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第11話 王宮で「お辞儀」をして「ナイフ」を使っただけなのに、姫様に求婚され転校してこられました
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第11話 王宮で「お辞儀」をして「ナイフ」を使っただけなのに、姫様に求婚され転校してこられました
「……え、王宮?」
放課後の校門前に、場違いなほど金ピカの馬車が停まっていた。
中から出てきたのは、髭を蓄えた厳つい騎士団長だ。
「平沢拓海殿だな? 国王陛下が『知の神』である貴殿を晩餐に招待したいと仰せだ。同行願おう」
「えぇ……」
拒否権はないらしい。
俺は剛田の「アニキ! 王様をそのカリスマでビビらせてきてください!」という絶叫を背に受けながら、馬車に揺られて王宮へと向かった。
通されたのは、煌びやかな謁見の間だった。
玉座には国王陛下、そしてその隣には、俺と同い年くらいの美少女が座っていた。
金髪碧眼、人形のように整った顔立ち。彼女はこの国の第一王女、シャルロット姫だ。
「よく来たな、異界の賢者よ。余がこの国の王である」
「……初めまして」
シャルロット姫は、退屈そうに俺を一瞥しただけだった。
「賢者なんてどうせ胡散臭い老人でしょ」と言いたげな、冷ややかな視線だ。
「さあ、賢者よ。まずは挨拶をするがよい!」
王様がドスンと床を足で踏み鳴らした。
この世界の礼儀作法は「足踏み」や「胸を叩く」といった、かなり野性的なものだ。
だが、俺は日本人だ。
そんな野蛮な真似はできない。
俺は背筋をピンと伸ばし、腰を45度に折り曲げ、深々と頭を下げた。
「お招きいただき、光栄です」
静寂が訪れた。
数秒後、王様が玉座から転げ落ちそうになった。
「な、なんだ今の所作は……!?」
「美しい……! 攻撃の意思を完全に消し、首筋という急所をあえて相手に晒すことで敬意を表しているのか!?」
「しかも、背中のラインが一直線だ……! まるで芸術作品のような角度……!」
退屈そうにしていたシャルロット姫も、身を乗り出した。
その瞳から冷たさが消え、驚愕と好奇心が混ざり合っていく。
「……綺麗」
彼女は小さく呟いた。その頬が、心なしか赤らんでいる。
場所を移して、晩餐会が始まった。
テーブルには最高級の肉料理が並んでいる。
だが、王様も大臣たちも、肉をナイフで突き刺し、手づかみで食らいついている。
ソースを顔中に飛ばし、骨を噛み砕く音。やはり食事偏差値が低すぎる。
(……服を汚したくないし、普通に食べよう)
俺は目の前のナイフとフォークを手に取った。
左手で肉を固定し、右手のナイフを静かに引く。
キコキコ……ではなく、スーッ。
筋肉の繊維に沿って刃を入れたので、余計な力はいらない。
一口大に切った肉を、フォークで優雅に口へと運ぶ。
カラン……。
誰かがスプーンを落とした音が響いた。
見ると、シャルロット姫が立ち上がり、俺を穴が開くほど凝視していた。
「……嘘。あんなこと、あり得るの?」
「へ?」
「あんなに優しく、愛おしそうにお肉を扱うなんて……。私、初めて見ましたわ」
姫はふらふらと俺の席まで歩み寄ってきた。
瞳は潤み、肩を震わせている。
「この国の男たちは皆、肉を親の仇のように引き裂いて食べます。ですが、あなたは……まるで宝石を扱うような繊細な手つきで、銀の棒(ナイフ)を操り、お肉をエスコートしていた……!」
「いや、ただのマナーだよ?」
「マナー……? なんという気高く、セクシーな響き……!」
シャルロット姫は、俺が置いていたフォークをそっと指でなぞった。
「決めたわ」
彼女は王様に向かって、凛とした声で宣言した。
「お父様! 私、この方のお嫁さんになります!」
「な、なんと!? だがシャルロットよ、相手は平民だぞ!?」
「関係ありません! この所作の美しさ、間違いなく神の血を引くお方ですもの! 私、明日から拓海様の通う学校に転校しますわ!」
「えっ、学校まで来るの?」
姫は俺の手を握りしめ、逃がさないと言わんばかりに力を込めた。
「拓海様。あなたのその『お辞儀』や『マナー』を、私に一から教えてくださいませ……♡ 毎晩、私のベッドで……たっぷりと」
翌朝。
「今日からこのクラスに転入することになった、シャルロット・フォン・キングダムよ。よろしくね、ダーリン♡」
教室の教壇に、昨日の姫様が立っていた。
制服姿も完璧だが、その背後には王宮の近衛兵がズラリと並んで教室を圧迫している。
「「「ええええええええっ!!?」」」
クラス中がパニックになる中、剛田が白目を剥いて泡を吹いた。
「お、王女様……!? アニキ、ついに国家権力まで手中に収めたんすか!?」
「あら、剛田さん。拓海様は私の婚約者ですの。気安く呼ばないでくださる?」
「ま、待ちなさいよ!」
陽菜とミアが、机を叩いて立ち上がった。
「姫様だろうが関係ないわ! 拓海くんは渡さない!」
「そうですわ! 王宮の権力など、私の愛の前には無力です!」
「あら、平民が吠えていますわね。……衛兵、この者たちを黙らせなさい」
「「やるならやってみなさいよ!!」」
教室内で、王女軍vsヒロイン連合軍の全面戦争が勃発した。
飛び交う教科書、怒号、そして巻き込まれる剛田の悲鳴。
