大好きな幼馴染みを自称カリスマ動画投稿者に寝取られ、冤罪を被ったバチャ豚くん。死にたがりな謎の美少女を救い、彼女と奴等への復讐を誓う。

社畜姉さん

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第2部

第5話:批判コメント

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 廃進広大たちが病室を訪れた翌日。
 バチャ豚が精神病を患い、入院しているという旨の動画が投稿された。
 久々にネット界のおもちゃが復活したことで、彼等のチャンネルはうなぎ上り。
 急上昇ランキング第一位を獲得し、SNSのトレンド欄にも乗る勢い。
 神に愛されているといってもいいほどに、彼等の活動は順調に進んでいる。
 しかし、徐々にではあるが、バチャ豚のことを案じる声も上がり始めていた。

『流石にちょっと可哀想かも』『バチャ豚の母親は殺されたんだろ?』『バチャ豚にも人権はあるだろ』『飛び降り自殺した原因はリリカなんだろ? ちょっと残酷過ぎじゃね?』『バチャ豚……入院中でも動画撮影に協力してるのか?』

 苔ノ橋剛は入院中であるが、それ以外のメンバーは普通に学校がある。
 廃進広大たちは、人気動画配信者ではあるが、本分は高校生だ。
 というわけで、今日も教室で動画の企画会議を行っていた。

「昨日撮った動画……最高だったな。アレはマジで傑作だ」
「マジそれな。アイツ、マジで最高のドル豚だわ」
「豚くんシリーズ調子いいし、このままもっと伸びればいいっすね」

 廃進広大とその取り巻き集団が高笑いしていると。

「広大くん、ちょっとコメ欄が荒れてるんだけど?」

 慌てた様子で、リリカはスマホを見せる。

『こいつらマジでうざい。人気動画投稿者だからって、マジで調子乗り過ぎだろ。てか、バチャ豚が可哀想。人気急上昇中の動画配信者だっけ? 笑いが止まらないんだが? ただイジメ動画を投稿してるだけじゃん。さっさとこいつら殺処分しろよ』

『ヤラセ乙。撮影のために借りたスタジオだろ、これ。オレ、少し前に入院してたことあるけど、普通に複数人部屋だったよ? 一人部屋の時点で明らかに仕込みだろ。ていうか、こんな悪質な動画が人気の時点で……。本当こいつらのファン……マジで頭がどうかしてると思うわ』

 画面上に映し出されたコメントには、ユーザーの本音が書き綴られていた。
 今までも何度か批判的な書き込みがあった。
 ただ、今回のだけは見逃すわけにはいかない。
 だって、いいねマークが100件近くも押されているのだから。

「ねぇ、広大くん……ちょっとどうする? この感想削除しとく?」

 それに、西方リリカにはどうしても許せないコメントがあったのだ。

『このリリカって女……どこが可愛いのかマジで分からない。これぐらいの女ならどこにでもいるだろ。ていうか、ぶりっ子キャラでキモいわ。こんなタイプは絶対に裏でヤバイことやってると思う。リリカキモいと思う人いいねよろ!!』

 可愛い可愛いと言われて育てられてきた西方リリカ。
 彼女はどうしても許せなかった。自分を批判してくる輩たちが。
 無性に腹が立ち、西方リリカは親指の爪を思い切り噛んでしまう。

「……許せない許せない許せない。あたしをバカにしやがって」
「…………クックック」
「ん? どうして笑ってるの?」
「いやぁ~。待ってたんだよ、こんな輩が罠にかかる瞬間をな」
「ん? 罠にかかった? どういうこと?」
「あーそうだよ。これも全部仕掛けだったってわけだ」

 廃進広大は狙っていたのだ。コメント欄が荒れることを。
 既にチャンネル登録者は100万人越え。
 それも、今追い風が吹いているのだ。
 10万人越えのときとは、要領が違うのだ。
 だからこそ——こーいう事態になることは全て。

「計算通りってことだ」

 100万人超えのチャンネル登録者がいれば批判されるのは当たり前。
 通り魔殺人事件の犯人が自首する伝説の回と、バチャ豚が自殺する瞬間を捉えた衝撃映像が流行りに流行って、急激にチャンネル登録者が伸びただけ。

「出る杭は打たれるって言うだろ? 今がそのときだってことだよ」

 廃進広大にとって、逆境は燃える展開に過ぎない。
 自分たちを物語の主人公と勘違いしている彼等は、決して立ち止まらない。
 自分たちを支持する者が正義で、非難する者が悪だと信じる彼等は。

「す、すごーい! 広大くん、天才~!」

 でも、と呟いてから、西方リリカは甘えた口調で。

「でもこのまま悪質なユーザーを放っておくのは許せないんだけど」

 その言葉通り、西方リリカは自分の批判コメントを削除した。
 余程許せなかったのだろう。
 勿論、権利者権限で削除することはできるのだが、自分を批判する者は今後も現れるのだ。次から次へと削除しても何の意味もないと思うのだが……。

「リリカ。それ以上気に入らないコメントを削除するのはやめとけ」
「えっ~~。どうして? 別にこんな気持ち悪い奴等を残しても何の意味もないじゃん。コイツらの存在は既存のユーザーにとって不快なだけじゃん!!」

 頭空っぽなバカ女のくせに、リリカは正論を語ってきた。
 でもそんな納得できない彼女を、廃進広大はなだめるのであった。

「ふん。ここから先は、これを全て利用させてもらう」
「えっ……? 広大くん、コメント欄が荒れることを利用する? それって?」
「あぁー。早速、SNSで報告しないとな。アンチには絶対負けない宣言だ」

 余裕な笑みを浮かべてほくそ笑む廃進広大は、まだ今は知らない。

 これから先、彼に訪れる不幸を。
 これから先、彼がバカにした連中がどんな人間なのかを。
 これから先、彼が散々虐げてきた少年が復讐を開始することを。

「バカな奴等だ。誹謗中傷なんてものは、オレたちを上へと押し上げるための、ただの道具に過ぎないってのに。必死に粗を探して、イキリ散らす。正にゴミだ」

 でも、と呟き、まだこれから先に起こる復讐劇を知らない彼は笑いながら。

「もっともっと荒れろ。そして、オレを上へと連れて行ってくれ。ゴミ共」
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