2 / 30
「俺の回避センスが神すぎるからヒーラーはいらない」と追放されましたが、私が0.5秒間隔で『未来予知』と『強制回避』をかけていただけです。
しおりを挟む
「トール、悪いがこのパーティーから抜けてくれ」
ダンジョンの中層、薄暗い通路で休憩をしている最中だった。
リーダーであり『剣聖』の異名を持つガイルが、水を飲むついでと言わんばかりに軽い調子で告げてきた。
「……理由を聞かせてもらっても?」
「見ての通り、俺が強すぎるからだ。最近、俺に攻撃を当てられる魔物が一匹もいないだろ? 俺の『神回避』が完成しちまったんだよ。だから、回復役のお前がいても金の無駄なんだ」
ガイルは自慢の愛剣を指で弾き、勝ち誇った笑みを浮かべた。
後ろに控える魔導師の女も、同調するように頷く。
「そうねぇ。トール君ってば、戦闘中はずっと後ろでボケーっとしてるだけじゃない。ガイルが華麗に敵の攻撃を避けてるのに、貴方は何もしてないわよね」
私は呆れて、開いた口が塞がらなかった。
彼らは本気でそう思っているのか。
「ガイル。君が攻撃を避けられているのは、君の反射神経がいいからじゃない。私が『未来予知』の魔法で敵の軌道を読み、君の体に『強制回避』の付与魔法をかけ続けているからだ」
「はっ! 出た出た、お前のその妄想癖。俺の才能を認めたくないからって、自分の手柄にするのはやめろよな」
ガイルは腹を抱えて笑った。
どうやら、説明するだけ無駄なようだ。
このパーティーは、私の『影の支援』に甘えすぎて、自分たちの本当の実力を見誤ってしまったらしい。
「分かりました。では、パーティーを抜けます。手切れ金もいりません」
「おう、物分かりが良くて助かるぜ。荷物置いてさっさと消えてくれ」
「ええ。ですがその前に、私がかけ続けていた『常時支援魔法』も全て解除していきますね」
私は静かに杖を振った。
パリン、というガラスが割れるような小さな音がして、ガイルの身体を包んでいた不可視の魔力膜が消滅した。
「あん? なんか体が重くなった気がするが……まあいい。せいぜい野垂れ死なないように頑張れよ、元・仲間のトール君?」
ガイルが嘲笑いながら手を振った、その時だった。
ペチッ。
通路の奥から跳ねてきた最弱モンスター、スライムが、ガイルの足元に体当たりをした。
「うおっ!? な、なんだ!?」
ガイルは避けようとした。
普段なら、私の魔法が自動的に彼の体を動かし、最小限の動きで回避できていたはずだ。
だが、今の彼はただの『素早いだけの人』だ。
ボゴッ!
「ぎゃっ!!」
避けきれなかったガイルの脛に、スライムの体当たりが直撃した。
嫌な音が響き、ガイルはその場に崩れ落ちた。
「い、ってぇぇぇ!! 足が! 足が折れたぁぁ!!」
「えっ、嘘でしょ!? ガイルがスライムごときに!?」
魔導師が悲鳴を上げる。
ガイルは涙目で脂汗を流し、自分の足を抱えて転げ回っている。
「な、なんでだ!? 俺の神回避は!? なんで避けられないんだよぉぉ!!」
「だから言ったでしょう。それが君の『素の実力』です。スライムの予備動作すら見切れないなんて、剣聖の名が泣きますね」
私はリュックを背負い直した。
「い、癒せ! トール、回復魔法だ! 痛い、痛いぃぃ!」
「お断りです。私はもうパーティーメンバーではありませんから。ああ、そうだ」
私は出口に向かいながら、親指で通路の奥を指した。
「さっきの予知で見えましたが、あと30秒でオーガの群れが来ますよ。スライムで骨折する今の君たちが、無事に逃げ切れるといいですね」
「は、はぁ!? オーガ!? 待って、トール君! 置いていかないで!」
「ふざけんな! 戻れ! 俺を守れよぉぉぉ!!」
無様な悲鳴が響き渡る中、私は転移スクロールを取り出した。
彼らの相手をするのはここまでだ。
私は光に包まれながら、最後に彼らに向かってにっこりと微笑んでみせた。
「自分の才能を過信した代償、たっぷり支払ってくださいね」
視界が白く染まる直前、絶望に染まった彼らの顔が見えた気がした。
ダンジョンの中層、薄暗い通路で休憩をしている最中だった。
リーダーであり『剣聖』の異名を持つガイルが、水を飲むついでと言わんばかりに軽い調子で告げてきた。
「……理由を聞かせてもらっても?」
「見ての通り、俺が強すぎるからだ。最近、俺に攻撃を当てられる魔物が一匹もいないだろ? 俺の『神回避』が完成しちまったんだよ。だから、回復役のお前がいても金の無駄なんだ」
ガイルは自慢の愛剣を指で弾き、勝ち誇った笑みを浮かべた。
後ろに控える魔導師の女も、同調するように頷く。
「そうねぇ。トール君ってば、戦闘中はずっと後ろでボケーっとしてるだけじゃない。ガイルが華麗に敵の攻撃を避けてるのに、貴方は何もしてないわよね」
