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第5話:20のいいねと、吐き気を催す生贄選び
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首の奥の肉が、文字通りジリジリと焦げる音が聞こえる。
タイムリミットまで残り14時間。
現在の獲得いいね数……たったの20。
画面の前のあんた。
なあ、本当にふざけてるのか?
あと30。たった30回のタップが足りないだけで、俺の首のチップは容赦なく警告の熱を放ち、俺の意識を刈り取ろうとしている。
奥歯を噛み締めすぎて、口の中は血の味しかしない。
俺がここで脳を焼かれて死ぬのを、ポップコーンでも食いながら笑って見てるのか?
だったら、今から俺の目の前で繰り広げられる地獄を見て、それでも俺を見殺しにできるか試してやる。
「……なあ、一つ提案があるんだけど」
床に転がり、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしている中村を見下ろしながら、冷徹な頭脳派の遠藤翔太が、感情の抜け落ちた声で口を開いた。
「主催者は『誠実さに応じて水と食料を支給する』と言った。そして、俺たちのロッカーには罪を告発するカードがある。……つまり、罪を隠し持っている不誠実な人間を『裏切り者』として運営に差し出せば、俺たちの待遇は良くなるんじゃないか?」
その言葉に、教室の空気がピタリと凍りついた。
「差し出すって……遠藤、お前なに言って……」
面倒見のいい委員長を気取っていた鈴木大地が、引き攣った顔で聞き返す。
だが、遠藤は眼鏡のブリッジを押し上げながら淡々と続けた。
「30日間も閉じ込められるんだ。15人全員に行き渡る食料なんて最初から用意されていない可能性が高い。なら、数を減らすのが一番合理的だ。……すでに橋本さんを陥れようとしてボロを出した中村くんは、生贄にふさわしい」
「なっ……! ふざけんな! なんで俺なんだよ!」
中村が悲鳴を上げて後ずさる。
だが、遠藤の言葉は、飢えと恐怖に支配されたクラスメイトたちにとって、悪魔の福音だった。
「た、確かに……中村が裏切り者なら、あいつを犠牲にすれば私たちは助かるかも……」
さっきまで恐怖で泣いていた森結菜が、すがるような目で遠藤に同意する。
その言葉を皮切りに、クラスの空気が一気に「中村狩り」へと傾いた。
「おい中村、てめえのカード見せろよ! どうせお前が元凶なんだろ!」
不良の木村が中村の胸ぐらを再び掴み上げ、強引にポケットからカードを奪い取ろうとする。
「やめろ! 離せ! 俺じゃない、俺だけじゃないだろ! お前らだって自分のカード隠してるくせに!」
中村の必死の抵抗も虚しく、クラス中から冷たい、蔑むような視線が彼に突き刺さる。
誰でもいいんだ。
自分以外の誰かが生贄になって、自分の安全と食料が確保されるなら、真実なんてどうでもいい。
――あいつ(恋人)が濡れ衣を着せられて孤立したあの夏の日も、まったく同じだった。
こいつらは全員で見て見ぬふりをした。
自分に火の粉が降りかからないように、自分がいじめのターゲットにならないように、薄ら笑いを浮かべて遠巻きに眺め、時には一緒になって石を投げたんだ。
吐き気がする。
こいつらの浅ましい自己防衛本能と、腐りきった本性に。
(……許さねえ。絶対に許さねえぞ、お前ら)
首のチップが限界に近い熱を発し、視界が明滅する。
だが、俺はその激痛を怒りでねじ伏せ、床にうずくまる中村の前に両手を広げて立ち塞がった。
「やめろと言ってるだろ!!」
俺は声を荒らげ、木村を力強く突き飛ばした。
「確証もないのに、自分たちが助かりたいからって誰かを犠牲にするなんて間違ってる! そんなことしたら、主催者の思う壺じゃないか!」
俺の必死の叫びに、クラスメイトたちはバツの悪そうな顔をして視線を逸らした。
橋本彩乃だけは、俺の背中越しに中村を嘲笑うような冷たい目を向けている。
画面の前のあんた。
見てくれたか。これが、あいつを殺した連中の正体だ。
息をするように他人を蹴落とし、自分だけが助かろうとする醜悪なクズどもだ。
俺は善人の仮面を被って中村を庇った。
こいつをここで終わらせるためじゃない。30日間、全員にたっぷりと地獄を味わわせるためだ。
タイムリミットが迫っている。
首の熱で、皮膚が焦げる匂いがしてきた。
頼む。俺を助けてくれ。
こんなクズどもが生き残って、俺がここで犬死にするなんて間違ってるだろ。
この吐き気がする連中を、俺の手で一人残らず裁かせてくれ。
今すぐ、そのボタンを押して、俺に「いいね」を与えてくれ。
タイムリミットまで残り14時間。
現在の獲得いいね数……たったの20。
画面の前のあんた。
なあ、本当にふざけてるのか?
