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第27話 楽園
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あれから、3年の月日が流れた。
かつて奥多摩と呼ばれていた山岳地帯は、今や地図から消滅し、世界中の政府が恐れる不可侵領域――通称『エデン』となっていた。
直径50キロに及ぶ巨大な光のドーム。その内部は、常春の気候に保たれ、見たこともない植物が繁茂し、黄金の宮殿がそびえ立つ、まさに地上の楽園だ。
その宮殿の最上階。
俺、俊弘は、眼下に広がる領土を見下ろしながら、極上のワインをあおっていた。
「……退屈だ」
俺がつぶやくと、背後から甘い香りが漂い、二つの柔らかな感触が背中に押し付けられた。
「あら、贅沢な悩みね。世界中が貴方にひれ伏しているというのに」
イヴだ。
3年経ってもその美貌は衰えるどころか、女神としての威厳と、母としての妖艶さを増している。
彼女は俺の首に腕を回し、耳元で囁いた。
「それとも、私や他の女たちじゃ、もう満足できない?」
「まさか。……ただ、平和すぎて体がなまっちまいそうだ。パチンコも、当たりっぱなしじゃ飽きるだろ?」
俺は苦笑して、イヴの腰を引き寄せた。
この3年間、俺たちは『エデン』に引き籠もり、ひたすら愛し合い、力を蓄えてきた。
評議会は何度も軍隊を送り込んできたが、俺が出る幕すらなかった。なぜなら――
「父上、母上。お楽しみのところ失礼します」
重厚な扉が開き、一人の少年が入ってきた。
透き通るような銀髪に、深淵を宿した黒い瞳。整った顔立ちは冷徹で、既に完成された王者の風格を漂わせている。
彼の名は**シオン**。
俺とイヴの息子だ。まだ3歳だが、その外見と知能は10代半ばの少年にまで急成長していた。
「シオンか。どうした、浮かない顔をして」
「『害虫』の駆除について報告に来ました。……国連連合軍の第7艦隊が、太平洋側からミサイル攻撃を仕掛けてきたので、消滅させておきました」
シオンは退屈そうに指を鳴らした。
それだけで、空中にホログラム映像が浮かび上がる。
映像の中では、無敵を誇る空母打撃群が、見えない重力波によって一瞬でペチャンコに潰され、海に沈んでいく光景が映し出されていた。
「……またワンパンかよ。手加減しろって言っただろ」
「これでも指先一つしか使っていませんよ。……脆すぎます、旧人類は」
シオンは溜息をつき、俺の足元に跪いていた玲子に視線をやった。
玲子は今や『エデン』の筆頭侍女として、数百人のメイド部隊を統率している。
「玲子、茶を。……父上の機嫌が悪い」
「は、はいっ! 若様!」
玲子が慌てて最高級の紅茶を淹れる。
シオンは俺の血を引いているせいか、女の扱いが妙に上手い。そしてイヴの血のおかげで、生まれた時から超能力(サイコキネシス)と超知能を持っていた。
まさにチートの結晶だ。
「父上。……実は、面白い情報があります」
シオンが紅茶を啜りながら、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「評議会の残党が、世界中の科学者を集めて、何か『対抗策』を作ったようです。……なんでも、古代の遺跡から発掘した『神殺しの兵器』だとか」
「神殺し、ねえ……」
俺の目が輝いた。
久しぶりに、アドレナリンが血管を駆け巡る感覚。
ただの虐殺には飽きていたところだ。
「マリアの分析だと、その兵器のエネルギー反応は、僕や父上に匹敵するそうです。……場所は、北米大陸の地下要塞」
シオンは俺を見上げ、ニヤリと笑った。
「どうします? 僕が遠隔で潰しましょうか? それとも……」
「決まってんだろ」
俺はグラスを置き、立ち上がった。
全身の筋肉が、喜びで唸りを上げる。
「家族旅行といこうぜ。……その『神殺し』とやらが、俺たちの確変を止められるか、試しに行くんだ」
イヴが嬉しそうに微笑み、俺の腕に絡みつく。
「素敵よ、あなた。……久しぶりに、外の世界を蹂躙しましょう」
「父上の『教育』が見られるわけですね。楽しみです」
俺たち最強の家族が動く。
それは、世界にとっての終焉であり、新たな神話の始まりだった。
「準備しろ! これより北米へ侵攻する! ……俺たちの国盗り、第二ラウンドの開始だ!!」