私は呆れて、開いた口が塞がらなかった。
彼らは本気でそう思っているのか。
「ガイル。君が攻撃を避けられているのは、君の反射神経がいいからじゃない。私が『未来予知』の魔法で敵の軌道を読み、君の体に『強制回避』の付与魔法をかけ続けているからだ」
「はっ! 出た出た、お前のその妄想癖。俺の才能を認めたくないからって、自分の手柄にするのはやめろよな」
ガイルは腹を抱えて笑った。
どうやら、説明するだけ無駄なようだ。
このパーティーは、私の『影の支援』に甘えすぎて、自分たちの本当の実力を見誤ってしまったらしい。
「分かりました。では、パーティーを抜けます。手切れ金もいりません」
「おう、物分かりが良くて助かるぜ。荷物置いてさっさと消えてくれ」
「ええ。ですがその前に、私がかけ続けていた『常時支援魔法』も全て解除していきますね」
私は静かに杖を振った。
パリン、というガラスが割れるような小さな音がして、ガイルの身体を包んでいた不可視の魔力膜が消滅した。
「あん? なんか体が重くなった気がするが……まあいい。せいぜい野垂れ死なないように頑張れよ、元・仲間のトール君?」
ガイルが嘲笑いながら手を振った、その時だった。
ペチッ。
通路の奥から跳ねてきた最弱モンスター、スライムが、ガイルの足元に体当たりをした。
「うおっ!? な、なんだ!?」
ガイルは避けようとした。
普段なら、私の魔法が自動的に彼の体を動かし、最小限の動きで回避できていたはずだ。
だが、今の彼はただの『素早いだけの人』だ。
ボゴッ!
「ぎゃっ!!」
避けきれなかったガイルの脛に、スライムの体当たりが直撃した。
嫌な音が響き、ガイルはその場に崩れ落ちた。
「い、ってぇぇぇ!! 足が! 足が折れたぁぁ!!」
「えっ、嘘でしょ!? ガイルがスライムごときに!?」
魔導師が悲鳴を上げる。
ガイルは涙目で脂汗を流し、自分の足を抱えて転げ回っている。
「な、なんでだ!? 俺の神回避は!? なんで避けられないんだよぉぉ!!」
「だから言ったでしょう。それが君の『素の実力』です。スライムの予備動作すら見切れないなんて、剣聖の名が泣きますね」
私はリュックを背負い直した。
「い、癒せ! トール、回復魔法だ! 痛い、痛いぃぃ!」
「お断りです。私はもうパーティーメンバーではありませんから。ああ、そうだ」
私は出口に向かいながら、親指で通路の奥を指した。
「さっきの予知で見えましたが、あと30秒でオーガの群れが来ますよ。スライムで骨折する今の君たちが、無事に逃げ切れるといいですね」
「は、はぁ!? オーガ!? 待って、トール君! 置いていかないで!」
「ふざけんな! 戻れ! 俺を守れよぉぉぉ!!」
無様な悲鳴が響き渡る中、私は転移スクロールを取り出した。
彼らの相手をするのはここまでだ。
私は光に包まれながら、最後に彼らに向かってにっこりと微笑んでみせた。
「自分の才能を過信した代償、たっぷり支払ってくださいね」
視界が白く染まる直前、絶望に染まった彼らの顔が見えた気がした。
11
あなたにおすすめの小説
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
今更家族だなんて言われても
広川朔二
ライト文芸
父は母に皿を投げつけ、母は俺を邪魔者扱いし、祖父母は見て見ぬふりをした。
家族に愛された記憶など一つもない。
高校卒業と同時に家を出て、ようやく手に入れた静かな生活。
しかしある日、母の訃報と共に現れたのは、かつて俺を捨てた“父”だった――。
金を無心され、拒絶し、それでも迫ってくる血縁という鎖。
だが俺は、もう縛られない。
「家族を捨てたのは、そっちだろ」
穏やかな怒りが胸に満ちる、爽快で静かな断絶の物語。
二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした
セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。
牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。
裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。
愚者による愚行と愚策の結果……《完結》
アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。
それが転落の始まり……ではなかった。
本当の愚者は誰だったのか。
誰を相手にしていたのか。
後悔は……してもし足りない。
全13話
☆他社でも公開します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる