【短編集】読む精神安定剤。理不尽な彼らが「3分」で地獄に落ちる、極上の「ざまぁ」詰め合わせ

葉山 乃愛

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「お前の脚本は地味だ」とクビになったが、俺が『伏線』を全回収していただけだ。未回収の謎が300個あるけど、最終回どうする?

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「先生、今回の原稿も地味ですねぇ。書き直しで」

テレビ局の会議室。
高視聴率ミステリードラマ『迷宮の館』のプロデューサーが、僕の書いた脚本をゴミ箱に放り込んだ。

「……地味、とは?」

「もっとこう、派手な殺人とか爆発とか入れてくださいよ! 視聴者は刺激を求めてるんです! 先生の書く『会話劇』とか『心理描写』とか、タルいんですよね」

プロデューサーは葉巻をふかしながら、隣に座っている若造を指差した。

「だから、最終回に向けての脚本は、こちらの新進気鋭のクリエイター、KEN君にお願いすることにしました。彼はSNSでバズる展開を作る天才なんですよ」

KENと呼ばれた若者が、チャラついた笑顔で挨拶する。
「お疲れっすー。おじさんの脚本、古臭いんで。俺がド派手に『考察ブーム』起こしちゃうんで、あとは隠居しててくださーい」

僕はため息をついた。
このドラマは、第1話から散りばめた300個以上の伏線が複雑に絡み合っている。
僕の地味な会話劇は、その全てを論理的に回収するための必須ピースだ。

「プロデューサー。今までの伏線、誰が回収するんですか? 『赤い部屋の謎』も『執事の過去』も、まだ何も明かされていませんが」

「あー、それくらいKEN君がノリでなんとかなるでしょ? 勢いですよ、勢い! もういいから帰って!」

僕はカバンを持って立ち上がった。
「分かりました。僕の『構成ノート』は持ち帰ります。……最終回、矛盾がないように頑張ってください」

僕は現場を去った。

そして1ヶ月後、最終回の放送日。
僕は自宅でツイッター(X)を開きながらドラマを見た。

画面の中では、脈絡もなく宇宙人が攻めてきたり、死んだはずのキャラが生き返ったり、夢オチになったりと、支離滅裂な展開が続いていた。
伏線? ひとつも回収されていない。

SNSは大炎上していた。

《は? 意味不明》
《あの伏線なんだったの? 投げっぱなし?》
《脚本家変わった? クソドラマ確定》
《時間返せ。金輪際この局のドラマ見ない》

放送終了直後、僕のスマホが鳴った。プロデューサーだ。

「もしもし?」

『せ、先生ぇぇ! 助けて! 炎上してる! DVD化できない! 今からスペシャル版で書き直してぇぇ!!』

「無理ですよ。あそこまで破壊されたら、神様でも修復不可能です」

『そこをなんとか! KENが逃げちゃって! ギャラ5倍出すから!』

「お断りです。僕、裏番組で始まった新ドラマの脚本で忙しいので。ちなみにそっちは、今トレンド世界1位ですよ」

僕は電話を切り、電源を落とした。
物語の結末を軽んじた人間に、ハッピーエンドは訪れない。
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