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42. ダイエット
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「ちくわぶ……最近、なんだか体が丸くなったような気がしない?」
昼下がりのリビング。奏多は、床で香箱座りをしているちくわぶを、深刻な面持ちでじっと見つめていた。保護された当初はシュッとしていたはずのちくわぶだが、今やそのシルエットは名前の通り、モチッとした「ちくわぶ」そのもの。颯真が送ってきた高級おやつと、リオが甘やかして与え続けたカリカリの成果が、そのわがままボディに集約されていた。
「だめだよ。今日からおやつは抜き。健康のためにダイエットしようね」
奏多が厳しく言い渡すと、ちくわぶは「……にゃ?」と不満げに鳴き、のっそりと立ち上がった。そして、あてつけのように奏多の足元へ寄っていく。
ちくわぶは、奏多のパジャマの裾を前足でチョイチョイと引き、じっとりと湿った視線で奏多を見上げた。
「……何? そんな目で見ても、今日はおやつあげないよ」
すると、ちくわぶは立ち上がり、奏多のお腹のあたりを、前足で「ぷよっ」とつついた。
「……えっ」
奏多の動きが止まる。
恐る恐る、自分でも自分のお腹に手を当ててみる。……そこには、休養期間中の運動不足と、リオが「奏多さんを元気にしなきゃ!」と毎日振る舞った高カロリーで愛の詰まった手料理の結果が、確かな弾力となって存在していた。
「…………僕も、太った…………?」
ちくわぶは「お前もな」と言わんばかりの冷ややかな目で鳴き、再び丸くなって寝転んだ。奏多はその場に膝をつき、絶望の淵に立たされたかのようにガックリと肩を落とした。
数時間後。リオが仕事を終え、意気揚々と帰宅した。
「ただいま戻りました、奏多さん! 今日は美味しいケーキを買って……」
賑やかにリビングに入ったリオは、異様な光景を前に言葉を失った。
部屋の隅で、奏多が膝を抱えて丸まっている。そしてその隣で、ちくわぶも同じような角度で丸まり、二人(一人と一匹)の周りにはどんよりとした重苦しい空気が漂っていた。
「か、奏多さん!? どうしたんですか、そんなところで! 怪我!? 足がまた痛むんですか!?」
リオが慌てて駆け寄り、奏多の肩を揺らす。奏多は、涙をいっぱいに溜めた瞳でリオをゆっくりと見上げた。
「……リオくん。……僕、もうアイドル失格かもしれない」
「はぁ!? 何を言ってるんですか、世界一のアイドルですよ!?」
「……ちくわぶに、お腹を……つつかれたの。ぷよって。……僕、もうステージで踊れない……重すぎて……」
「………………」
リオは一瞬フリーズし、次に隣で図太く寝ているちくわぶを見た。ちくわぶは片目だけ開けてリオをチラリと見ると、ふいっと顔を背けた。
「そ、そんなことありません! 奏多さんは今、史上最高にモチモチしていて……じゃなくて! 抱き心地が良くて最高です! それに、ちょっとくらいお肉がついた方が健康にいいって颯真さんも言ってましたし!」
「……颯真は、自分も太ったって言ってた。……あんなに絞ってた颯真まで……」
「(あの人もかよ!!)」
おろおろと狼狽えるリオ。ケーキの箱を背後に隠しつつ、必死に奏多を慰める。
「大丈夫です! 明日から一緒にジョギングしましょう!あ、でも足に負担がかかるから…… 僕が奏多さんを背負って走ります!」
「……それ、僕の運動にならないよね……?」
「あっ。……じゃあ、僕が奏多さんの前でケーキをぶら下げて走ります!」
「…………」
奏多の視線が、さらに冷たくなった。
