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契約終了
涙
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「未央が気になってるのは、めぐのことだよね」
「うん…」
さっきは何も考えられなくて、自分の思いの向くままに悠登を求めて愛し合った。
でもやっぱり、悠登とまだえっちしてるよ、というめぐちゃんの言葉は忘れちゃいけない。
「…めぐが体調崩してたのって未央知ってたっけ」
「うん、聞いたよ」
「嘘つきたくないから言うけど…実は割と最近一緒に風呂入ったんだ、めぐと。フラフラで1人で入れないって言うから」
「そうなんだ…」
「そん時に誘われたんだけど、俺は未央が好きだからって断ったんだよね。…で、めぐが未央に当たったんだと思う。だから俺謝りに行ったんだよあの時」
「…信じてもいい?」
腕枕をされながらずっと話を聞いていたけれど、あたしは悠登の方に顔を向け、目をじっと見つめながら返事を待った。悠登はあたしの頭を撫で、迷いのない目ですぐに返事をしてくれた。
「信じて。俺は未央のこと絶対裏切ったりしないから。あの家も解約するし」
「え…そうなの?」
「もう一緒に住むのやめよって、俺が言った。どんなに言われてもめぐの気持ちに応えられないし、一緒に住むのはもう限界だって思ったから」
「それ、めぐちゃんは了承してるの?」
「あー…まぁなんとか。泣くし暴れるし大変だったけどちゃんと話してわかってもらった」
泣いて暴れてたのか、めぐちゃん…でも想像出来る。感情豊かで素直な子だからあたしに腹が立ってあんなことを言ったのだろうし、悠登が好きだからずっと一緒にいたい、そう思っているに決まっている。
「…納得、してるのかな」
「100%はしてないだろうけど、結局めぐも辛いからもういいって。未央のことが好きな俺を見るのはもう耐えれないから早くどっか行けって言われた。あの家俺の名義だっつーの」
「そっか…」
「あの家一人で住むには広いし高いしなー。だから今家探してるとこ。めぐは実家帰るみたいなこと言ってたけど」
「いつ引っ越すの?」
「いいとこ見つけたらすぐ引っ越すよ。元からそのつもりで動いてるけど、今日未央に好きだって言われて嬉しかったし、未央を不安にさせたくないし。元カノと住んでてそいつからまだヤってるなんて嘘つかれたんだし気が気じゃないでしょ?」
「うん…」
「信じて欲しいし、これからも絶対めぐとヤッたりしないけど未央が不安なのは仕方ないからさ。前は旦那と一緒にすんなって怒ったけど、相当傷付いてトラウマになってるだろうから俺がどれだけ言ってもまた信じきれないんだろうなって思うし」
…悠登はもう、動き始めている。あたしも早く家を決めてしまいたいし、これから探し始めるつもりでいる。けれどあたしは…悠登みたいに、すぐ引っ越すなんて言えない。
「…」
「どうしたんだよ、黙り込んで」
「…あたしも早く出ていきたい…」
「そう思うなら早く出てけばいいじゃん。一緒に不動産行く?お互い家探そうよ」
「…でも、契約だから…」
悠登がため息をついた。仕方がないことだ、悠登からすれば理解出来ないだろうし、あと2ヶ月近く優斗と一緒にいることなんて、嫌に決まっている。
「まぁ、決めてるのはわかるけど…義理のお母さん?も嘘つかれてるってわかったら悲しいと思うよ。余命近いなら、それこそ本当のことを言ってあげた方がいいんじゃないかって俺思うんだけど…」
「もう、亡くなってるんだ…」
「…え?そうなの?さっきそれ言ってなかったくない?」
離婚したのに一緒にいる話はしたけれど、もう佳江さんは亡くなってるということをさっきは言えなかった。口にするのも辛くて…だからといって、いつまでも言わないわけにはいかない。
「だからもう言えないの、本当のこと…佳江さん…元義理のお母さんがいなくなったからって、はいさよならって出来ないの。そんなの、死ぬの待ってたみたいじゃん…」