俺は騒がしい教室の隅で、一人静かにため息をついた。
ただ挨拶をして、普通に飯を食っただけなのに。
どうやら俺の「当たり前」は、この国の王政すらも揺るがしてしまったらしい。
「……え、王宮?」
放課後の校門前に、場違いなほど金ピカの馬車が停まっていた。
中から出てきたのは、髭を蓄えた厳つい騎士団長だ。
「平沢拓海殿だな? 国王陛下が『知の神』である貴殿を晩餐に招待したいと仰せだ。同行願おう」
「えぇ……」
拒否権はないらしい。
俺は剛田の「アニキ! 王様をそのカリスマでビビらせてきてください!」という絶叫を背に受けながら、馬車に揺られて王宮へと向かった。
通されたのは、煌びやかな謁見の間だった。
玉座には国王陛下、そしてその隣には、俺と同い年くらいの美少女が座っていた。
金髪碧眼、人形のように整った顔立ち。彼女はこの国の第一王女、シャルロット姫だ。
「よく来たな、異界の賢者よ。余がこの国の王である」
「……初めまして」
シャルロット姫は、退屈そうに俺を一瞥しただけだった。
「賢者なんてどうせ胡散臭い老人でしょ」と言いたげな、冷ややかな視線だ。
「さあ、賢者よ。まずは挨拶をするがよい!」
王様がドスンと床を足で踏み鳴らした。
この世界の礼儀作法は「足踏み」や「胸を叩く」といった、かなり野性的なものだ。
だが、俺は日本人だ。
そんな野蛮な真似はできない。
俺は背筋をピンと伸ばし、腰を45度に折り曲げ、深々と頭を下げた。
「お招きいただき、光栄です」
静寂が訪れた。
数秒後、王様が玉座から転げ落ちそうになった。
「な、なんだ今の所作は……!?」
「美しい……! 攻撃の意思を完全に消し、首筋という急所をあえて相手に晒すことで敬意を表しているのか!?」
「しかも、背中のラインが一直線だ……! まるで芸術作品のような角度……!」
退屈そうにしていたシャルロット姫も、身を乗り出した。
その瞳から冷たさが消え、驚愕と好奇心が混ざり合っていく。
「……綺麗」
彼女は小さく呟いた。その頬が、心なしか赤らんでいる。
場所を移して、晩餐会が始まった。
テーブルには最高級の肉料理が並んでいる。
だが、王様も大臣たちも、肉をナイフで突き刺し、手づかみで食らいついている。
ソースを顔中に飛ばし、骨を噛み砕く音。やはり食事偏差値が低すぎる。
(……服を汚したくないし、普通に食べよう)
俺は目の前のナイフとフォークを手に取った。
左手で肉を固定し、右手のナイフを静かに引く。
キコキコ……ではなく、スーッ。
筋肉の繊維に沿って刃を入れたので、余計な力はいらない。
一口大に切った肉を、フォークで優雅に口へと運ぶ。
カラン……。
誰かがスプーンを落とした音が響いた。
見ると、シャルロット姫が立ち上がり、俺を穴が開くほど凝視していた。
「……嘘。あんなこと、あり得るの?」
「へ?」
「あんなに優しく、愛おしそうにお肉を扱うなんて……。私、初めて見ましたわ」
姫はふらふらと俺の席まで歩み寄ってきた。
瞳は潤み、肩を震わせている。
「この国の男たちは皆、肉を親の仇のように引き裂いて食べます。ですが、あなたは……まるで宝石を扱うような繊細な手つきで、銀の棒(ナイフ)を操り、お肉をエスコートしていた……!」
「いや、ただのマナーだよ?」
「マナー……? なんという気高く、セクシーな響き……!」
シャルロット姫は、俺が置いていたフォークをそっと指でなぞった。
「決めたわ」
彼女は王様に向かって、凛とした声で宣言した。
「お父様! 私、この方のお嫁さんになります!」
「な、なんと!? だがシャルロットよ、相手は平民だぞ!?」
「関係ありません! この所作の美しさ、間違いなく神の血を引くお方ですもの! 私、明日から拓海様の通う学校に転校しますわ!」
「えっ、学校まで来るの?」
姫は俺の手を握りしめ、逃がさないと言わんばかりに力を込めた。
「拓海様。あなたのその『お辞儀』や『マナー』を、私に一から教えてくださいませ……♡ 毎晩、私のベッドで……たっぷりと」
翌朝。
「今日からこのクラスに転入することになった、シャルロット・フォン・キングダムよ。よろしくね、ダーリン♡」
教室の教壇に、昨日の姫様が立っていた。
制服姿も完璧だが、その背後には王宮の近衛兵がズラリと並んで教室を圧迫している。
「「「ええええええええっ!!?」」」
クラス中がパニックになる中、剛田が白目を剥いて泡を吹いた。
「お、王女様……!? アニキ、ついに国家権力まで手中に収めたんすか!?」
「あら、剛田さん。拓海様は私の婚約者ですの。気安く呼ばないでくださる?」
「ま、待ちなさいよ!」
陽菜とミアが、机を叩いて立ち上がった。
「姫様だろうが関係ないわ! 拓海くんは渡さない!」
「そうですわ! 王宮の権力など、私の愛の前には無力です!」
「あら、平民が吠えていますわね。……衛兵、この者たちを黙らせなさい」
「「やるならやってみなさいよ!!」」
教室内で、王女軍vsヒロイン連合軍の全面戦争が勃発した。
飛び交う教科書、怒号、そして巻き込まれる剛田の悲鳴。
俺は騒がしい教室の隅で、一人静かにため息をついた。
ただ挨拶をして、普通に飯を食っただけなのに。
どうやら俺の「当たり前」は、この国の王政すらも揺るがしてしまったらしい。
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