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53. 食す
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昨日の「悪魔」との死闘が嘘のように、翌日の奏多はプロの顔で生放送のバラエティ番組に出演していた。
しかし、その企画内容はあまりにも過酷なものだった。
『驚愕!世界の次世代グルメを食レポせよ!』
華やかなスタジオのテーブルに並べられたのは、こんがりと素揚げにされたコオロギ、ツヤツヤと光るイモムシ、そして巨大なタガメ。
「……っ」
一瞬、画面越しでも分かるほど奏多の頬が引き攣った。
テレビの前で視聴していたリオと颯真は、同時に叫び声を上げた。
「ちょっと待って!! 奏多さんに何させてるの!? 事務所のチェックはどうなってるんですか!!」
「俺に言うな! バラエティ担当が『奏多の新しい一面を』とか言って勝手に……おい、奏多! やめるんだ!」
画面の中の奏多は、震える箸でコオロギを手に取り、意を決して口に放り込んだ。
……沈黙。
視聴者も、スタジオも、そして見守る二人も息を呑んだ次の瞬間。
「…………あれ? 香ばしくて、海老みたい。……美味しいです」
奏多の瞳がキラキラと輝き出した。彼はその後も「こっちはナッツみたい」「これはクリーミーですね」と、まるで高級フレンチでも食べているかのような上品な所作で、次々とゲテモノという名の次世代グルメを完食していった。
「………………」
「………………」
リオと颯真は、テレビの前で魂が抜けたような顔で放心状態に陥った。自分たちが昨日あんなに怯えた「カサカサ動く類」を、自分たちの愛するエースが満面の笑みで咀嚼している。その衝撃は、あまりにも強すぎた。
数時間後。ガチャリと玄関の音がして、奏多が帰宅した。
「ただいま。……二人とも、どうしたの? そんなに青い顔して」
「奏多さん……! 大丈夫ですか!? お腹痛くないですか!? 変なウイルスとか、……その、精神的にショックを受けてないですか!?」
リオが涙目で駆け寄る。颯真も「奏多……。お前、あんなのよく食べた……。無理して笑って…」と肩に手を置いた。
「ううん、本当に美味しかったんだよ。だから、スタッフさんに余ったのをもらっちゃった」
奏多はニコニコと笑いながら、手に持っていた大きな紙袋を差し出した。
「ほら、二人も食べる?」
袋の中には、大量に調理されたコオロギやイモムシが、ゴロゴロと詰め込まれていた。
「「…………っっっっっっ!!!!!!」」
声にならない絶叫。
それは、どんなホラー映画よりも恐ろしい光景だった。
「お、俺……ちょっと、急な用事思い出したわ。帰る。じゃあ!!」
颯真は脱兎のごとく玄関へ走り、靴を履くのももどかしい様子で自分の家へと逃げ帰った。事務所のリーダーとしての威厳は、コオロギの素揚げと共に消え去った。
「り、リオくんは? 食べる?」
「…。……ひ、控えさせていただきます……っ」
リオも後ずさりし壁際まで追い詰められる。
「そっか、残念。美味しいのに……」
奏多は少し寂しそうに言うと、リビングのソファに座り、テレビをつけながら「ボリボリ、ボリボリ」と軽快な音を立ててコオロギを食べ始めた。
その姿は、まるでお洒落なスナック菓子を楽しんでいるかのよう。
リオは、その背中を遠巻きに見つめながら、激しい衝撃に打ち震えていた。
つい最近まで守ってあげなきゃいけない繊細な人だと思っていた奏多が、今、自分を恐怖のどん底に突き落とした「悪魔」の仲間たちを笑顔で咀嚼している。
「……奏多さん……。僕、……奏多さんのことが、たまに分からなくなります……」
「ん? なに?」
振り返った奏多の口角には、足のようなものが一本ついていた。
リオはその夜、ちくわぶを抱きしめて、一晩中震えながら過ごすことになった。
しかし、その企画内容はあまりにも過酷なものだった。
『驚愕!世界の次世代グルメを食レポせよ!』
華やかなスタジオのテーブルに並べられたのは、こんがりと素揚げにされたコオロギ、ツヤツヤと光るイモムシ、そして巨大なタガメ。
「……っ」
一瞬、画面越しでも分かるほど奏多の頬が引き攣った。
テレビの前で視聴していたリオと颯真は、同時に叫び声を上げた。
「ちょっと待って!! 奏多さんに何させてるの!? 事務所のチェックはどうなってるんですか!!」
「俺に言うな! バラエティ担当が『奏多の新しい一面を』とか言って勝手に……おい、奏多! やめるんだ!」
画面の中の奏多は、震える箸でコオロギを手に取り、意を決して口に放り込んだ。
……沈黙。
視聴者も、スタジオも、そして見守る二人も息を呑んだ次の瞬間。
「…………あれ? 香ばしくて、海老みたい。……美味しいです」
奏多の瞳がキラキラと輝き出した。彼はその後も「こっちはナッツみたい」「これはクリーミーですね」と、まるで高級フレンチでも食べているかのような上品な所作で、次々とゲテモノという名の次世代グルメを完食していった。
「………………」
「………………」
リオと颯真は、テレビの前で魂が抜けたような顔で放心状態に陥った。自分たちが昨日あんなに怯えた「カサカサ動く類」を、自分たちの愛するエースが満面の笑みで咀嚼している。その衝撃は、あまりにも強すぎた。
数時間後。ガチャリと玄関の音がして、奏多が帰宅した。
「ただいま。……二人とも、どうしたの? そんなに青い顔して」
「奏多さん……! 大丈夫ですか!? お腹痛くないですか!? 変なウイルスとか、……その、精神的にショックを受けてないですか!?」
リオが涙目で駆け寄る。颯真も「奏多……。お前、あんなのよく食べた……。無理して笑って…」と肩に手を置いた。
「ううん、本当に美味しかったんだよ。だから、スタッフさんに余ったのをもらっちゃった」
奏多はニコニコと笑いながら、手に持っていた大きな紙袋を差し出した。
「ほら、二人も食べる?」
袋の中には、大量に調理されたコオロギやイモムシが、ゴロゴロと詰め込まれていた。
「「…………っっっっっっ!!!!!!」」
声にならない絶叫。
それは、どんなホラー映画よりも恐ろしい光景だった。
「お、俺……ちょっと、急な用事思い出したわ。帰る。じゃあ!!」
颯真は脱兎のごとく玄関へ走り、靴を履くのももどかしい様子で自分の家へと逃げ帰った。事務所のリーダーとしての威厳は、コオロギの素揚げと共に消え去った。
「り、リオくんは? 食べる?」
「…。……ひ、控えさせていただきます……っ」
リオも後ずさりし壁際まで追い詰められる。
「そっか、残念。美味しいのに……」
奏多は少し寂しそうに言うと、リビングのソファに座り、テレビをつけながら「ボリボリ、ボリボリ」と軽快な音を立ててコオロギを食べ始めた。
その姿は、まるでお洒落なスナック菓子を楽しんでいるかのよう。
リオは、その背中を遠巻きに見つめながら、激しい衝撃に打ち震えていた。
つい最近まで守ってあげなきゃいけない繊細な人だと思っていた奏多が、今、自分を恐怖のどん底に突き落とした「悪魔」の仲間たちを笑顔で咀嚼している。
「……奏多さん……。僕、……奏多さんのことが、たまに分からなくなります……」
「ん? なに?」
振り返った奏多の口角には、足のようなものが一本ついていた。
リオはその夜、ちくわぶを抱きしめて、一晩中震えながら過ごすことになった。
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