「あー…」
「出ていきたいけど心配になっちゃうの。好きなんて気持ちはもうとっくに無いけど、すごいいいお母さんだったから辛い気持ちは痛いほどわかるし…あたしは2ヶ月後には出ていくし、それは決まってることだから余計早く元旦那に立ち直って欲しいし…」
「未央は大好きだったんだね、義理のお母さんのこと」
「うん、大好きだった…」
そう言った瞬間、あたしの目から涙が流れた。ぽろぽろと、いくつか涙が零れたかと思えばそのあとすぐに、滝のように涙が流れ始めた。
どうしたんだろう。佳江さんが亡くなった瞬間も、お葬式でも泣けなかったのに。でも止まらない…
「未央…」
「ごめ…っ、ごめんっ…信じて、あたし優斗は…元旦那のことはっ、ほんと、に、ほんとに好きじゃないのっ…」
「わかったわかった、大丈夫だから…気済むまでこうしてるから」
悠登があたしのことを抱き寄せた。余計に涙が止まらなくて、悠登に申し訳なくて仕方がなかった。
さっきのお店で話をした時にあたしはまだ優斗のことが好きなんじゃないかって思った、と悠登が言っていたから誤解されたくないのに。わかった、と言ってくれていても悠登だって不安に決まっているのに。
「ごめ…んなさ…い、悠登っ…あたしはほんとに悠登が好きだから…もう悠登しかいないから…」
「大丈夫。俺は未央を信じる。心配じゃないって言えば嘘になるけど」
「うん…うん…そうだよね…ごめん…」
「謝らなくていいよ」
…そうか。
ずっと強がっていたんだ。あたしよりも優斗の方が辛いはずだから、あたしが泣いていたらダメだ。あたしまで泣いたら優斗がいつまで経っても立ち直れない、という責任感なのかなんなのか、おかしな気持ちが働いてずっとずっと、涙が流せなかったんだ…
やっと泣くことが出来た。自分の中で無意識にずっと押さえつけていた、自分だって泣きたいぐらいに辛い、本当は大声で泣いてしまいたい、という感情を。
わんわん泣いているあたしを悠登は何も言わず抱きしめて、頭を撫でてくれた。
あの時の悠登と同じ。一人で泣いているあたしに何も聞かずに一緒にいてくれたあの時と。
ただ今は、悠登の肌の温もりがある。それがとても心地良い…
「うん…」
さっきは何も考えられなくて、自分の思いの向くままに悠登を求めて愛し合った。
でもやっぱり、悠登とまだえっちしてるよ、というめぐちゃんの言葉は忘れちゃいけない。
「…めぐが体調崩してたのって未央知ってたっけ」
「うん、聞いたよ」
「嘘つきたくないから言うけど…実は割と最近一緒に風呂入ったんだ、めぐと。フラフラで1人で入れないって言うから」
「そうなんだ…」
「そん時に誘われたんだけど、俺は未央が好きだからって断ったんだよね。…で、めぐが未央に当たったんだと思う。だから俺謝りに行ったんだよあの時」
「…信じてもいい?」
腕枕をされながらずっと話を聞いていたけれど、あたしは悠登の方に顔を向け、目をじっと見つめながら返事を待った。悠登はあたしの頭を撫で、迷いのない目ですぐに返事をしてくれた。
「信じて。俺は未央のこと絶対裏切ったりしないから。あの家も解約するし」
「え…そうなの?」
「もう一緒に住むのやめよって、俺が言った。どんなに言われてもめぐの気持ちに応えられないし、一緒に住むのはもう限界だって思ったから」
「それ、めぐちゃんは了承してるの?」
「あー…まぁなんとか。泣くし暴れるし大変だったけどちゃんと話してわかってもらった」
泣いて暴れてたのか、めぐちゃん…でも想像出来る。感情豊かで素直な子だからあたしに腹が立ってあんなことを言ったのだろうし、悠登が好きだからずっと一緒にいたい、そう思っているに決まっている。
「…納得、してるのかな」
「100%はしてないだろうけど、結局めぐも辛いからもういいって。未央のことが好きな俺を見るのはもう耐えれないから早くどっか行けって言われた。あの家俺の名義だっつーの」
「そっか…」
「あの家一人で住むには広いし高いしなー。だから今家探してるとこ。めぐは実家帰るみたいなこと言ってたけど」
