この小説に「いいね」がない場合、主人公は死にます

葉山 乃愛

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第4話:焦燥の告発と、醜悪なる責任転嫁

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首の奥のチップが、ジリジリと嫌な熱を放ち始めている。


タイムリミットまで残り14時間強。
相変わらず、視界のいいねカウンターは鈍い動きしか見せない。


画面の前のあんた。
頼むから、俺が黒焦げになる前に指を動かしてくれよ。
俺の命がかかってるんだ。このままじゃマジで終わる。


だから俺は、数字を稼ぐために特大の劇薬を投下する。


「中村、大丈夫か? 何が書かれているんだ?」


俺は怯えきった中村樹の肩を抱き、ひたすらに優しい声で囁いた。
周囲のクラスメイトたちは、自分のカードの秘密を隠すのに必死で、まだ誰も他人のカードを覗き込もうとはしていない。


だからこそ、一番最初に血祭りに上げる奴が必要だ。


「み、湊……俺、違うんだ。俺はただ、言われた通りにしただけで……」


中村の顔面は蒼白で、歯の根が合わずにガチガチと鳴っている。
こいつのカードに何が書かれているか、俺は運営の事前データで知っている。
あいつの机に、毎日汚物を入れ続けていたことだ。


「言われた通り……? 誰かに命令されたのか?」


俺がわざと大きな声で聞き返すと、教室中の視線が一斉に中村へ突き刺さった。


「ひっ……!」


「おい中村。てめえ、何をやらかしたんだ?」


不良の木村拓海が、苛立ちを隠せない声で一歩前に出る。
他人の罪を暴けば、自分の罪から目を逸らせる。その浅ましい自己防衛本能が、教室の空気を一気に攻撃的なものに変えた。


「言えよ、中村。隠し立てするなら、お前が裏切り者ってことで運営に突き出すぞ」


皮肉屋の松本悠真が、冷たい言葉で中村の逃げ道を塞ぐ。
いいぞ。もっと追い詰めろ。
俺の首の熱を冷ますために、こいつを徹底的に痛めつけてくれ。


「ち、違う! 俺じゃない! 俺にやれって言ったのは……橋本さんだ!」


中村の絶叫が、コンクリートの壁に反響した。


全員の視線が、今度は窓際で震えていた橋本彩乃へと移動する。


「……え?」


橋本は大きな瞳を見開き、信じられないものを見るような目で中村を見つめた。
そして、ポロリと。
完璧なタイミングで、その目から大粒の涙がこぼれ落ちる。


「中村くん……どうして、そんな嘘をつくの……?」


震える肩、青ざめた唇。
どこからどう見ても、身勝手な男に罪をなすりつけられた悲劇のヒロインだ。
だが、俺は知っている。あいつの机の鍵を盗み出し、中村に手渡したのは間違いなくこの女だ。


「嘘じゃない! お前があの夜、俺に……!」


「待ってよ! 彩乃がそんなことするわけないでしょ!」


親友の石井咲が烈火のごとく怒り、橋本を庇うように前に出た。


「自分が疑われたからって、女の子をスケープゴートにするなんて最低ね!」


「違うっ! 俺は本当のことを……証拠だってある! 橋本、お前のカードにも書かれてるはずだろ!」


中村が狂乱して橋本に掴みかかろうとする。
木村がそれを力任せに突き飛ばし、中村が床に無様に転がった。


醜い。
最高に醜い共食いだ。


画面の前のあんた、どうだ?
他人の秘密を暴き合い、自分だけは助かろうと必死にもがくクズどもの姿は。
これこそが、あんたたちが求めていた極上のエンターテインメントだろ?


視界の端で、いいねのカウンターが微かに動いた気がした。
だが、まだ足りない。全然足りない。


「二人ともやめるんだ! 争っている場合じゃない!」


俺は正義の味方を気取って中村と木村の間に割って入りながら、心の中で狂ったように叫ぶ。


もっとだ。
もっと俺にいいねをくれ。
ノルマをクリアして、俺がこの泥沼の主導権を完全に握るまで。


あんたの指先一つで、俺の命を救って、こいつらを地獄へ落とさせてくれ。
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