【鬼シリーズ:第四弾】黄鬼の子孫の物語 〜忘れられた大切なコト〜

河原由虎

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09. 畏敬の念

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 その後の尋問にて僕は、身の上がバレないようエミさんが言っていたことだけを答え続けた。

 自分の名と、息子の病を治す方法を探しに来たとだけ――。

 それ以外の質問に対しては、わからない、思い出せないとしか答えない僕に、やがて彼等は見切りをつけたように装い……去り際に「」と、狡猾な笑みを浮かべて去っていった。

 ようやく解放されたけれど……これで終わるはずがない……。

 これから先は何をされるかわからない……そんな状況だというのに、僕の心は妙に落ち着いていた。

 何度も同じことを聞かれ、同じ答えを返し。そのたびに怒声は増し、同時に彼らから感じる力の圧も強まっていった。
 その“圧”にずっと晒され続けたせいか、いつしか僕は自分の感覚に変化を感じ、気づいた。

 彼等から感じていた圧の正体が何なのか。自分には到底どうにかすることのできない圧倒的な力への、恐怖からくるものなのだ、と――。

 そしてそれに気づいてから、変わらず『圧』は感じるものの、恐怖からくる吐き気はなくなっていた。代わりに感じていたのは、純粋な力に対する畏敬の念――

 そういえば……ここに連れてこられてからどれくらい経ったんだろうか……?
吐き気がなくなってから急激に空腹を感じていた僕は、壁にもたれたまま見えない空を見上げた。すると、どこか遠くから鐘の音が響いてくる。

 時間的におそらく夜なのだろう。洞窟の中でも一定の灯りが落とされるらしく、牢屋もその付近も、どんどんと暗くなっていった。

 しばらくすると牢番の一人、青い目と髪を持つ二本角を持つ者が見たことのない塩味の白く丸い物体を、食事だと言って口へと運んでくれた。

「明日の朝は魚だ。あんた、食べれるか?」
「……焼いてあるなら」

 日本という国では、魚を生で食すらしいと聞いたことがあり、想像もできないほど驚いたことを思い出しながら僕は言った。

「焼き魚だ。俺ら牢番と同じ食事だから、薬を盛られる心配とか、しなくて良いぞ」

 雰囲気と会話の内容から、この牢番はあの老人たちほど外国の者を毛嫌いしてはいないようだと感じる。

「ありがとう……食事。美味しかった……」
「……仕事なんで、な。あと――」

 彼はチラリともう一人の牢番の方を見やってから言った。

「俺は二本角なんでね。一本角の奴らよりは思考力がある……と思ってる」

 格子の向こうには、長髪で赤髪の一本角の牢番がだるそうにして座っている。

「今この島にはいないが、俺も現長と同じ考えで『外国の者とは歩み寄れるならばそうする。できない場合は拳を交わすもよし』という志に賛成なんでね」

 そういった牢番の顔は、柔らかな笑顔で。
ここの一族の長はきっと、知恵も力も持つ立派な長に違いないと、僕は思った。
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