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第28話 天使
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北米大陸、ネバダ州。
かつてエリア51と呼ばれていた砂漠の極秘施設上空に、巨大な影が落ちた。
「……レーダーに反応なし! 目視では確認できるのに、電子機器が認識しません!」
「馬鹿な! 直径50キロの浮遊都市だぞ!? 雲と見間違えるわけがあるか!」
地下司令室はパニックに陥っていた。
評議会の残党と、米軍のトップたちがモニターを仰ぎ見ている。
雲海を突き破り、黄金に輝くドーム――『エデン』が、悠然と降下してくる。それは、人類という種の限界を突きつける、圧倒的な質量の暴力だった。
「迎撃だ! 全ミサイル発射! 『エデン』を墜とせ!」
司令官の怒号と共に、地対空ミサイルの雨が空へ逆流する。
だが。
『……うるさいな、雑魚どもが』
上空から、冷徹な少年の声が響き渡った。スピーカーを通したものではない。脳に直接響くテレパシーだ。
次の瞬間、数千発のミサイルが空中でピタリと静止した。
「な……ッ!?」
『花火にもなりやしない。……還れ』
シオンの意思一つで、ミサイル群は一斉に反転。発射地点である基地へ向かって、猛烈な速度で落下を始めた。
「ひ、ひぃぃぃッ!!」
ズガガガガガッ!!
基地周辺が爆炎に包まれる。だが、地下要塞の中枢だけは無傷だった。俺たちが用があるのは、そこに眠る「メインディッシュ」だけだからだ。
「相変わらず派手にやるな、シオン」
『エデン』の展望デッキで、俺は爆発の余韻を楽しんでいた。
隣にはイヴ。そして、空中に浮遊しながら腕組みをする息子シオン。
「挨拶代わりですよ、父上。……さあ、出てきますよ。奴らの切り札が」
シオンの視線の先。
燃え盛る基地の大地が割れ、地下深くから眩い光の柱が立ち昇った。
キィィィィィーン……!
耳をつんざくような高周波音と共に、光の中から一つの影が舞い上がった。
それは、背中に6枚の光の翼を持つ、美しい少女の姿をしていた。
だが、その肌は陶器のように白く無機質で、瞳には感情の色がない。全身から放たれるのは、生物的なフェロモンではなく、全てを浄化するような冷たい「聖なる波動」だった。
「……あれが、『神殺し』か」
俺は目を細めた。
古代遺跡から発掘された未知のテクノロジーと、評議会のバイオ技術の結晶。
人工天使『セラフィム』。
「解析完了。……父上、あいつは厄介です」
シオンが珍しく真剣な表情を見せた。
「あいつの放つ光は『反フェロモン粒子』です。僕や父上のような生物エネルギーを中和し、無効化する性質を持っています。……つまり、僕たちの『支配』が効かない天敵です」
「ほう。……俺の毒が効かない女か」
俺はニヤリと笑った。
支配できない? 効かない?
上等だ。最初から従順な女なんて、抱いていても張り合いがない。
抵抗する奴をねじ伏せ、無理やり俺の色に染め変える。それが「征服」ってもんだろ。
「イヴ、シオン。手出しは無用だ」
俺はデッキの手すりに足をかけた。
「あの『天使様』には、俺が直々に大人の教育を施してやる」
俺は高度数千メートルから、重力に任せてダイブした。
風圧が顔を叩く。眼下には、無表情でこちらを見上げるセラフィム。
『ターゲット確認。個体名:魔王(ルシファー)。……浄化を開始します』
セラフィムが無機質な声を上げ、光の翼を広げた。
カッ!!
極太のレーザーが俺を直撃する。
熱い。皮膚が焼ける感覚。確かに、今までの敵とは火力が違う。イヴの再生能力を阻害するような、嫌な痛みだ。
「……へっ、効くじゃねえか!」
俺は空中で身を捻り、光の奔流を強引に突破した。
服が燃え尽き、半裸の状態になる。だが、俺の肉体は傷つくそばから再生し、さらに強固な装甲へと進化していく。
「だがな、人形! 痛みは俺にとって『スパイス』なんだよ!」
俺はセラフィムの目の前に着地……いや、空中で激突した。
ドガァァン!!
