9 / 14
第9部分 条約違反
しおりを挟む
「条約違反……だな」
「……!……」
ざわめきの中、若竹だけは表情が変わった。そして俺の方を注視する。
その様子に気づいた他の者が、若竹に続くように俺の方を見た。
「……なんだ? お前……見ない顔だな……」
「あんた……緑の一本角だがこの町の者じゃないな。さっきヘロヘロとした腰で水運んでたみたいだが、どこから来た?」
ヘロヘロで悪かったな……。
「……そいつは──」
「すまんが、自分でもわからんことは答えられんな」
若竹が何か言おうとしてくれるが、俺はそれを拒否する。
「はぁ⁈」
「わからんとはどういうことだ⁉︎」
「さてねぇ、気がついたらそこの山中にいたんで。あえていうならそこの森から来た」
実際にやってきた森の方を指して俺は言った。
「若竹。お前の知ってる事を皆に話さぬのは長の意向か?」
「──!──」
若竹は驚いた顔をして俺を見る。
……正解のようだな……。
知らせぬ理由も想像がつくが……あの火事の原因が俺の仮説通りなら──歴史の通り、緑鬼の一族は滅びの一歩手前までいくことになる。
この時代の長は絶対的な存在。だが火事の消火で若竹の統率力が高い事も、それに続く者がいそうな事もわかった。
ならば、余所者の俺が火種になろう──
「ここの皆は桃太郎との条約の事を知っているのか?」
「知るか、そんなもの!」
「鬼が一回負けたってだけだろう! そんなもの鬼が勝って無かったことにしちまえばいい!」
わかりやすく直情的。全くもって鬼らしい。
「その調子では鬼が勝つには千年万年かかるな」
実際に三千年近く経っても“勝つ”には至ってないのだから。
ただ……勝つとか負けるとか言う話でもないと、俺は思っているが──
苦笑しながらそう言った俺に、一番近くにいた男が叫ぶ。
「そんな事……子供(ガキ)が履くような虎パン履いてるやつに言われたかないな!」
「な……」
コレ子供が履くようなパンツなのか⁉︎ 若竹は古い物だと言っていたが……まさかアイツの子供の頃の物⁉︎
よく見たら、確かにソイツらのパンツと形が違う。
「──んなこたどうでもいい!」
知らなかったとはいえ、恥ずかしさから顔が熱くなる。俺は立ち上がって浴衣の前を揃えた。
くそぅ、後でゆっくり出来る時間ができたら覚えとけよ若竹!
「そうやって──知っていなければならない事を知らないから、条約の呪返しにやられるんだ! 鬼長の怪我だって原因はソレだろう⁉︎」
「──!──」
若竹は、さらに目を見開いた。
「桃太郎と交わされた条約とその書は人の持つ力の結晶、そこに書かれた約束事を違えれば呪が帰ってくる」
「「「……⁉︎……」」」
条約締結当初皆に伝えなかったのは、きっと逆上した者達が先走り、その呪返しで一族が滅ぶ事を恐れてのことだろう。今でさえこれだけ血気盛んなのだから……
だがこのままでは、その道を辿る。
「若竹、条約の内容を知っているか?」
「……第一条、人間に害を与えない事。第二条は人間との事は両者から代表者を決め、協議をして決める事、だ……」
若竹は皆にも聞こえるよう、そう告げる。が、ちょっと待て……足りないぞ⁉︎
「……もう一つある。第三条、年に一度、人間と協議の場を儲ける事」
「それは知らないぞ……! 長もそんな協議に出た事は一度も……!」
俺の言葉を聞いた若竹は、さらに驚愕の顔をしていた。
「……!……」
ざわめきの中、若竹だけは表情が変わった。そして俺の方を注視する。
その様子に気づいた他の者が、若竹に続くように俺の方を見た。
「……なんだ? お前……見ない顔だな……」
「あんた……緑の一本角だがこの町の者じゃないな。さっきヘロヘロとした腰で水運んでたみたいだが、どこから来た?」
ヘロヘロで悪かったな……。
「……そいつは──」
「すまんが、自分でもわからんことは答えられんな」
若竹が何か言おうとしてくれるが、俺はそれを拒否する。
「はぁ⁈」
「わからんとはどういうことだ⁉︎」
「さてねぇ、気がついたらそこの山中にいたんで。あえていうならそこの森から来た」
実際にやってきた森の方を指して俺は言った。
「若竹。お前の知ってる事を皆に話さぬのは長の意向か?」
「──!──」
若竹は驚いた顔をして俺を見る。
……正解のようだな……。
知らせぬ理由も想像がつくが……あの火事の原因が俺の仮説通りなら──歴史の通り、緑鬼の一族は滅びの一歩手前までいくことになる。
この時代の長は絶対的な存在。だが火事の消火で若竹の統率力が高い事も、それに続く者がいそうな事もわかった。
ならば、余所者の俺が火種になろう──
「ここの皆は桃太郎との条約の事を知っているのか?」
「知るか、そんなもの!」
「鬼が一回負けたってだけだろう! そんなもの鬼が勝って無かったことにしちまえばいい!」
わかりやすく直情的。全くもって鬼らしい。
「その調子では鬼が勝つには千年万年かかるな」
実際に三千年近く経っても“勝つ”には至ってないのだから。
ただ……勝つとか負けるとか言う話でもないと、俺は思っているが──
苦笑しながらそう言った俺に、一番近くにいた男が叫ぶ。
「そんな事……子供(ガキ)が履くような虎パン履いてるやつに言われたかないな!」
「な……」
コレ子供が履くようなパンツなのか⁉︎ 若竹は古い物だと言っていたが……まさかアイツの子供の頃の物⁉︎
よく見たら、確かにソイツらのパンツと形が違う。
「──んなこたどうでもいい!」
知らなかったとはいえ、恥ずかしさから顔が熱くなる。俺は立ち上がって浴衣の前を揃えた。
くそぅ、後でゆっくり出来る時間ができたら覚えとけよ若竹!
「そうやって──知っていなければならない事を知らないから、条約の呪返しにやられるんだ! 鬼長の怪我だって原因はソレだろう⁉︎」
「──!──」
若竹は、さらに目を見開いた。
「桃太郎と交わされた条約とその書は人の持つ力の結晶、そこに書かれた約束事を違えれば呪が帰ってくる」
