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奏多の足の怪我は順調に回復し、医師からも「無理をしなければ、ステージに立ってもいい」という許可が下りた。
待望の「KSR」活動再開。
それはファンにとっての悲願であり、奏多にとっても自分を取り戻すための大切な一歩だったが、皮肉なことに、活動が本格化するにつれて二人の「新居でのゆったりとした時間」は削られていった。
「……ふぅ。よし、今日はここまでにしよう」
颯真の声がスタジオに響く。
再始動に向けてのダンスレッスン。奏多は、まだ少し違和感のある左足を庇いつつも、以前と変わらない、いえ、怪我を経てさらに深みを増したしなやかな動きを見せていた。
「奏多さん、お疲れ様です。……お水、どうぞ」
リオがすぐに駆け寄り、ボトルのキャップを開けて差し出す。
リオは奏多の一挙手一投足に神経を尖らせ、過保護なほどに甲斐甲斐しく動いていた。
「ありがとう、リオくん」
奏多は微笑んで水を受け取ると、そのまま床に座り込んだ。
タオルで首筋の汗を拭う奏多を、リオは隣でじっと見守る。以前ならここで「二人で帰ってゆっくりしましょう」と即座に切り上げるところだが、今は違う。
「……リオくん」
奏多が、タオルの端を握ったまま、リオのトレーニングウェアの裾をそっと摘んだ。
「……ん? どうしました? 足、やっぱり痛みますか?」
慌てて顔を覗き込むリオ。だが、奏多は首を振ると、摘んだ裾を少しだけ自分の方に引き寄せ、コテリとリオの広い背中に頭を預けた。
「……そうじゃなくて。……ちょっと充電」
「(……ッッッ!!!)」
リオの全身に衝撃が走る。
最近の奏多は、言葉で「甘えたい」と言わない代わりに、こうした「接触による甘え」を頻発させるようになっていた。激しいレッスンの後の高揚感と、迫りくる本番へのプレッシャー。その不安を打ち消すように、奏多はリオにひっつく。
「……かなた、さん……。今、ここ、颯真さんもスタッフもいますよ……?」
「いいの。……今、充電しないと、明日まで頑張れない気がするから」
漆黒の髪がリオの肩で揺れ、吐息が背中に伝わる。
その無防備で切実なおねだりに、リオの理性が太平洋の向こう側まで吹き飛んだ。
「……颯真さん!! 今日、奏多さんは僕が抱えて帰ります! 残りの打ち合わせはメールでお願いします!!」
「え、リオ君??まだ立ち位置の確認が――って、おーい!!」
颯真の制止を聞く間もなく、リオは奏多をひょいとお姫様抱っこで抱え上げた。
「えっ、リオくん!? 歩けるから大丈夫だよ!」と焦る奏多だったが、リオはすでに
「ダメです。奏多さんは今、充電不足なんです。僕が急速充電しなきゃいけないんです!」
と帰る気満々になっていた。
待望の「KSR」活動再開。
それはファンにとっての悲願であり、奏多にとっても自分を取り戻すための大切な一歩だったが、皮肉なことに、活動が本格化するにつれて二人の「新居でのゆったりとした時間」は削られていった。
「……ふぅ。よし、今日はここまでにしよう」
颯真の声がスタジオに響く。
再始動に向けてのダンスレッスン。奏多は、まだ少し違和感のある左足を庇いつつも、以前と変わらない、いえ、怪我を経てさらに深みを増したしなやかな動きを見せていた。
「奏多さん、お疲れ様です。……お水、どうぞ」
リオがすぐに駆け寄り、ボトルのキャップを開けて差し出す。
リオは奏多の一挙手一投足に神経を尖らせ、過保護なほどに甲斐甲斐しく動いていた。
「ありがとう、リオくん」
奏多は微笑んで水を受け取ると、そのまま床に座り込んだ。
タオルで首筋の汗を拭う奏多を、リオは隣でじっと見守る。以前ならここで「二人で帰ってゆっくりしましょう」と即座に切り上げるところだが、今は違う。
「……リオくん」
奏多が、タオルの端を握ったまま、リオのトレーニングウェアの裾をそっと摘んだ。
「……ん? どうしました? 足、やっぱり痛みますか?」
慌てて顔を覗き込むリオ。だが、奏多は首を振ると、摘んだ裾を少しだけ自分の方に引き寄せ、コテリとリオの広い背中に頭を預けた。
「……そうじゃなくて。……ちょっと充電」
「(……ッッッ!!!)」
リオの全身に衝撃が走る。
最近の奏多は、言葉で「甘えたい」と言わない代わりに、こうした「接触による甘え」を頻発させるようになっていた。激しいレッスンの後の高揚感と、迫りくる本番へのプレッシャー。その不安を打ち消すように、奏多はリオにひっつく。
「……かなた、さん……。今、ここ、颯真さんもスタッフもいますよ……?」
「いいの。……今、充電しないと、明日まで頑張れない気がするから」
漆黒の髪がリオの肩で揺れ、吐息が背中に伝わる。
その無防備で切実なおねだりに、リオの理性が太平洋の向こう側まで吹き飛んだ。
「……颯真さん!! 今日、奏多さんは僕が抱えて帰ります! 残りの打ち合わせはメールでお願いします!!」
「え、リオ君??まだ立ち位置の確認が――って、おーい!!」
颯真の制止を聞く間もなく、リオは奏多をひょいとお姫様抱っこで抱え上げた。
「えっ、リオくん!? 歩けるから大丈夫だよ!」と焦る奏多だったが、リオはすでに
「ダメです。奏多さんは今、充電不足なんです。僕が急速充電しなきゃいけないんです!」
と帰る気満々になっていた。
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