俺の拳と、彼女が展開した光の障壁(バリア)が衝突し、衝撃波が空を裂く。
『理解不能。エネルギー値、減少せず。……むしろ上昇中』
セラフィムの瞳が高速で明滅する。
「お前のその『清浄な光』……気に入らねえな」
俺は障壁を素手でこじ開け、彼女の細い首を鷲掴みにした。
「俺はドブ川から這い上がってきた男だ。……消毒されるのは御免だぜ!」
『排除……排除……ッ!』
セラフィムが暴れる。彼女の全身から高圧電流のような光が放出され、俺の腕を焼く。
普通なら炭化して終わるだろう。
だが、俺は離さない。それどころか、距離を詰め、彼女の無機質な唇を強引に奪った。
「ん……ッ!?」
セラフィムの動きが止まった。
口移し。
俺は彼女の体内に、唾液と共に特濃のフェロモンを――いや、俺の「魂」そのものをねじ込んだ。
反フェロモン粒子? 関係ねえ。
中和が追いつかないほどの圧倒的な質量で、上書きすればいいだけの話だ。
「味わえ。……これが『生命(ナマ)』の味だッ!!」
ドクンッ!!
俺のエネルギーが彼女の回路を侵食する。
聖なる光が、毒々しい赤黒い色へと濁っていく。
『エラー……システム……論理矛盾……。快感回路……生成中……』
「いい声で鳴くじゃねえか。……天使が堕ちる瞬間を見せてみろ」
俺は空中で彼女を抱きすくめ、そのまま地上へ向かって急降下した。
流星のような速度で、二人もろとも大地に激突する。
ズガァァァァァァン!!
巨大なクレーターの中心。
砂煙が晴れると、そこには片翼をもがれ、頬を紅潮させて俺の下で震える元・天使の姿があった。
「……あ……、ぁ……ご主人、さま……」
彼女の瞳から無機質な光は消え、代わりに熱っぽいハートの輝きが宿っていた。
俺は立ち上がり、空の『エデン』に向かって拳を突き上げた。
どんな兵器だろうが、どんな神だろうが、俺の前ではただの「雌」だ。
「次だ! ……次はどいつが俺を楽しませてくれる!?」
俺の咆哮が、北米大陸に轟いた。
世界征服は、まだ始まったばかりだ。
かつてエリア51と呼ばれていた砂漠の極秘施設上空に、巨大な影が落ちた。
「……レーダーに反応なし! 目視では確認できるのに、電子機器が認識しません!」
「馬鹿な! 直径50キロの浮遊都市だぞ!? 雲と見間違えるわけがあるか!」
地下司令室はパニックに陥っていた。
評議会の残党と、米軍のトップたちがモニターを仰ぎ見ている。
雲海を突き破り、黄金に輝くドーム――『エデン』が、悠然と降下してくる。それは、人類という種の限界を突きつける、圧倒的な質量の暴力だった。
「迎撃だ! 全ミサイル発射! 『エデン』を墜とせ!」
司令官の怒号と共に、地対空ミサイルの雨が空へ逆流する。
だが。
『……うるさいな、雑魚どもが』
上空から、冷徹な少年の声が響き渡った。スピーカーを通したものではない。脳に直接響くテレパシーだ。
次の瞬間、数千発のミサイルが空中でピタリと静止した。
「な……ッ!?」
『花火にもなりやしない。……還れ』
シオンの意思一つで、ミサイル群は一斉に反転。発射地点である基地へ向かって、猛烈な速度で落下を始めた。
「ひ、ひぃぃぃッ!!」
ズガガガガガッ!!
基地周辺が爆炎に包まれる。だが、地下要塞の中枢だけは無傷だった。俺たちが用があるのは、そこに眠る「メインディッシュ」だけだからだ。
「相変わらず派手にやるな、シオン」
『エデン』の展望デッキで、俺は爆発の余韻を楽しんでいた。
隣にはイヴ。そして、空中に浮遊しながら腕組みをする息子シオン。
「挨拶代わりですよ、父上。……さあ、出てきますよ。奴らの切り札が」
シオンの視線の先。
燃え盛る基地の大地が割れ、地下深くから眩い光の柱が立ち昇った。
キィィィィィーン……!
