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第23話 隠蔽工作と、離れられない
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「……寒くないか?」
「う、うん。大丈夫……」
帰りの車中。
私は蓮の膝の上に抱きかかえられ、彼のジャケットにくるまれていた。
暖房は効いているはずなのに、指先の震えが止まらない。
あの部屋の冷たさと、男たちの暴力的な視線が、まだ肌に残っている気がした。
蓮は私の背中を一定のリズムでさすりながら、スマホでどこかへ指示を出していた。
「……ああ、俺だ。現場の処理はどうなってる」
『へいへい、ボス。完璧ですよ。ボヤ騒ぎとガス漏れ事故ってことで、地元の警察と消防には話を通しました。山奥で目撃者もいないし、別荘自体が違法建築だったから、向こう(一条家)も被害届は出せません』
「警備員たちは?」
『全員、目が覚めたら「何も覚えていない」と言うでしょうね。……口座に退職金の10倍の額を振り込んでおきましたから』
「そうか。……ご苦労だった」
蓮は通話を切り、私を強く抱きしめ直した。
「聞いたか、美月。……何もなかった。今日はただ、俺たちがドライブに行っただけだ」
「……うん」
50億の資金と裏の人脈。
彼は本当に、私のために犯罪スレスレ……いいえ、完全な犯罪すらも「なかったこと」にしてしまった。
その異常なまでの過保護さが、今の私には涙が出るほど頼もしかった。
到着したのは、私のボロアパートでも、あの雑居ビルでもなかった。
都心の超高級タワーマンション。
その最上階にある、広すぎて落ち着かないペントハウスだった。
「ここは……?」
「俺が個人名義で持っていた隠れ家の一つだ。……一条家のリストには載っていない」
蓮は私を抱き上げたまま、リビングを抜けてバスルームへと向かった。
「今日はもう、何も考えなくていい。……風呂に入って、泥を落とそう」
「え、一緒に入るの……?」
「当たり前だ。今のお前を一人にできるわけがない」
拒否権はなかった。
広すぎるバスタブにお湯が張られ、私は彼に服を脱がされた。
恥ずかしさよりも、彼の温かい手が肌に触れる安心感が勝った。
お湯の中、彼は私の身体を隅々までチェックした。
「……あざができている」
彼の手が、手首に残った拘束の痕をなぞる。
その瞳が、悲痛な色に揺れた。
「すまない……。俺がもっと早く見つけていれば……」
「痛くないよ。……蓮が来てくれたから、もう平気」
「平気なわけがあるか。……お前は震えてる」
彼は私を背後から抱きしめ、肩に顔を埋めた。
「怖かった……。お前がいなくなる夢を、何度も見た」
背中に感じる彼の吐息が、微かに震えている。
最強の王様が、私の前でだけ見せる「弱さ」。
ああ、この人も怖かったんだ。
私を失うことが、何よりも恐ろしかったんだ。
「蓮……」
私は振り返り、彼の頬を両手で包んだ。
「私はここにいるよ。どこにも行かない」
「……ああ」
彼は縋るように私に口づけをした。
激しさはない。ただ、互いの存在を確かめ合うような、深く、長いキス。
お湯の温かさと、彼の体温が混じり合い、強張っていた私の心がゆっくりと溶けていく。
その夜。
ベッドに入ってからも、蓮は私を離さなかった。
まるで、少しでも隙間ができたら私が消えてしまうとでも思っているかのように、手足を絡ませて眠った。
「……愛してる、美月」
寝言のように呟かれた言葉。
私は彼の胸に耳を押し当て、力強い鼓動を聞きながら、ようやく深い眠りにつくことができた。
翌朝。
私たちはまだ知らなかった。
この事件がきっかけで、百合子会長が「自滅」への道を歩み始めたことを。
そして、私のスマホに、10年前の真実に繋がる「ある人物」からの連絡が入ることを。
「う、うん。大丈夫……」
帰りの車中。
私は蓮の膝の上に抱きかかえられ、彼のジャケットにくるまれていた。
暖房は効いているはずなのに、指先の震えが止まらない。
あの部屋の冷たさと、男たちの暴力的な視線が、まだ肌に残っている気がした。
蓮は私の背中を一定のリズムでさすりながら、スマホでどこかへ指示を出していた。
「……ああ、俺だ。現場の処理はどうなってる」
『へいへい、ボス。完璧ですよ。ボヤ騒ぎとガス漏れ事故ってことで、地元の警察と消防には話を通しました。山奥で目撃者もいないし、別荘自体が違法建築だったから、向こう(一条家)も被害届は出せません』
「警備員たちは?」
『全員、目が覚めたら「何も覚えていない」と言うでしょうね。……口座に退職金の10倍の額を振り込んでおきましたから』
「そうか。……ご苦労だった」
蓮は通話を切り、私を強く抱きしめ直した。
「聞いたか、美月。……何もなかった。今日はただ、俺たちがドライブに行っただけだ」
「……うん」
50億の資金と裏の人脈。
彼は本当に、私のために犯罪スレスレ……いいえ、完全な犯罪すらも「なかったこと」にしてしまった。
その異常なまでの過保護さが、今の私には涙が出るほど頼もしかった。
到着したのは、私のボロアパートでも、あの雑居ビルでもなかった。
都心の超高級タワーマンション。
その最上階にある、広すぎて落ち着かないペントハウスだった。
「ここは……?」
「俺が個人名義で持っていた隠れ家の一つだ。……一条家のリストには載っていない」
蓮は私を抱き上げたまま、リビングを抜けてバスルームへと向かった。
「今日はもう、何も考えなくていい。……風呂に入って、泥を落とそう」
「え、一緒に入るの……?」
「当たり前だ。今のお前を一人にできるわけがない」
拒否権はなかった。
広すぎるバスタブにお湯が張られ、私は彼に服を脱がされた。
恥ずかしさよりも、彼の温かい手が肌に触れる安心感が勝った。
お湯の中、彼は私の身体を隅々までチェックした。
「……あざができている」
彼の手が、手首に残った拘束の痕をなぞる。
その瞳が、悲痛な色に揺れた。
「すまない……。俺がもっと早く見つけていれば……」
「痛くないよ。……蓮が来てくれたから、もう平気」
「平気なわけがあるか。……お前は震えてる」
彼は私を背後から抱きしめ、肩に顔を埋めた。
「怖かった……。お前がいなくなる夢を、何度も見た」
背中に感じる彼の吐息が、微かに震えている。
最強の王様が、私の前でだけ見せる「弱さ」。
ああ、この人も怖かったんだ。
私を失うことが、何よりも恐ろしかったんだ。
「蓮……」
私は振り返り、彼の頬を両手で包んだ。
「私はここにいるよ。どこにも行かない」
「……ああ」
彼は縋るように私に口づけをした。
激しさはない。ただ、互いの存在を確かめ合うような、深く、長いキス。
お湯の温かさと、彼の体温が混じり合い、強張っていた私の心がゆっくりと溶けていく。
その夜。
ベッドに入ってからも、蓮は私を離さなかった。
まるで、少しでも隙間ができたら私が消えてしまうとでも思っているかのように、手足を絡ませて眠った。
「……愛してる、美月」
寝言のように呟かれた言葉。
私は彼の胸に耳を押し当て、力強い鼓動を聞きながら、ようやく深い眠りにつくことができた。
翌朝。
私たちはまだ知らなかった。
この事件がきっかけで、百合子会長が「自滅」への道を歩み始めたことを。
そして、私のスマホに、10年前の真実に繋がる「ある人物」からの連絡が入ることを。
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