俺の号令と共に、『エデン』全体が低く唸りを上げ、要塞都市そのものが浮上を開始した。
引きこもり生活は終わりだ。
世界よ、震えて眠れ。魔王のお通りだ。
かつて奥多摩と呼ばれていた山岳地帯は、今や地図から消滅し、世界中の政府が恐れる不可侵領域――通称『エデン』となっていた。
直径50キロに及ぶ巨大な光のドーム。その内部は、常春の気候に保たれ、見たこともない植物が繁茂し、黄金の宮殿がそびえ立つ、まさに地上の楽園だ。
その宮殿の最上階。
俺、俊弘は、眼下に広がる領土を見下ろしながら、極上のワインをあおっていた。
「……退屈だ」
俺がつぶやくと、背後から甘い香りが漂い、二つの柔らかな感触が背中に押し付けられた。
「あら、贅沢な悩みね。世界中が貴方にひれ伏しているというのに」
イヴだ。
3年経ってもその美貌は衰えるどころか、女神としての威厳と、母としての妖艶さを増している。
彼女は俺の首に腕を回し、耳元で囁いた。
「それとも、私や他の女たちじゃ、もう満足できない?」
「まさか。……ただ、平和すぎて体がなまっちまいそうだ。パチンコも、当たりっぱなしじゃ飽きるだろ?」
俺は苦笑して、イヴの腰を引き寄せた。
この3年間、俺たちは『エデン』に引き籠もり、ひたすら愛し合い、力を蓄えてきた。
評議会は何度も軍隊を送り込んできたが、俺が出る幕すらなかった。なぜなら――
「父上、母上。お楽しみのところ失礼します」
重厚な扉が開き、一人の少年が入ってきた。
透き通るような銀髪に、深淵を宿した黒い瞳。整った顔立ちは冷徹で、既に完成された王者の風格を漂わせている。
彼の名は**シオン**。
俺とイヴの息子だ。まだ3歳だが、その外見と知能は10代半ばの少年にまで急成長していた。
「シオンか。どうした、浮かない顔をして」
「『害虫』の駆除について報告に来ました。……国連連合軍の第7艦隊が、太平洋側からミサイル攻撃を仕掛けてきたので、消滅させておきました」
シオンは退屈そうに指を鳴らした。
それだけで、空中にホログラム映像が浮かび上がる。
映像の中では、無敵を誇る空母打撃群が、見えない重力波によって一瞬でペチャンコに潰され、海に沈んでいく光景が映し出されていた。
「……またワンパンかよ。手加減しろって言っただろ」
「これでも指先一つしか使っていませんよ。……脆すぎます、旧人類は」
シオンは溜息をつき、俺の足元に跪いていた玲子に視線をやった。
玲子は今や『エデン』の筆頭侍女として、数百人のメイド部隊を統率している。
「玲子、茶を。……父上の機嫌が悪い」
「は、はいっ! 若様!」
玲子が慌てて最高級の紅茶を淹れる。
シオンは俺の血を引いているせいか、女の扱いが妙に上手い。そしてイヴの血のおかげで、生まれた時から超能力(サイコキネシス)と超知能を持っていた。
まさにチートの結晶だ。
「父上。……実は、面白い情報があります」
シオンが紅茶を啜りながら、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「評議会の残党が、世界中の科学者を集めて、何か『対抗策』を作ったようです。……なんでも、古代の遺跡から発掘した『神殺しの兵器』だとか」
「神殺し、ねえ……」
俺の目が輝いた。
久しぶりに、アドレナリンが血管を駆け巡る感覚。
ただの虐殺には飽きていたところだ。
「マリアの分析だと、その兵器のエネルギー反応は、僕や父上に匹敵するそうです。……場所は、北米大陸の地下要塞」
シオンは俺を見上げ、ニヤリと笑った。
「どうします? 僕が遠隔で潰しましょうか? それとも……」
「決まってんだろ」
俺はグラスを置き、立ち上がった。
全身の筋肉が、喜びで唸りを上げる。
「家族旅行といこうぜ。……その『神殺し』とやらが、俺たちの確変を止められるか、試しに行くんだ」
イヴが嬉しそうに微笑み、俺の腕に絡みつく。
「素敵よ、あなた。……久しぶりに、外の世界を蹂躙しましょう」
「父上の『教育』が見られるわけですね。楽しみです」
俺たち最強の家族が動く。
それは、世界にとっての終焉であり、新たな神話の始まりだった。
「準備しろ! これより北米へ侵攻する! ……俺たちの国盗り、第二ラウンドの開始だ!!」
俺の号令と共に、『エデン』全体が低く唸りを上げ、要塞都市そのものが浮上を開始した。
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