【鬼シリーズ:第三弾】緑鬼のパンツは急所を守る

河原由虎

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第10部分 呪返し

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「最近火事が多いと聞いた……その条約違反が原因じゃないか……?」

 そう言った俺に、くってかかってくる者がいた。

「そんな酔狂な話が信じられるか!」
「そうだ! 適当な事言ってるんじゃねぇ!」

 あちらでもいないわけではないが、この時代の鬼達は気の荒い者が多いようだ。言い返してきている中には一本角の者もいて。理性的に話し、行動している二本角の若竹の方が一本角かと思えるほど。
 きっと、若竹の中にも、暴れ出しそうな何かはあるのだろう。けれど、ソレをずっと……今も抑え込んでいる──そんな感じがする。

「今回以外でも、火のつく前に人間の姿を見た者はいるか? 火の矢は? 森から飛んできたのか⁉︎ 森の中に人間がいた、くらいじゃ人間の所為にはできないぞ!」

 ざわめきの中、小さな子供の声が聞こえてきた。

「ぼく……何の火の気もない長屋の屋根から、火が出たのを見たよ」

 おずおずとそう言ったのは、一本角の十くらいの少年だった。

「お……俺も見たぞ。一昨日の火事の時……薪の山から突然火が上がるのを……」

 今度は二本角の若い男が言った。

「それが……呪返しである証拠じゃないのか……?」

 ざわざわとするも、それ以上言い返してくる者はなく、海の向こうから日が上りはじめた。

 俺はともかく、コイツら一度寝た方がいい。どんなに体力がバカみたいにあろうと、睡眠無くして冷静な思考には及べないから。

「若竹、皆、一度休もう。話の続きはそれからでも──」

 多分、遅くはない。そう言おうとした時、森の方からざりっとした笑い声が聞こえた。

「がっはっはっはっは! 皆の衆、戻ったぞ!」
「長!」

 若竹とよく似た顔の、二本角の緑の鬼がそこにいた。同じように体格の良い鬼を二鬼連れて。

 ただ、注目すべきはその一鬼が、縄で縛られている若い……人間の娘を連れている事──

「……翡翠……⁉︎」

 振り向き、森の方を見る若竹の表情は見えないが、その口から漏れた小さな声を、俺は聞き逃さなかった。
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