【鬼シリーズ:第三弾】緑鬼のパンツは急所を守る

河原由虎

文字の大きさ
11 / 14

第11部分 緑鬼の長

しおりを挟む
 あの……娘の顔──

 俺は娘の顔を見て、何か腑に落ちた気がした。

 娘は悲しそうな顔をしてしばらく若竹の方を見ていたが、やがて視線を落とし俯いた。

 皆が長の方を見ている間、俺はヘロヘロと若竹の方に向かって歩く。

 若竹をはじめ、いくらかの鬼達は長の所業に納得していないようで、こちらにやってくる長達の方を、苦い顔をしながら見ていた。

「ん? どうして長屋が黒焦げになっとるんだ?  また火事か。若竹、最近お主の管理は甘いんじゃないか?」

 ──これほどまでに。何かに怒りを感じたのは初めてかもしれない。

「……元はと言えばアンタのせいだろうが! 桃太郎と交わされた条約とその書の事。知らないとは言わせねーぞ⁉︎」

 若竹の隣に立ち、俺は叫んだ。

「条約? 破れば呪が返ってくるとかいうアレか。書は屋敷にあるが……呪など返ってきたことはないし。あんな物、無意味だろう」

 コレが……現、緑鬼の長か──

「ところで……お前は誰だ? 見ない顔だが」
「んなこたどうでもいい! 条約の書をちゃんと読め! そして実行しろ!」

 長はこちらに向かいながら、濁った目で俺を睨みつけてくる。

「……どこの誰とも知れんお前に何でそんな事言われにゃならんのだ!」

 それはごもっとも。だが俺は鬼達の意識に種を蒔き続けるぞ。変化する事を厭わぬ為の種を……!

 鬼達のためにも。そして俺自身のためにも──

「最近起きていた火事が呪返しで……このままではその影響で里が滅びるからだ!」
「火事が呪返しだと……?」
「あぁそうだ。っていうか、大体! あんた湯治に行ってたんじゃないのかよ!? 何なんだ、その娘は!」
「湯治には行った。ついでに旅館を一つ落としてそこの娘を連れてきただけだ! それの何が悪い⁉︎」

 条約、第一条の違反……悪すぎだ──!

 鬼達は長に道を作るように退き、長は俺たちの前までやってきた。

「親父……いや、緑鬼の長よ。
 条約の書の公開を求める。俺たちは全てを知り、行う義務がある……これ以上の呪返しを防ぎ、鬼の一族の未来を守るためにも!」
「なんだと……? お前……そんな者の言う事を信じるというのか⁉︎」

 飛びかかってこられたら俺、終わりだなぁ。
 怒りと同時に、敵わない者への畏怖をも感じながら、どこか冷静にそんな事を考え、目の前にいる三鬼を眺める。

「長、そんな奴の言う事聞く必要はない」
「そうだ。次は山向こうの街まで足を伸ばそうぜ」
「貴様ら……!」

 若竹は、長の後ろに立つニ鬼を睨みつけた。

「若竹よ。古くから伝わる掟として、条約の書の閲覧は長にだけ許されている。皆に公開する事はできんな」

 ソレは気の荒い者が激昂して先走りしない為の掟。これまでの様子を見る限り、ここの鬼達ならばなんとか問題はないだろう……。

 どちらかと言ったら、この長こそ閲覧する資格がない。知っていながら違反する行動をしたのだから!

「もしソレを望むのなら、お前が長になる事だな」

 長はニヤリと笑いながらそう言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!

野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。  私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。  そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる

若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ! 数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。 跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。 両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。 ――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう! エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。 彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。 ――結婚の約束、しただろう? 昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。 (わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?) 記憶がない。記憶にない。 姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない! 都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。 若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。 後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。 (そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?) ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。 エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。 だから。 この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し? 弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに? ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

落ちこぼれ公爵令息の真実

三木谷夜宵
ファンタジー
ファレンハート公爵の次男セシルは、婚約者である王女ジェニエットから婚約破棄を言い渡される。その隣には兄であるブレイデンの姿があった。セシルは身に覚えのない容疑で断罪され、魔物が頻繁に現れるという辺境に送られてしまう。辺境の騎士団の下働きとして物資の輸送を担っていたセシルだったが、ある日拠点の一つが魔物に襲われ、多数の怪我人が出てしまう。物資が足らず、騎士たちの応急処置ができない状態に陥り、セシルは祈ることしかできなかった。しかし、そのとき奇跡が起きて──。 設定はわりとガバガバだけど、楽しんでもらえると嬉しいです。 投稿している他の作品との関連はありません。 カクヨムにも公開しています。

処理中です...