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第20話 喉が乾いたので「ペットボトルの回し飲み」を許可したら、聖杯戦争が勃発しました
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「ふぅ、暑いな……」
体育の授業終わり。
照りつける太陽の下、俺たちはヘトヘトになって教室に戻ってきた。
俺はカバンから、家から持参した2リットルのスポーツドリンク(ペットボトル)を取り出した。
キャップを開け、豪快にラッパ飲みする。
ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ……。プハァ。
「生き返る……」
俺が息をつくと、視線を感じた。
陽菜、ミア、シャルロットの三人が、砂漠で水を見つけた遭難者のような目で、俺のペットボトルを凝視している。
「……あの、拓海くん」
陽菜が上目遣いで、モジモジと言った。
「私たちも……水筒の中身がなくなっちゃって。……もしよかったら、一口くれない?」
「ん? ああ、いいぞ。コップないけど」
「コップなんていらないわ! ……その、直(チョク)でいいから!」
「まあ、俺は気にしないけど」
俺は気軽にペットボトルを差し出した。
これが、惨劇の幕開けだった。
「……直(チョク)。つまり、拓海様の唇が触れた場所に、私の唇を重ねるということ……」
陽菜が震える手でボトルを受け取った。
「これは『間接キス』……。いいえ、唾液交換の儀式(ディープ・キス)と同義よ! 拓海くんの体液(の一部)が、私の体内に入るなんて……!」
「考えすぎだろ。早く飲めよ」
「い、いただきます……ッ!」
陽菜はボトルの飲み口を、まるで聖遺物のように愛おしげに見つめ、ゆっくりと自分の唇を近づけた。
その顔は真っ赤で、目はトロンとしている。
「んむ……ッ♡」
彼女は飲み口をハムッと咥えた。
飲むというより、吸っている。
「んっ……♡ 味……拓海くんの味……♡ 甘い……とろけるぅ……!」
「それスポドリの味な」
陽菜が一口飲んだ(というより愛飲した)後、フラフラと千鳥足で崩れ落ちた。
完全にキマっている。
「次は私ですわ!」
すかさずミアがボトルを奪い取った。
「陽菜さんの汚れを消毒しなければ……。拓海様、私が上書き保存いたしますわ!」
ミアはボトルの口をハンカチで拭う……かと思いきや、舌先でペロリと舐め上げた。
「……ッ!!」
剛田が白目を剥いた。
「み、見たか!? 飲み口を舐め回してマーキングしやがった! あれは獲物を独占する肉食獣の舌使いだ!」
「ふふっ……♡ 拓海様の間接キス……頂きましたわ。このボトルの中身は、もうただのジュースではありません」
ミアはボトルを高く掲げた。
「拓海様の唇の魔力が溶け出した、不老不死の霊薬(エリクサー)ですわ! これを飲めば、私の細胞の一つひとつが拓海様色に染め変えられる……!」
「ず、ずるいですわミアさん! 私にもよこしなさい!」
シャルロット王女が飛びついた。
王家のプライドをかなぐり捨て、ボトルにしがみつく。
「その霊薬(エリクサー)は我が国の国宝にします! ……いいえ、今ここで私が飲み干して、拓海様の子種(概念)を宿しますわ!」
「何を言ってるんだお前は」
「渡さないわよ! 残りは私が全部飲み干して、拓海くんと体内で融合するの!」(陽菜)
三人の美女が、一つのペットボトルを巡って取っ組み合いを始めた。
キャップが開いたままなので、中のスポドリがバシャバシャと飛び散る。
「ああっ! 聖水が! 拓海様の聖水が床に!」
「もったいない! 床を舐めなさい! 一滴たりとも無駄にするな!」
「アニキ! 俺が! 俺が床になります!」
剛田がスライディングで飛び込んでくる。
教室は地獄絵図と化した。
「……お前ら、汚いからやめろ」
俺は新しいお茶を買いに行くために、教室を出た。
背後ではまだ、「飲み口の権利」を巡る血で血を洗う聖杯戦争が続いていた。