あと30。たった30回のタップが足りないだけで、俺の首のチップは容赦なく警告の熱を放ち、俺の意識を刈り取ろうとしている。
奥歯を噛み締めすぎて、口の中は血の味しかしない。
俺がここで脳を焼かれて死ぬのを、ポップコーンでも食いながら笑って見てるのか?
だったら、今から俺の目の前で繰り広げられる地獄を見て、それでも俺を見殺しにできるか試してやる。
「……なあ、一つ提案があるんだけど」
床に転がり、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしている中村を見下ろしながら、冷徹な頭脳派の遠藤翔太が、感情の抜け落ちた声で口を開いた。
「主催者は『誠実さに応じて水と食料を支給する』と言った。そして、俺たちのロッカーには罪を告発するカードがある。……つまり、罪を隠し持っている不誠実な人間を『裏切り者』として運営に差し出せば、俺たちの待遇は良くなるんじゃないか?」
その言葉に、教室の空気がピタリと凍りついた。
「差し出すって……遠藤、お前なに言って……」
面倒見のいい委員長を気取っていた鈴木大地が、引き攣った顔で聞き返す。
だが、遠藤は眼鏡のブリッジを押し上げながら淡々と続けた。
「30日間も閉じ込められるんだ。15人全員に行き渡る食料なんて最初から用意されていない可能性が高い。なら、数を減らすのが一番合理的だ。……すでに橋本さんを陥れようとしてボロを出した中村くんは、生贄にふさわしい」
「なっ……! ふざけんな! なんで俺なんだよ!」
中村が悲鳴を上げて後ずさる。
だが、遠藤の言葉は、飢えと恐怖に支配されたクラスメイトたちにとって、悪魔の福音だった。
「た、確かに……中村が裏切り者なら、あいつを犠牲にすれば私たちは助かるかも……」
さっきまで恐怖で泣いていた森結菜が、すがるような目で遠藤に同意する。
その言葉を皮切りに、クラスの空気が一気に「中村狩り」へと傾いた。
「おい中村、てめえのカード見せろよ! どうせお前が元凶なんだろ!」
不良の木村が中村の胸ぐらを再び掴み上げ、強引にポケットからカードを奪い取ろうとする。
「やめろ! 離せ! 俺じゃない、俺だけじゃないだろ! お前らだって自分のカード隠してるくせに!」
中村の必死の抵抗も虚しく、クラス中から冷たい、蔑むような視線が彼に突き刺さる。
誰でもいいんだ。
自分以外の誰かが生贄になって、自分の安全と食料が確保されるなら、真実なんてどうでもいい。
――あいつ(恋人)が濡れ衣を着せられて孤立したあの夏の日も、まったく同じだった。
こいつらは全員で見て見ぬふりをした。
自分に火の粉が降りかからないように、自分がいじめのターゲットにならないように、薄ら笑いを浮かべて遠巻きに眺め、時には一緒になって石を投げたんだ。
吐き気がする。
こいつらの浅ましい自己防衛本能と、腐りきった本性に。
(……許さねえ。絶対に許さねえぞ、お前ら)
首のチップが限界に近い熱を発し、視界が明滅する。
だが、俺はその激痛を怒りでねじ伏せ、床にうずくまる中村の前に両手を広げて立ち塞がった。
「やめろと言ってるだろ!!」
俺は声を荒らげ、木村を力強く突き飛ばした。
「確証もないのに、自分たちが助かりたいからって誰かを犠牲にするなんて間違ってる! そんなことしたら、主催者の思う壺じゃないか!」
俺の必死の叫びに、クラスメイトたちはバツの悪そうな顔をして視線を逸らした。
橋本彩乃だけは、俺の背中越しに中村を嘲笑うような冷たい目を向けている。
画面の前のあんた。
見てくれたか。これが、あいつを殺した連中の正体だ。
息をするように他人を蹴落とし、自分だけが助かろうとする醜悪なクズどもだ。
俺は善人の仮面を被って中村を庇った。
こいつをここで終わらせるためじゃない。30日間、全員にたっぷりと地獄を味わわせるためだ。
タイムリミットが迫っている。
首の熱で、皮膚が焦げる匂いがしてきた。
頼む。俺を助けてくれ。
こんなクズどもが生き残って、俺がここで犬死にするなんて間違ってるだろ。
この吐き気がする連中を、俺の手で一人残らず裁かせてくれ。
今すぐ、そのボタンを押して、俺に「いいね」を与えてくれ。
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