4 / 11
第4話:焦燥の告発と、醜悪なる責任転嫁
しおりを挟む
首の奥のチップが、ジリジリと嫌な熱を放ち始めている。
タイムリミットまで残り14時間強。
相変わらず、視界のいいねカウンターは鈍い動きしか見せない。
画面の前のあんた。
頼むから、俺が黒焦げになる前に指を動かしてくれよ。
俺の命がかかってるんだ。このままじゃマジで終わる。
だから俺は、数字を稼ぐために特大の劇薬を投下する。
「中村、大丈夫か? 何が書かれているんだ?」
俺は怯えきった中村樹の肩を抱き、ひたすらに優しい声で囁いた。
周囲のクラスメイトたちは、自分のカードの秘密を隠すのに必死で、まだ誰も他人のカードを覗き込もうとはしていない。
だからこそ、一番最初に血祭りに上げる奴が必要だ。
「み、湊……俺、違うんだ。俺はただ、言われた通りにしただけで……」
中村の顔面は蒼白で、歯の根が合わずにガチガチと鳴っている。
こいつのカードに何が書かれているか、俺は運営の事前データで知っている。
あいつの机に、毎日汚物を入れ続けていたことだ。
「言われた通り……? 誰かに命令されたのか?」
俺がわざと大きな声で聞き返すと、教室中の視線が一斉に中村へ突き刺さった。
「ひっ……!」
「おい中村。てめえ、何をやらかしたんだ?」
不良の木村拓海が、苛立ちを隠せない声で一歩前に出る。
他人の罪を暴けば、自分の罪から目を逸らせる。その浅ましい自己防衛本能が、教室の空気を一気に攻撃的なものに変えた。
「言えよ、中村。隠し立てするなら、お前が裏切り者ってことで運営に突き出すぞ」
皮肉屋の松本悠真が、冷たい言葉で中村の逃げ道を塞ぐ。
いいぞ。もっと追い詰めろ。
俺の首の熱を冷ますために、こいつを徹底的に痛めつけてくれ。
「ち、違う! 俺じゃない! 俺にやれって言ったのは……橋本さんだ!」
中村の絶叫が、コンクリートの壁に反響した。
全員の視線が、今度は窓際で震えていた橋本彩乃へと移動する。
「……え?」
橋本は大きな瞳を見開き、信じられないものを見るような目で中村を見つめた。
そして、ポロリと。
完璧なタイミングで、その目から大粒の涙がこぼれ落ちる。
「中村くん……どうして、そんな嘘をつくの……?」
震える肩、青ざめた唇。
どこからどう見ても、身勝手な男に罪をなすりつけられた悲劇のヒロインだ。
だが、俺は知っている。あいつの机の鍵を盗み出し、中村に手渡したのは間違いなくこの女だ。
「嘘じゃない! お前があの夜、俺に……!」
「待ってよ! 彩乃がそんなことするわけないでしょ!」
親友の石井咲が烈火のごとく怒り、橋本を庇うように前に出た。
「自分が疑われたからって、女の子をスケープゴートにするなんて最低ね!」
「違うっ! 俺は本当のことを……証拠だってある! 橋本、お前のカードにも書かれてるはずだろ!」
中村が狂乱して橋本に掴みかかろうとする。
木村がそれを力任せに突き飛ばし、中村が床に無様に転がった。
醜い。
最高に醜い共食いだ。
画面の前のあんた、どうだ?
他人の秘密を暴き合い、自分だけは助かろうと必死にもがくクズどもの姿は。
これこそが、あんたたちが求めていた極上のエンターテインメントだろ?