「いつ引っ越すの?」
「いいとこ見つけたらすぐ引っ越すよ。元からそのつもりで動いてるけど、今日未央に好きだって言われて嬉しかったし、未央を不安にさせたくないし。元カノと住んでてそいつからまだヤってるなんて嘘つかれたんだし気が気じゃないでしょ?」
「うん…」
「信じて欲しいし、これからも絶対めぐとヤッたりしないけど未央が不安なのは仕方ないからさ。前は旦那と一緒にすんなって怒ったけど、相当傷付いてトラウマになってるだろうから俺がどれだけ言ってもまた信じきれないんだろうなって思うし」
…悠登はもう、動き始めている。あたしも早く家を決めてしまいたいし、これから探し始めるつもりでいる。けれどあたしは…悠登みたいに、すぐ引っ越すなんて言えない。
「…」
「どうしたんだよ、黙り込んで」
「…あたしも早く出ていきたい…」
「そう思うなら早く出てけばいいじゃん。一緒に不動産行く?お互い家探そうよ」
「…でも、契約だから…」
悠登がため息をついた。仕方がないことだ、悠登からすれば理解出来ないだろうし、あと2ヶ月近く優斗と一緒にいることなんて、嫌に決まっている。
「まぁ、決めてるのはわかるけど…義理のお母さん?も嘘つかれてるってわかったら悲しいと思うよ。余命近いなら、それこそ本当のことを言ってあげた方がいいんじゃないかって俺思うんだけど…」
「もう、亡くなってるんだ…」
「…え?そうなの?さっきそれ言ってなかったくない?」
離婚したのに一緒にいる話はしたけれど、もう佳江さんは亡くなってるということをさっきは言えなかった。口にするのも辛くて…だからといって、いつまでも言わないわけにはいかない。
「だからもう言えないの、本当のこと…佳江さん…元義理のお母さんがいなくなったからって、はいさよならって出来ないの。そんなの、死ぬの待ってたみたいじゃん…」
「あー…」
「出ていきたいけど心配になっちゃうの。好きなんて気持ちはもうとっくに無いけど、すごいいいお母さんだったから辛い気持ちは痛いほどわかるし…あたしは2ヶ月後には出ていくし、それは決まってることだから余計早く元旦那に立ち直って欲しいし…」
「未央は大好きだったんだね、義理のお母さんのこと」
「うん、大好きだった…」
そう言った瞬間、あたしの目から涙が流れた。ぽろぽろと、いくつか涙が零れたかと思えばそのあとすぐに、滝のように涙が流れ始めた。
どうしたんだろう。佳江さんが亡くなった瞬間も、お葬式でも泣けなかったのに。でも止まらない…
「未央…」
「ごめ…っ、ごめんっ…信じて、あたし優斗は…元旦那のことはっ、ほんと、に、ほんとに好きじゃないのっ…」
「わかったわかった、大丈夫だから…気済むまでこうしてるから」
悠登があたしのことを抱き寄せた。余計に涙が止まらなくて、悠登に申し訳なくて仕方がなかった。
さっきのお店で話をした時にあたしはまだ優斗のことが好きなんじゃないかって思った、と悠登が言っていたから誤解されたくないのに。わかった、と言ってくれていても悠登だって不安に決まっているのに。
「ごめ…んなさ…い、悠登っ…あたしはほんとに悠登が好きだから…もう悠登しかいないから…」
「大丈夫。俺は未央を信じる。心配じゃないって言えば嘘になるけど」
「うん…うん…そうだよね…ごめん…」
「謝らなくていいよ」
…そうか。
ずっと強がっていたんだ。あたしよりも優斗の方が辛いはずだから、あたしが泣いていたらダメだ。あたしまで泣いたら優斗がいつまで経っても立ち直れない、という責任感なのかなんなのか、おかしな気持ちが働いてずっとずっと、涙が流せなかったんだ…
やっと泣くことが出来た。自分の中で無意識にずっと押さえつけていた、自分だって泣きたいぐらいに辛い、本当は大声で泣いてしまいたい、という感情を。
わんわん泣いているあたしを悠登は何も言わず抱きしめて、頭を撫でてくれた。
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