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第3部分 なんでコイツ……パンツ一丁なんだ⁉︎
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風が吹き、ぶるりと身震いをする。
なんでこんなに寒いんだ? まだ夏は始まったばかりなのに……
呆然と見渡すも、森は暗く灯りの一つも見当たらない。
頼りになるのは空に輝く月一つ。
「夜……なんだろうな……?」
「誰かいるのか⁉︎」
「!」
茂みの向こうから声が聞こえた。
良く通る低い声。男……
ガサガサっと茂みが揺れ、現れた男は。大男と言っても過言ではないだろう。俺よりも随分背が高そうで、そして──とても鮮やかな緑の髪と目の、二本角の鬼だった。
「……!……」
整った顔をしていて歳は二十くらいか。体躯は良く、バランスの良い筋肉の付き方。典型的な二本角タイプの鬼っぽいな……
だがしかし。
なんでコイツ……パンツ一丁なんだ⁉︎
「ん? 鬼の者か。よかった──」
ホッとしながらそう呟く緑の鬼。
一瞬、そのあまりにも鮮やかな色に目が奪われていたものの……この肌寒いなか、いや! そうでなくてもおかしいだろうパンツ一丁て!
そのパンツは月の光に輝く黄金の毛で、よほど立派な虎の物だったのだろう。と、思わずパンツもガン見してしまった。が……
“よかった”とはどういう──
「鬼でよかったが……何やら珍しい風貌だな」
パンツ一丁の方がどうかと思うが。
「色も村の者とはだいぶ違う…………まさか混血者か?」
自分の髪色も目の色も、純粋な色ではない。だが珍しくはないはずだ。大昔じゃあるまいし、今では混血でない者の方が珍しいはずだ……それこそコイツのように鮮やかに燃ゆる緑の瞳の者は──
その瞳に憐れみのようなものを感じて思わず俺は言った。
「混血で悪いか?」
「……いや……」
男はどこか申し訳なさそうに頭を掻いた。
くそ……まだ体が軋みやがる。解錠が必要なほどではないが、解錠状態を知っていると非常にもどかしい。
軋む体を支えつつ立ち上がると、やっぱりコイツは自分より頭一つ分程背が高い。俺も一七〇はあって、そこまで小さいわけではないんだが。
「怪我してるのか? 治りが遅いようだが」
「遅くても治る。問題はない……ところですまないが、ここは何処だ?」
とりあえず話は出来そうとふんで聞いてみる。
そして今気づいたが、爆風の衝撃は、白衣の背を大きく切り裂いていた。体が無事だったのが不思議なくらいに。
「お前……もしかして島から流れてきたのか? ここはズイの山中だ」
ズイ……⁉︎
「……色から察するに緑、赤、青あたりの混血だな」
「!」
「とりあえずこい、ここは人間もやってくる場所だから、街の中にいた方がいい」
「あ……あぁ…………」
この月明かりで俺のルーツを言い当てた観察眼、二本角にしては恐れ入る。なんだか所長と似たような雰囲気をソイツに感じた俺は、大人しく後をついて行くことにした。
なんでこんなに寒いんだ? まだ夏は始まったばかりなのに……
呆然と見渡すも、森は暗く灯りの一つも見当たらない。
頼りになるのは空に輝く月一つ。
「夜……なんだろうな……?」
「誰かいるのか⁉︎」
「!」
茂みの向こうから声が聞こえた。
良く通る低い声。男……
ガサガサっと茂みが揺れ、現れた男は。大男と言っても過言ではないだろう。俺よりも随分背が高そうで、そして──とても鮮やかな緑の髪と目の、二本角の鬼だった。
「……!……」
整った顔をしていて歳は二十くらいか。体躯は良く、バランスの良い筋肉の付き方。典型的な二本角タイプの鬼っぽいな……
だがしかし。
なんでコイツ……パンツ一丁なんだ⁉︎
「ん? 鬼の者か。よかった──」
ホッとしながらそう呟く緑の鬼。
一瞬、そのあまりにも鮮やかな色に目が奪われていたものの……この肌寒いなか、いや! そうでなくてもおかしいだろうパンツ一丁て!
そのパンツは月の光に輝く黄金の毛で、よほど立派な虎の物だったのだろう。と、思わずパンツもガン見してしまった。が……
“よかった”とはどういう──
「鬼でよかったが……何やら珍しい風貌だな」
パンツ一丁の方がどうかと思うが。
「色も村の者とはだいぶ違う…………まさか混血者か?」
自分の髪色も目の色も、純粋な色ではない。だが珍しくはないはずだ。大昔じゃあるまいし、今では混血でない者の方が珍しいはずだ……それこそコイツのように鮮やかに燃ゆる緑の瞳の者は──
その瞳に憐れみのようなものを感じて思わず俺は言った。
「混血で悪いか?」
「……いや……」
男はどこか申し訳なさそうに頭を掻いた。
くそ……まだ体が軋みやがる。解錠が必要なほどではないが、解錠状態を知っていると非常にもどかしい。
軋む体を支えつつ立ち上がると、やっぱりコイツは自分より頭一つ分程背が高い。俺も一七〇はあって、そこまで小さいわけではないんだが。
「怪我してるのか? 治りが遅いようだが」
「遅くても治る。問題はない……ところですまないが、ここは何処だ?」
とりあえず話は出来そうとふんで聞いてみる。
そして今気づいたが、爆風の衝撃は、白衣の背を大きく切り裂いていた。体が無事だったのが不思議なくらいに。
「お前……もしかして島から流れてきたのか? ここはズイの山中だ」
ズイ……⁉︎
「……色から察するに緑、赤、青あたりの混血だな」
「!」
「とりあえずこい、ここは人間もやってくる場所だから、街の中にいた方がいい」
「あ……あぁ…………」
この月明かりで俺のルーツを言い当てた観察眼、二本角にしては恐れ入る。なんだか所長と似たような雰囲気をソイツに感じた俺は、大人しく後をついて行くことにした。
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