視界の端で、いいねのカウンターが微かに動いた気がした。
だが、まだ足りない。全然足りない。
「二人ともやめるんだ! 争っている場合じゃない!」
俺は正義の味方を気取って中村と木村の間に割って入りながら、心の中で狂ったように叫ぶ。
もっとだ。
もっと俺にいいねをくれ。
ノルマをクリアして、俺がこの泥沼の主導権を完全に握るまで。
あんたの指先一つで、俺の命を救って、こいつらを地獄へ落とさせてくれ。
タイムリミットまで残り14時間強。
相変わらず、視界のいいねカウンターは鈍い動きしか見せない。
画面の前のあんた。
頼むから、俺が黒焦げになる前に指を動かしてくれよ。
俺の命がかかってるんだ。このままじゃマジで終わる。
だから俺は、数字を稼ぐために特大の劇薬を投下する。
「中村、大丈夫か? 何が書かれているんだ?」
俺は怯えきった中村樹の肩を抱き、ひたすらに優しい声で囁いた。
周囲のクラスメイトたちは、自分のカードの秘密を隠すのに必死で、まだ誰も他人のカードを覗き込もうとはしていない。
だからこそ、一番最初に血祭りに上げる奴が必要だ。
「み、湊……俺、違うんだ。俺はただ、言われた通りにしただけで……」
中村の顔面は蒼白で、歯の根が合わずにガチガチと鳴っている。
こいつのカードに何が書かれているか、俺は運営の事前データで知っている。
あいつの机に、毎日汚物を入れ続けていたことだ。
「言われた通り……? 誰かに命令されたのか?」
俺がわざと大きな声で聞き返すと、教室中の視線が一斉に中村へ突き刺さった。
「ひっ……!」
「おい中村。てめえ、何をやらかしたんだ?」
不良の木村拓海が、苛立ちを隠せない声で一歩前に出る。
他人の罪を暴けば、自分の罪から目を逸らせる。その浅ましい自己防衛本能が、教室の空気を一気に攻撃的なものに変えた。
「言えよ、中村。隠し立てするなら、お前が裏切り者ってことで運営に突き出すぞ」
皮肉屋の松本悠真が、冷たい言葉で中村の逃げ道を塞ぐ。
いいぞ。もっと追い詰めろ。
俺の首の熱を冷ますために、こいつを徹底的に痛めつけてくれ。
「ち、違う! 俺じゃない! 俺にやれって言ったのは……橋本さんだ!」
中村の絶叫が、コンクリートの壁に反響した。
全員の視線が、今度は窓際で震えていた橋本彩乃へと移動する。
「……え?」
橋本は大きな瞳を見開き、信じられないものを見るような目で中村を見つめた。
そして、ポロリと。
完璧なタイミングで、その目から大粒の涙がこぼれ落ちる。
「中村くん……どうして、そんな嘘をつくの……?」
震える肩、青ざめた唇。
どこからどう見ても、身勝手な男に罪をなすりつけられた悲劇のヒロインだ。
だが、俺は知っている。あいつの机の鍵を盗み出し、中村に手渡したのは間違いなくこの女だ。
「嘘じゃない! お前があの夜、俺に……!」
「待ってよ! 彩乃がそんなことするわけないでしょ!」
親友の石井咲が烈火のごとく怒り、橋本を庇うように前に出た。
「自分が疑われたからって、女の子をスケープゴートにするなんて最低ね!」
「違うっ! 俺は本当のことを……証拠だってある! 橋本、お前のカードにも書かれてるはずだろ!」
中村が狂乱して橋本に掴みかかろうとする。
木村がそれを力任せに突き飛ばし、中村が床に無様に転がった。
醜い。
最高に醜い共食いだ。
画面の前のあんた、どうだ?
他人の秘密を暴き合い、自分だけは助かろうと必死にもがくクズどもの姿は。
これこそが、あんたたちが求めていた極上のエンターテインメントだろ?
視界の端で、いいねのカウンターが微かに動いた気がした。
だが、まだ足りない。全然足りない。
「二人ともやめるんだ! 争っている場合じゃない!」
俺は正義の味方を気取って中村と木村の間に割って入りながら、心の中で狂ったように叫ぶ。
もっとだ。
もっと俺にいいねをくれ。
ノルマをクリアして、俺がこの泥沼の主導権を完全に握るまで。
あんたの指先一つで、俺の命を救って、こいつらを地獄へ落とさせてくれ。
10
あなたにおすすめの小説
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる