元アイドルは現役アイドルに愛される

文字の大きさ
67 / 71

68. 女の行く末

しおりを挟む
奏多の病状が安定し、リオの献身的な介護が日常と化してきた頃、警察の捜査も大詰めを迎えていた。

​病室を訪れたマネージャーが、重い口を開いて颯真とリオ、そしてベッド上の奏多に報告をもたらした。

​「……犯人の女についてだが、送検された。警察の調べに対し、容疑を全面的に認めているそうだ」

​マネージャーの話によれば、女は数年前の照明事故のあと、執行猶予付きの判決を受けていたが、その期間が終わると同時に再びグループの動向を追い始めたという。

​「彼女の供述は、かなり身勝手なものだった……。前回の事件でグループが解散し、奏多が引退したことで『自分の正しさが証明された』と思い込んでいたらしい。それなのに、颯真が再び奏多を連れて活動を再開したことが許せなかったと」

​颯真はそれを聞き、拳を固く握りしめた。
自分の存在が、狂った執着のガソリンになっていた事実は、やはり重い。

​「『颯真さんが一番輝ける場所を、あの男が汚している』……。彼女は最後までそう繰り返していたそうだ。だが、今回は明確な殺意を持っての犯行だ。前回の余罪や計画性も考慮して、非常に重い実刑が科される見通しだよ。彼女が再び君たちの前に現れることは、二度とない」

​「……そうですか」

​奏多が静かに呟いた。その声に憎しみはなく、ただ悲しいものを見るような響きがあった。

​「あの時、僕がやめたことで、彼女を『成功』させてしまったんだね。僕が逃げずに戦っていれば、今回のことは防げたのかな」

​「違いますよ!」

​すかさずリオが、握っていた奏多の手に力を込める。


​「奏多さんは何も悪くない。逃げたわけじゃない、傷ついて休んでいただけです。悪いのは、自分の勝手な想いを暴力に変えたあの女だけですよ」

​「リオの言う通りだ」


​颯真が奏多の枕元に歩み寄り、その頭を優しく小突いた。


​「もう終わったんだ、奏多。あいつはもういない。警察も、事務所も、今度は徹底的にガードを固める。お前が怯える必要はどこにもない」

​「……うん。わかってる」


​奏多は、窓の外に広がる青空を見上げた。かつての事故から続いていた「悪意の連鎖」は、ようやく断ち切られたのだ。

​「もう一度僕をステージに戻してくれて、ありがとう、颯真。隣で支えてくれて、ありがとう、リオくん」

​「……何言ってるんですか、水臭いですよ」

​リオが照れ隠しに奏多の布団を顔まで引き上げ、奏多が「わ、苦しいよ」と笑う。

その光景を見ながら、颯真は心に誓った。

もう二度と、自分の影を誰かに踏ませたりはしない。リーダーとして、この二人を守り抜くと。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

推しにプロポーズしていたなんて、何かの間違いです

一ノ瀬麻紀
BL
引きこもりの僕、麻倉 渚(あさくら なぎさ)と、人気アイドルの弟、麻倉 潮(あさくら うしお) 同じ双子だというのに、なぜこんなにも違ってしまったのだろう。 時々ふとそんな事を考えてしまうけど、それでも僕は、理解のある家族に恵まれ充実した引きこもり生活をエンジョイしていた。 僕は極度の人見知りであがり症だ。いつからこんなふうになってしまったのか、よく覚えていない。 本音を言うなら、弟のように表舞台に立ってみたいと思うこともある。けれどそんなのは無理に決まっている。 だから、安全な自宅という城の中で、僕は今の生活をエンジョイするんだ。高望みは一切しない。 なのに、弟がある日突然変なことを言い出した。 「今度の月曜日、俺の代わりに学校へ行ってくれないか?」 ありえない頼み事だから断ろうとしたのに、弟は僕の弱みに付け込んできた。 僕の推しは俳優の、葛城 結斗(かつらぎ ゆうと)くんだ。 その結斗くんのスペシャルグッズとサイン、というエサを目の前にちらつかせたんだ。 悔しいけど、僕は推しのサインにつられて首を縦に振ってしまった。 え?葛城くんが目の前に!? どうしよう、人生最大のピンチだ!! ✤✤ 「推し」「高校生BL」をテーマに書いたお話です。 全年齢向けの作品となっています。 一度短編として完結した作品ですが、既存部分の改稿と、新規エピソードを追加しました。 ✤✤

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います

塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪

処理中です...