【鬼シリーズ:第三弾】緑鬼のパンツは急所を守る

河原由虎

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第9部分 条約違反

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「条約違反……だな」
「……!……」

 ざわめきの中、若竹だけは表情が変わった。そして俺の方を注視する。
 その様子に気づいた他の者が、若竹に続くように俺の方を見た。

「……なんだ? お前……見ない顔だな……」
「あんた……緑の一本角だがこの町の者じゃないな。さっきヘロヘロとした腰で水運んでたみたいだが、どこから来た?」

 ヘロヘロで悪かったな……。

「……そいつは──」
「すまんが、自分でもわからんことは答えられんな」

 若竹が何か言おうとしてくれるが、俺はそれを拒否する。

「はぁ⁈」
「わからんとはどういうことだ⁉︎」
「さてねぇ、気がついたらそこの山中にいたんで。あえていうならそこの森から来た」

 実際にやってきた森の方を指して俺は言った。

「若竹。お前の知ってる事を皆に話さぬのは長の意向か?」
「──!──」

 若竹は驚いた顔をして俺を見る。

 ……正解のようだな……。

 知らせぬ理由も想像がつくが……あの火事の原因が俺の仮説通りなら──歴史の通り、緑鬼の一族は滅びの一歩手前までいくことになる。

 この時代の長は絶対的な存在。だが火事の消火で若竹の統率力が高い事も、それに続く者がいそうな事もわかった。

 ならば、余所者の俺が火種になろう──

「ここの皆は桃太郎との条約の事を知っているのか?」
「知るか、そんなもの!」
「鬼が一回負けたってだけだろう! そんなもの鬼が勝って無かったことにしちまえばいい!」

 わかりやすく直情的。全くもって鬼らしい。

「その調子では鬼が勝つには千年万年かかるな」

 実際に三千年近く経っても“勝つ”には至ってないのだから。
 ただ……勝つとか負けるとか言う話でもないと、俺は思っているが──

 苦笑しながらそう言った俺に、一番近くにいた男が叫ぶ。

「そんな事……子供(ガキ)が履くような虎パン履いてるやつに言われたかないな!」
「な……」

 コレ子供が履くようなパンツなのか⁉︎ 若竹は古い物だと言っていたが……まさかアイツの子供の頃の物⁉︎
 よく見たら、確かにソイツらのパンツと形が違う。

「──んなこたどうでもいい!」

 知らなかったとはいえ、恥ずかしさから顔が熱くなる。俺は立ち上がって浴衣の前を揃えた。

 くそぅ、後でゆっくり出来る時間ができたら覚えとけよ若竹!

「そうやって──知っていなければならない事を知らないから、条約の呪返しにやられるんだ! 鬼長の怪我だって原因はソレだろう⁉︎」
「──!──」

 若竹は、さらに目を見開いた。

「桃太郎と交わされた条約とその書は人の持つ力の結晶、そこに書かれた約束事を違えれば呪が帰ってくる」
「「「……⁉︎……」」」

 条約締結当初皆に伝えなかったのは、きっと逆上した者達が先走り、その呪返しで一族が滅ぶ事を恐れてのことだろう。今でさえこれだけ血気盛んなのだから……

 だがこのままでは、その道を辿る。

「若竹、条約の内容を知っているか?」
「……第一条、人間に害を与えない事。第二条は人間との事は両者から代表者を決め、協議をして決める事、だ……」

 若竹は皆にも聞こえるよう、そう告げる。が、ちょっと待て……足りないぞ⁉︎

「……もう一つある。第三条、年に一度、人間と協議の場を儲ける事」
「それは知らないぞ……! 長もそんな協議に出た事は一度も……!」

俺の言葉を聞いた若竹は、さらに驚愕の顔をしていた。
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