日本でモブだった俺、レベルの低すぎる異世界では「顔面国宝」兼「全知の賢者」らしい

葉山 乃愛

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第7話 暇つぶしに「紙飛行機」を折ったら、伝説の飛竜(ワイバーン)召喚だと騒ぎになりました

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「箸」での食事騒動から数日。
俺の周囲は、相変わらずカオスだった。

「アニキ! 今日のカバン持ちは俺がやります!」
「いいえ、私が持つわ! 拓海くんの汗が染み込んだ持ち手は私が握るの!」

剛田と陽菜が、俺のスクールバッグを巡って争っている。
平和だ。いや、うるさい。

昼休み、俺たちは校舎の屋上に来ていた。
この世界の学校の屋上は、なぜか立ち入り自由だ。フェンスが低いのが気になるが、誰も落ちないのだろうか。

「見てくれアニキ! 俺の遠投!」

剛田が野球ボールほどの石ころを拾い、力任せに投げた。
「どりゃぁぁぁ!!」

ブンッ! という音と共に放たれた石は……重力に正直に従い、数メートル先で急降下して地面に落ちた。

「はぁ、はぁ……。どうですかアニキ! 今の放物線!」

「うん、まあ、ナイス落下」

「くぅ~! さすがアニキ、厳しいぜ!」

この世界には「空気抵抗」や「揚力」を計算して物を投げる技術がないらしい。
ただ力任せに投げるだけ。だから、鳥以外のものが空を飛ぶなんてあり得ないと思われている。

「ねぇ拓海くん、暇だし何か面白いことして?」

陽菜が上目遣いでねだってくる。
面白いこと、と言われてもな。
俺はポケットに入っていた、昨日のテストのプリント(裏紙)を取り出した。

「じゃあ、これでも飛ばすか」

「え? 紙?」

剛田がキョトンとする。
「アニキ、紙なんて軽いもの、投げてもヒラヒラ落ちるだけですよ?」

「普通はな。でも、形を変えれば飛ぶんだよ」

俺はプリントを長方形に切り取り、折り始めた。
真ん中で折り目をつけ、先端を鋭く折り込む。翼を広げ、バランスを調整する。
小学生の頃、誰よりも長く飛ばしたくて研究した『へそ飛行機』だ。

ササッ、と数十秒で完成。

「な、なんだその形状は……!?」

剛田が目を見開く。

「鋭利な先端……そして左右に広がる翼……。まるで獲物を狙う猛禽類……」

「ただの紙飛行機だよ。いくぞ」

俺は屋上のフェンス際(安全地帯)に立ち、風の流れを読んだ。
ちょうどいい上昇気流が来ている。

俺は手首のスナップを利かせて、スッ、と紙飛行機を押し出した。

「いけっ」

俺の手を離れた紙飛行機は、ふわりと風に乗った。
落ちない。
それどころか、風を受けてグングンと高度を上げていく。

「なっ……!?」

陽菜と剛田の声が重なった。

紙飛行機は屋上のさらに上空へ舞い上がり、まるで生き物のように優雅に旋回し始めた。
太陽の光を浴びて、白い紙がキラキラと輝く。

「と、飛んでる……! 羽ばたいてもいないのに!?」
「魔法陣も描いてないのに、どうして落ちないんだ!?」

剛田が空を見上げて絶叫する。

「まさか……アニキは『風』と契約しているのか!? あの紙切れに命を吹き込んだのか!?」

「きれい……」

陽菜はポカンと口を開けて、空を舞う紙飛行機を目で追っている。

「白い竜……。拓海くんが、伝説の白竜(ワイバーン)を召喚したわ……」

「いや、紙だって」

紙飛行機はそのまま風に乗って、校庭の方へと滑空していった。
その滞空時間は、優に一分を超えている。

「おい見ろ! 空に何かいるぞ!」
「白い鳥か!? いや、羽ばたいてない!」
「UFOだ! 未確認飛行物体だ!!」

校庭にいた生徒たちが騒ぎ出し、指を差して逃げ惑い始めた。
たかがプリント一枚で、学園中が大パニックだ。

「すげぇ……すげぇよアニキ!」

剛田が涙目で俺に抱きついてきた。

「重力すらも支配するなんて! 俺、アニキの背中に翼が見えます! 俺も飛びたいっす! 俺を折ってください!!」

「人間は折れないから諦めろ」

「拓海くん……!」

陽菜が俺のシャツの裾を掴み、熱っぽい吐息を漏らす。

「私……私、あの紙飛行機になりたい。拓海くんの指で折られて、拓海くんの手で空に放り出されたい……」

「陽菜ちゃん、性癖が歪み始めてるよ」

結局、紙飛行機は校長先生の盆栽の上に不時着し、「神からの手紙」として額縁に入れて飾られることになったらしい。
暇つぶしに紙を折っただけで、俺はまた一つ、とんでもない伝説を作ってしまった。
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