封印を解いたら、吸血鬼に結婚を迫られました。

白猫

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結婚してくれ

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「どういうこともこういうこともない。お前は俺のタイプ、どストライクだ。だから嫁にもらう」
「ちょ、真顔でなに言って……」
「ダメなのか? 一目惚れなんだよ、ダイアナ」


そう言って肩をすくめるエドは、いかんせん顔が美しいのでこっちもドキドキしてしまう。こんな、粗雑で口の悪い吸血鬼なのに……。
なにかの悪い冗談かと思ったが、この真剣な顔を見るに、どうも本気らしい。


「待って、すぐには返事できないってば」


髪の毛と同じ銀色の眉毛がぴくりと動いた。


「なぜだ?」
「あの……色々、しがらみとか、あるでしょっ。まず、一つずつ説明してほしいの……第一、どうしてここに封印されたの? いきさつをちゃんと教えてよ」


無理やり話を変えてみたが、ぷいとそっぽを向かれてしまった。


「……それは言いたくない」
「それを言いたくないのに私に封印を解けって言うの?」


強引で、乱暴で、めちゃくちゃだ。呆れた目で見つめると、さすがに申し訳ないと思ったのか、今度は決まり悪そうな表情になる。


「……わかってることはな、封印はお前にしか解けないんだ」
「だからね、その封印はどうやったら解けるのか教えてよ」
「……わからない」
「わからない? それも!?」
「正確には俺も、俺が11年前にお前にかけたのと同じまじないがかけられていて、思い出せないんだ。恨むなら自分のじーさんを恨めよ」
「そんな」
「けど他にもわかっていることがある。一つはさっき言った、封印はお前にしか解けないってことだ。そしてもう一つは、封印を解く鍵は、お前の身近にある……または、いる」


いる……ということは、他の存在が絡んでいる可能性があるということ?
それがなにかもわからないのに、ゾッとした。


「常にそばにいて助けたいが、あいにく俺はここから出られない。封印を解くこと、命令しようとして悪かったよ。頼むから、代わりに調べてくれないか?」
「そんなこと言ったって、なにもわからないのにどうやって……」
「仕方がないから、最初はしらみつぶしだ。毎日家の中を調べて報告しろ。俺もなにか思い出したら報告するから。頃合いを見計らって、いつでも俺に会いに来られるだろ?同じ屋敷に住んでる中なんだから」
「なによ。初めて会ったときは治外法権って言ったくせに」
「俺はガキが嫌いなんだ。それにな、ずっとここに一人で缶詰にされてると、寂しいんだよ」


そういえばエドは11年前のことを、ついこの前のような言い方をしていた。私みたいな人間とは、生きている時間の流れが違うんだ……。
長い時間を過ごしすぎて感覚が麻痺してしまったのかもしれない。途方もない時間を、この部屋で一人ぼっちで過ごすエド。かわいそう……。


「……わかった。改めて、私は、ダイアナ・R・アダムスよ。今日16歳になったの。約束どおり明日から封印の秘密を調べて、毎日会いにくるわ」
「本当か!?」
「単なる人助けにしては、色々と危ない橋を渡るような予感がしなくもないけど……でも、それであなたが少しでも寂しくなくなるなら、そうしてあげることにする」
「封印が解ければこっちのもんさ。この部屋から出て、自由に動き回れるし、お前とも結婚できる」
「だからそれは……!」


牙をむき出して、エドは幸福そうに笑った。否定の言葉は喉の奥に消えていって、つられて私も笑う。

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