「「「……⁉︎……」」」
条約締結当初皆に伝えなかったのは、きっと逆上した者達が先走り、その呪返しで一族が滅ぶ事を恐れてのことだろう。今でさえこれだけ血気盛んなのだから……
だがこのままでは、その道を辿る。
「若竹、条約の内容を知っているか?」
「……第一条、人間に害を与えない事。第二条は人間との事は両者から代表者を決め、協議をして決める事、だ……」
若竹は皆にも聞こえるよう、そう告げる。が、ちょっと待て……足りないぞ⁉︎
「……もう一つある。第三条、年に一度、人間と協議の場を儲ける事」
「それは知らないぞ……! 長もそんな協議に出た事は一度も……!」
俺の言葉を聞いた若竹は、さらに驚愕の顔をしていた。
0
あなたにおすすめの小説
「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!
野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。
私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。
そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる
若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ!
数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。
跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。
両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。
――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう!
エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。
彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。
――結婚の約束、しただろう?
昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。
(わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?)
記憶がない。記憶にない。
姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない!
都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。
若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。
後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。
(そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?)
ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。
エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。
だから。
この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し?
弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに?
ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。
どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」
「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」
私は思わずそう言った。
だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。
***
私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。
お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。
だから父からも煙たがられているのは自覚があった。
しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。
「必ず仕返ししてやろう」って。
そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
落ちこぼれ公爵令息の真実
三木谷夜宵
ファンタジー
ファレンハート公爵の次男セシルは、婚約者である王女ジェニエットから婚約破棄を言い渡される。その隣には兄であるブレイデンの姿があった。セシルは身に覚えのない容疑で断罪され、魔物が頻繁に現れるという辺境に送られてしまう。辺境の騎士団の下働きとして物資の輸送を担っていたセシルだったが、ある日拠点の一つが魔物に襲われ、多数の怪我人が出てしまう。物資が足らず、騎士たちの応急処置ができない状態に陥り、セシルは祈ることしかできなかった。しかし、そのとき奇跡が起きて──。
設定はわりとガバガバだけど、楽しんでもらえると嬉しいです。
投稿している他の作品との関連はありません。
カクヨムにも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる