【鬼シリーズ:第一弾】鬼のパンツ

河原由虎

文字の大きさ
2 / 10
改稿版

第2話 解放されたパンツ

しおりを挟む
「あれ、そういえば鬼さん珍しい。二本の角なんだね?」

 二本角が珍しい、だと──?

 一本角は戦闘力に長け、二本角は知略に長ける。迷信にも近い謂れいわれではあるが、どちらも特に珍しいものではないはずだ。

「鬼さん、大丈夫? 一緒に遊べる?」

 パンツを引っ張ったままの少女が問うてくる。

「一緒に遊ぶも何も」

 自分は鬼長を探さなければならないから、と続けようとしたその時。突然何かが陽射しを遮った。

「‼︎」

 この俺に気配も察知されず、ここまで接近してくるとは──! そう思った瞬間、わずかだがその“何か”から確かな殺気を感じ、

「お前たち! 伏せるんだ‼︎」

 咄嗟に子供たちを背に守るようにして立ち、右手に持っていた金棒を、ソレに向かって投げた。

ガキィイイン!!

 響いたのは金属音。
 鉄の塊でも飛んできたのか⁉︎

 目を細めて見据えていると、ソレはパラパラと小さな破片を散らしながら、ドゴッという音をたてて地面に墜落した。

「坊主たち、怪我はないか⁈」

 飛んできた破片は手で払い落としたが、一応振り返り確認すると、子供達は皆無事のようだ。俺のパンツも無事解放されていて、全員が頭を抱えてしゃがんでいる。

 ほっと一息つくと、ソレから殺気が消えていることに気がついた。確認しようと目を向けると、その付近に竹とんぼのような形をした物がパラパラと散らばるように落ちている。

 さっきこっちに飛んできた破片も同じようなものだったと思うが……

「一体何だってんだ……?」

 落ちた大きな黒い塊を見にいくと、それは金棒が見事に命中し、ひしゃげていた。

「ちょっと分厚くて、丸い盆……?」

 それは多分、元々はそんな形だったのだろう。近くに落ちていた金棒を拾い上げて見ていると、ソレはパリパリと小さな雷のような物を発した。そして間をおかずに突然大きな音を出す。

ビーッビーッビーッビーッ‼︎

「⁉︎ なんなんだコイツは…………?」

「鬼さん大変! 警報音だ!」
「まずいよ! 警察が来るよ!」
「鬼さん悪いことしてないのに!」
「鬼さん逃げて! 捕まっちゃう!」

 あまりのけたたましい音に、両耳を塞ぎたいくらいなのだが。パンツは再び同じ少女に引っ張られ、手を離すわけにはいかず

「捕まる、だと……?」

 俺は金棒を持つ右手で何とか片耳だけ押さえ、顔をしかめながらつぶやいた。
 一体何に。人に怖がられるからと、一族の大半を連れて島へと移り住み、自給自足をしている俺達が。なんなら、外敵が来た時には倒して人のいる本島を守っているというのに。
 一体何に捕まるというのだ?

「そこの赤い髪の鬼! こっちへ! 早く‼︎」

 慌てる子供達の騒ぎ声を越えて、女の叫ぶ声が聞こえた。見ると、野原の向こうには山へと続く森があり、木々に飲み込まれたかのように立つ鳥居、そしてそこに叫び声の主らしき女が一人。

鬼灯ほおずきさん!」
「鬼さん行って!」
「鬼灯さんのとこなら大丈夫!」
「行って行って!」

 パンツは再び解放され、子供達に押されて数歩そちらに歩く。その慌て具合からも、捕まるということは、あまり楽しいことでは無さそうだとわかる。

「ありがとうな!」

 訳がわからない状態ではあるが、決意した俺は礼を言って、自らそちらに走り出した。
 振り向き様に子供達の方を見ると、その後方にそびえ立つ四角い何かの群が──。その景色が、ここは鬼ヶ島……自分の場所ではないと理解させてくる。

 一体なんなんだ⁉︎ ここは…………!
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

義務ですもの。

あんど もあ
ファンタジー
貴族令嬢の義務として親の決めた相手に嫁いだが、夫には愛する人がいた。夫にないがしろにされても、妻として母として嫁としての義務を果たして誠実に生きたヒロインの掴んだ、ちょっと歪んだ幸せとは。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...