる。
ほっと一息つくと、ソレから殺気が消えていることに気づいた。確認しようと目を向けると、その付近に竹とんぼのような形をした物がパラパラと散らばるように落ちている。
さっきこっちに飛んできた破片も同じようなものだったと思うが……。
「一体何だってんだ……?」
落ちた大きな黒い塊を見にいくと、それは金棒が見事に命中し、ひしゃげていた。
「ちょっと分厚くて、丸い盆……?」
それは多分、元々はそんな形だったのだろう。近くに落ちていた金棒を拾い上げ、見ていると、ソレはパリパリと小さな雷のような物を発し始めた。そして間をおかずに突然大きな音を出す。
ビーッビーッビーッビーッ‼︎
「⁉︎ なんなんだコイツは…………?」
「鬼さん大変! 警報音だ!」
「まずいよ! 警察が来るよ!」
「鬼さん何も悪いことしてないのに!」
「鬼さん逃げて! 捕まっちゃう!」
あまりのけたたましい音に、両耳を塞ぎたいくらいなのだが。パンツは再び同じ少女に引っ張られ、手を離すわけにはいかず。
「捕まる、だと……?」
俺は金棒を持つ右手で何とか片耳だけ押さえ、顔をしかめながらつぶやいた。
一体何に。人に怖がられるからと、一族の大半を連れて島へと移り住み、自給自足をしている俺達が。なんなら、外敵が来た時には倒して人のいる本島を守っているというのに。
一体何に捕まるというのだ?
「そこの赤い髪の鬼! こっちへ! 早く‼︎」
慌てる子供達の騒ぎ声を越えて、一人の女の声が俺に届いた。見ると野原の向こうには山へと続く森があり、森に飲み込まれたかのようなすすぼけた鳥居がある。女はそこに立っていた。
「鬼灯さん!」
「鬼さん行って!」
「鬼灯さんのとこなら大丈夫!」
「行って行って!」
パンツは再び解放され、子供達に押されて数歩そちらに歩く。その慌て具合からも、捕まるということは、あまり楽しいことでは無さそうだ。
「ありがとうな!」
訳がわからない状態ではあるが、決意した俺は礼を言って、自らそちらに走り出した。
振り向き様に子供達の方を見ると、その後方にそびえ立つ四角い何かの群が、改めてここは鬼ヶ島……自分の場所ではないと理解させてくる。
一体なんなんだ⁉︎ ここは…………!
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