結局その夜は、おやつを奪われたちくわぶの不機嫌な鳴き声と、自分の体型にショックを受けてリオのハグを拒否する奏多、そして彼らを同時になだめようとして奔走するリオの、長く切ない夜が続いた。
昼下がりのリビング。奏多は、床で香箱座りをしているちくわぶを、深刻な面持ちでじっと見つめていた。保護された当初はシュッとしていたはずのちくわぶだが、今やそのシルエットは名前の通り、モチッとした「ちくわぶ」そのもの。颯真が送ってきた高級おやつと、リオが甘やかして与え続けたカリカリの成果が、そのわがままボディに集約されていた。
「だめだよ。今日からおやつは抜き。健康のためにダイエットしようね」
奏多が厳しく言い渡すと、ちくわぶは「……にゃ?」と不満げに鳴き、のっそりと立ち上がった。そして、あてつけのように奏多の足元へ寄っていく。
ちくわぶは、奏多のパジャマの裾を前足でチョイチョイと引き、じっとりと湿った視線で奏多を見上げた。
「……何? そんな目で見ても、今日はおやつあげないよ」
すると、ちくわぶは立ち上がり、奏多のお腹のあたりを、前足で「ぷよっ」とつついた。
「……えっ」
奏多の動きが止まる。
恐る恐る、自分でも自分のお腹に手を当ててみる。……そこには、休養期間中の運動不足と、リオが「奏多さんを元気にしなきゃ!」と毎日振る舞った高カロリーで愛の詰まった手料理の結果が、確かな弾力となって存在していた。
「…………僕も、太った…………?」
ちくわぶは「お前もな」と言わんばかりの冷ややかな目で鳴き、再び丸くなって寝転んだ。奏多はその場に膝をつき、絶望の淵に立たされたかのようにガックリと肩を落とした。
数時間後。リオが仕事を終え、意気揚々と帰宅した。
「ただいま戻りました、奏多さん! 今日は美味しいケーキを買って……」
賑やかにリビングに入ったリオは、異様な光景を前に言葉を失った。
部屋の隅で、奏多が膝を抱えて丸まっている。そしてその隣で、ちくわぶも同じような角度で丸まり、二人(一人と一匹)の周りにはどんよりとした重苦しい空気が漂っていた。
「か、奏多さん!? どうしたんですか、そんなところで! 怪我!? 足がまた痛むんですか!?」
リオが慌てて駆け寄り、奏多の肩を揺らす。奏多は、涙をいっぱいに溜めた瞳でリオをゆっくりと見上げた。
「……リオくん。……僕、もうアイドル失格かもしれない」
「はぁ!? 何を言ってるんですか、世界一のアイドルですよ!?」
「……ちくわぶに、お腹を……つつかれたの。ぷよって。……僕、もうステージで踊れない……重すぎて……」
「………………」
リオは一瞬フリーズし、次に隣で図太く寝ているちくわぶを見た。ちくわぶは片目だけ開けてリオをチラリと見ると、ふいっと顔を背けた。
「そ、そんなことありません! 奏多さんは今、史上最高にモチモチしていて……じゃなくて! 抱き心地が良くて最高です! それに、ちょっとくらいお肉がついた方が健康にいいって颯真さんも言ってましたし!」
「……颯真は、自分も太ったって言ってた。……あんなに絞ってた颯真まで……」
「(あの人もかよ!!)」
おろおろと狼狽えるリオ。ケーキの箱を背後に隠しつつ、必死に奏多を慰める。
「大丈夫です! 明日から一緒にジョギングしましょう!あ、でも足に負担がかかるから…… 僕が奏多さんを背負って走ります!」
「……それ、僕の運動にならないよね……?」
「あっ。……じゃあ、僕が奏多さんの前でケーキをぶら下げて走ります!」
「…………」
奏多の視線が、さらに冷たくなった。
結局その夜は、おやつを奪われたちくわぶの不機嫌な鳴き声と、自分の体型にショックを受けてリオのハグを拒否する奏多、そして彼らを同時になだめようとして奔走するリオの、長く切ない夜が続いた。
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