ただ水分補給をさせただけで、俺はまた一つ、ただの清涼飲料水を神の血に変えてしまった。
_____
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体育の授業終わり。
照りつける太陽の下、俺たちはヘトヘトになって教室に戻ってきた。
俺はカバンから、家から持参した2リットルのスポーツドリンク(ペットボトル)を取り出した。
キャップを開け、豪快にラッパ飲みする。
ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ……。プハァ。
「生き返る……」
俺が息をつくと、視線を感じた。
陽菜、ミア、シャルロットの三人が、砂漠で水を見つけた遭難者のような目で、俺のペットボトルを凝視している。
「……あの、拓海くん」
陽菜が上目遣いで、モジモジと言った。
「私たちも……水筒の中身がなくなっちゃって。……もしよかったら、一口くれない?」
「ん? ああ、いいぞ。コップないけど」
「コップなんていらないわ! ……その、直(チョク)でいいから!」
「まあ、俺は気にしないけど」
俺は気軽にペットボトルを差し出した。
これが、惨劇の幕開けだった。
「……直(チョク)。つまり、拓海様の唇が触れた場所に、私の唇を重ねるということ……」
陽菜が震える手でボトルを受け取った。
「これは『間接キス』……。いいえ、唾液交換の儀式(ディープ・キス)と同義よ! 拓海くんの体液(の一部)が、私の体内に入るなんて……!」
「考えすぎだろ。早く飲めよ」
「い、いただきます……ッ!」
陽菜はボトルの飲み口を、まるで聖遺物のように愛おしげに見つめ、ゆっくりと自分の唇を近づけた。
その顔は真っ赤で、目はトロンとしている。
「んむ……ッ♡」
彼女は飲み口をハムッと咥えた。
飲むというより、吸っている。
「んっ……♡ 味……拓海くんの味……♡ 甘い……とろけるぅ……!」
「それスポドリの味な」
陽菜が一口飲んだ(というより愛飲した)後、フラフラと千鳥足で崩れ落ちた。
完全にキマっている。
「次は私ですわ!」
すかさずミアがボトルを奪い取った。
「陽菜さんの汚れを消毒しなければ……。拓海様、私が上書き保存いたしますわ!」
ミアはボトルの口をハンカチで拭う……かと思いきや、舌先でペロリと舐め上げた。
「……ッ!!」
剛田が白目を剥いた。
「み、見たか!? 飲み口を舐め回してマーキングしやがった! あれは獲物を独占する肉食獣の舌使いだ!」
「ふふっ……♡ 拓海様の間接キス……頂きましたわ。このボトルの中身は、もうただのジュースではありません」
ミアはボトルを高く掲げた。
「拓海様の唇の魔力が溶け出した、不老不死の霊薬(エリクサー)ですわ! これを飲めば、私の細胞の一つひとつが拓海様色に染め変えられる……!」
「ず、ずるいですわミアさん! 私にもよこしなさい!」
シャルロット王女が飛びついた。
王家のプライドをかなぐり捨て、ボトルにしがみつく。
「その霊薬(エリクサー)は我が国の国宝にします! ……いいえ、今ここで私が飲み干して、拓海様の子種(概念)を宿しますわ!」
「何を言ってるんだお前は」
「渡さないわよ! 残りは私が全部飲み干して、拓海くんと体内で融合するの!」(陽菜)
三人の美女が、一つのペットボトルを巡って取っ組み合いを始めた。
キャップが開いたままなので、中のスポドリがバシャバシャと飛び散る。
「ああっ! 聖水が! 拓海様の聖水が床に!」
「もったいない! 床を舐めなさい! 一滴たりとも無駄にするな!」
「アニキ! 俺が! 俺が床になります!」
剛田がスライディングで飛び込んでくる。
教室は地獄絵図と化した。
「……お前ら、汚いからやめろ」
俺は新しいお茶を買いに行くために、教室を出た。
背後ではまだ、「飲み口の権利」を巡る血で血を洗う聖杯戦争が続いていた。
ただ水分補給をさせただけで、俺はまた一つ、ただの清涼飲料水を神の血に変えてしまった。
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