ブラック企業奴隷の俺は異世界転生して奴隷を解放してみた

佐藤さん

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2 企業設立?(雇い主に殺害容疑あり)

三者三様三つ巴

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 私がご主人様にテレパスに集中している間に事が進んでいた。喧騒が沸き立ち、小さな悲鳴に視線を流すと思考が乱れる光景が広がっていた。

「返せ!!」

 アナは小さな体を使い、黒フードの男に飛びついていた。まるで肩車だ。綺麗にした長い黒髪を振り乱して黒フードを掴んでいる。

「おねえちゃんを返せ!!」
「クソ!!なんなんだお前といい。」
「はっはっ!大変そうだなミスター犯罪者。」
「ふざけんな!!」
「慌てすぎておもしろ…。お前はあの時のたぬき。何でここに…」
「しまった…。」

 黒フードと会話をしていたガスマスクの男は私に気づいてしまった。流れるように腰に手を回すが、その隙を突いて黒フードは装備品が巻かれている腹に蹴りをいれた。不意を突かれて身体のバランスを崩してしまい地面に倒れこんで愚痴を零す。

「んなんだきさまッ!!魔法使いだろ!!」
「魔法使いが武道できても問題なしだろ!!じゃな!!」

 捨て台詞を吐いて黒フードはアナを担いだまま路地裏に逃げ込んだ。アナの姿が消えてやっと思考が戻ってきて、跡を追うために足を上げる。

「まって!!アナをかえして!!」
「逃げるな黒…いや待てたぬき!!!征服者はどこだ!!」

 後ろから聞えてくるガスマスクの声を無視、目の前で黒フードに文字通り無我夢中で噛み付いているアナに叫ぶ。

「アナ!!アナってば!」
「この___返せッ…」

 我を忘れて組み付くアナの表情は、復讐に顔を歪めていた。

「良く聞いてアナ!早くそこからはな___」
「させるカヨ。」

 黒フードの声を聞いて脳内アラームが鳴り響いた。今まで流れるだけの光景が変わった事に気づくのが遅れたからだ。
 狭い路地裏には足を的確に邪魔をしてくる細々としたゴミ。それからレンガ調の壁が両サイドを塞いで進行方向を決めさせられている。加えて、その壁には急に正方形の白紙が真横一線にズラリと張り付けられていた。

(まずい。逃げ道がないここで何かする気だ。背後にマスクの男が居るかもしれないのに。)
「焦ってる暇ないんじゃないか獣人。[さっさと出てこい木偶の坊]」

 フードの中から這い出てくる呼び声を聞いて、壁に貼り付けられた白紙から木の枝が上下左右あらゆる方向に刺々しく突き出てきた。これは召還魔法だ。契約魔法により、パスが繋がった者を魔力に変換し空間転移にて引きずり出す技。何て事を昔に聞いた事がある。

「小手先の上手いだけの技が!しゃらくさい!!!」

 意識を掌に集めて、腕を空につっ込んだ。すると腕は空間を裂いて何もない場所へと進んでいく。これは森の賢者 ゴリラのモノさんが作った次元ポケットだ。

「見た事ねえ魔法棚だな。なんだそりゃ。」
「目にモノ見せてやりますよ!!」

 そうして手の馴染みがいい柄を握って引き抜くと、身の丈に合わない長い柄の大きな斧が現れた。そうしてる間に目の前の進路を白紙から突き出た木が無造作に邪魔をする。
 大人が弱者に組し抱く身勝手な理由。アナの話を聞いてから身に覚えがありすぎて、まるで人事だとは考えられなかった。転生した身の上で語れるようなことはないけれど、この行き場のない心に灯る怒りを力に変えることは許されるだろう。

「邪魔だァッ!!!!」

 それを投げた。前方に向かって。障害物になる木を蹴散らしながら突き進み、狙いである黒フードの両足を切り倒す。筈だった。

「そんな単純なわけないでしょうが。」

 砕け散った断面をそのままに、枝は更に長さを伸ばし、斧を絡め取った。

「なに?急に木が伸び___グッ」

 わき腹に熱い感覚が走って手首を縛り付けら動きを封じらた。視線を落とすと腕と身体に木の枝が組みついて、わき腹にささくれ立った部分が刺さっていた。

「なによこれ…」
「地元で自生している名もない肉食の植物だ。自損で敵を把握して絞め殺す生存戦略を持つ。解くのは難易度高いぞ。」

 黒フードの言うとおりだった。体の中を掻き分けて進む感覚が痛みと共に胎動していた。だがそれがどうした。この身体を突き動かしているのは怒りだろう。

(あーこりゃ足止め用だってバレたな。てかなんちゅう顔する女だ。ありゃ自分の体裂けたって突き___)





































「うおおおおおおおおおおお!」

 力を込めて走ってみると案外いけるもので、邪魔なもの全て無視して追いかけると黒フードは叫びながらはしって逃げていた。そうして裏路地を抜けたなら中央に噴水がある広間に飛び出した。

「くっそ怖すぎだろッてうわ__」

 黒フードは急に足場が変わった事で足取りが絡まって、急制動によりアナが振り落とされてた。動きが遅くなる瞬間を、私は捉えて逃がさない。

「歯を食いしばってください。」
「しまッ__」

 柄を握り、足と腕の筋肉をフルで稼動させ、腰を回せば腕に乗った重みが前へと進んで円を書く。するとあとは斧を振りぬくだけだ。

「させぬ!」

 声と共に上から下に向かって軌道を無視して斧が落ちる。それから身体の自由が奪われたかと思うと、縄が身体に飛びついて拘束までされていた。瞬く間に無力化の二肯定が一挙に終わった。
 芋虫みたいに地面にキスしていると背中をブーツが踏みしめ、痛みの強さに声が押し出された。

「グッ!!!」
「征服者の使いに誘拐犯。犯罪者が二人も居るとは。僥倖僥倖」

 私を踏んでいたのはガスマスクの男で、いつの間にやらショットガンをもっていた。

「なんかよくわかんねーけど…。にげ」
「にげるなよドクズ。」
「…どうしようもない、か。」

 すると黒フードはフードを下ろして素顔を晒し、黄金の笛を取り出した。私が目に入ったのは長髪だ。それはアナの記憶にでて来た坊主の男ではなかったからだ。

 思考をめぐらせていると笛は低い音を響かせて、瞬きした瞬間には男の右隣に西洋甲冑を召還した。

「ジークフリートの一振り。最速か。」
「なッ!なんでここに!」
「うお!おめーコンクエスタの付き人じゃねぇか!!…なるほど。可愛そうな場面だが」

 西洋甲冑はまた黄金剣を抜こうと柄を握る。

「義理立てはさせてもらう。」


 
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