耳をつんざくような高周波音と共に、光の中から一つの影が舞い上がった。
それは、背中に6枚の光の翼を持つ、美しい少女の姿をしていた。
だが、その肌は陶器のように白く無機質で、瞳には感情の色がない。全身から放たれるのは、生物的なフェロモンではなく、全てを浄化するような冷たい「聖なる波動」だった。
「……あれが、『神殺し』か」
俺は目を細めた。
古代遺跡から発掘された未知のテクノロジーと、評議会のバイオ技術の結晶。
人工天使『セラフィム』。
「解析完了。……父上、あいつは厄介です」
シオンが珍しく真剣な表情を見せた。
「あいつの放つ光は『反フェロモン粒子』です。僕や父上のような生物エネルギーを中和し、無効化する性質を持っています。……つまり、僕たちの『支配』が効かない天敵です」
「ほう。……俺の毒が効かない女か」
俺はニヤリと笑った。
支配できない? 効かない?
上等だ。最初から従順な女なんて、抱いていても張り合いがない。
抵抗する奴をねじ伏せ、無理やり俺の色に染め変える。それが「征服」ってもんだろ。
「イヴ、シオン。手出しは無用だ」
俺はデッキの手すりに足をかけた。
「あの『天使様』には、俺が直々に大人の教育を施してやる」
俺は高度数千メートルから、重力に任せてダイブした。
風圧が顔を叩く。眼下には、無表情でこちらを見上げるセラフィム。
『ターゲット確認。個体名:魔王(ルシファー)。……浄化を開始します』
セラフィムが無機質な声を上げ、光の翼を広げた。
カッ!!
極太のレーザーが俺を直撃する。
熱い。皮膚が焼ける感覚。確かに、今までの敵とは火力が違う。イヴの再生能力を阻害するような、嫌な痛みだ。
「……へっ、効くじゃねえか!」
俺は空中で身を捻り、光の奔流を強引に突破した。
服が燃え尽き、半裸の状態になる。だが、俺の肉体は傷つくそばから再生し、さらに強固な装甲へと進化していく。
「だがな、人形! 痛みは俺にとって『スパイス』なんだよ!」
俺はセラフィムの目の前に着地……いや、空中で激突した。
ドガァァン!!
俺の拳と、彼女が展開した光の障壁(バリア)が衝突し、衝撃波が空を裂く。
『理解不能。エネルギー値、減少せず。……むしろ上昇中』
セラフィムの瞳が高速で明滅する。
「お前のその『清浄な光』……気に入らねえな」
俺は障壁を素手でこじ開け、彼女の細い首を鷲掴みにした。
「俺はドブ川から這い上がってきた男だ。……消毒されるのは御免だぜ!」
『排除……排除……ッ!』
セラフィムが暴れる。彼女の全身から高圧電流のような光が放出され、俺の腕を焼く。
普通なら炭化して終わるだろう。
だが、俺は離さない。それどころか、距離を詰め、彼女の無機質な唇を強引に奪った。
「ん……ッ!?」
セラフィムの動きが止まった。
口移し。
俺は彼女の体内に、唾液と共に特濃のフェロモンを――いや、俺の「魂」そのものをねじ込んだ。
反フェロモン粒子? 関係ねえ。
中和が追いつかないほどの圧倒的な質量で、上書きすればいいだけの話だ。
「味わえ。……これが『生命(ナマ)』の味だッ!!」
ドクンッ!!
俺のエネルギーが彼女の回路を侵食する。
聖なる光が、毒々しい赤黒い色へと濁っていく。
『エラー……システム……論理矛盾……。快感回路……生成中……』
「いい声で鳴くじゃねえか。……天使が堕ちる瞬間を見せてみろ」
俺は空中で彼女を抱きすくめ、そのまま地上へ向かって急降下した。
流星のような速度で、二人もろとも大地に激突する。
ズガァァァァァァン!!
巨大なクレーターの中心。
砂煙が晴れると、そこには片翼をもがれ、頬を紅潮させて俺の下で震える元・天使の姿があった。
「……あ……、ぁ……ご主人、さま……」
彼女の瞳から無機質な光は消え、代わりに熱っぽいハートの輝きが宿っていた。
俺は立ち上がり、空の『エデン』に向かって拳を突き上げた。
どんな兵器だろうが、どんな神だろうが、俺の前ではただの「雌」だ。
「次だ! ……次はどいつが俺を楽しませてくれる!?」
俺の咆哮が、北米大陸に轟いた。
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