元アイドルは現役アイドルに愛される

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71. 喧嘩とイタズラ

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​「……もういい、リオくんのバカ!」

​奏多のその一言で、リビングに重苦しい沈黙が落ちた。

きっかけは、本当に些細なこと。

リオが奏多の体調を気にするあまり、仕事のスケジュールを制限しようとしたり、「今日は外に出ちゃダメ」と過保護の押し売りをしたことだった。

​奏多は自分のカバンをひっつかむと、驚いて固まるリオを尻目に、玄関のドアを勢いよく開けた。

​「ちょっと、奏多さん!? どこ行くんですか、まだ傷が……!」
「知らない! しばらく帰らないから!」

​バタン、と大きな音が響いて、奏多の気配が消える。
リオは数秒間呆然としたあと、崩れ落ちるように膝をついた。

​「家出……? 僕、嫌われちゃった……? 奏多さん、あんなに怒るなんて……」


※※※※※※※※

​一方、家を飛び出した奏多はというと。

駅のホームで、大きな溜め息をついていた。

​(……あー、言いすぎちゃったかな。でもリオくん、最近本当にしつこいんだもん……)

​実は家出でもなんでもない。

前から決まっていた、地方での1泊2日の撮影出張。
それをあえて黙って家を出ることで、リオにお灸を据えてやろうという、奏多なりのちょっとした「反抗期」だった。

​その頃の自宅では、
​リオはもう絶望のどん底にいた。

「奏多さんがいなくなった」という事実だけで、世界が真っ暗だ。

​「颯真さん……奏多さんが家出しちゃいました……僕のせいです……もう死にたいです……」

「落ち着くんだリオくん、そんなに遠くには行ってないはずだから」

​電話越しに呆れる颯真の言葉も耳に入らない。

リオは奏多のスマホにメッセージを送り続ける。

​『奏多さん、ごめんなさい。僕が悪かったです。どこにいるんですか?』
『今夜のご飯、奏多さんの好きなハンバーグ作ったんです。冷めちゃいます』
『暗くなってきたから危ないです。迎えに行かせてください』

​既読はつく。でも、返信はない。

奏多は新幹線の中で、リオからの必死すぎる通知を眺めながら、ちょっとだけ胸を痛めていた。

​「……ふふ、リオくん、今頃ちくわぶ抱えて泣いてるんだろうな」

​ホテルに着いた奏多は、ようやく1通だけ返信を入れた。

​『今、ホテル。明日の夜には帰るから、反省しててね』

​それを見たリオは、喜びと混乱でパニック。

「ホテル!? 誰と!? 一人で!? なんで!!」

と、さらにスマホを連打する羽目になる。
​結局、翌日の夜。


奏多が「ただいまー」と玄関を開けるやいなや、リオは弾丸のような勢いで奏多に飛びついた。

​「奏多さぁぁぁん!! どこに行ってたんですかぁ!!」
「わわ、リオくん、苦しいって……」
​「出張だったなんて、なんで教えてくれなかったんですか! 僕、この世の終わりかと思いましたよ!」

泣きじゃくるリオをなだめながら、奏多は「だって、リオくんが過保護すぎるからだよ」と笑う。

​その隣で、事情を知っていた颯真が「お前ら、いい加減にしろよ」と言いたげに呆れた顔で立っていた。
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