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第25話 肝試しで「塩飴」をあげたら、最高位の除霊師だと崇められました
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「……夜ですね」
バーベキューが終わり、辺りは漆黒の闇に包まれていた。
臨海学校の夜のイベントといえば、これしかない。
『肝試し』だ。
「怖い……。私、お化けとか無理かも……」
陽菜が俺の制服の袖をギュッと握りしめている。
ミアとシャルロットも、青ざめた顔で身を寄せ合っていた。
「非科学的ですわ。霊魂など存在するはずがありません……」
「王家の騎士団がいれば斬り伏せられますが、丸腰では……」
「大丈夫だろ。どうせ先生たちが脅かしてくるだけだ」
俺たちは4人1組(なぜか俺+ヒロイン3人)で、指定されたコースである「夜の森」へと足を踏み入れた。
木々が風でざわめき、不気味な影を落としている。
ヒュ~……ドロドロ……。
「きゃああっ!?」
「な、今の音!?」
どこからともなく聞こえる効果音に、女子たちが悲鳴を上げる。
俺は懐中電灯(ペンライト)で足元を照らしながら、淡々と進んだ。
(凝ってるなぁ。スピーカーまで仕込んでるのか)
その時だった。
道の先にある古い井戸から、白い着物を着た髪の長い女がゆらりと現れた。
「う……うらめしやぁ……」
「「「ぎゃあああああああああっ!!!」」」
三人のヒロインが俺にしがみつき、絶叫した。
「出たぁぁぁ! 本物よ! 足がないわ!」
「怨念の塊ですわ! 視線だけで呪い殺されます!」
「拓海様、逃げましょう! あれは勝てない相手です!」
俺は懐中電灯を幽霊に向けた。
顔色が白塗りで、目の下に隈がある。
蒸し暑い中、厚手の着物を着て大変そうだ。
あれはたぶん、若手の女性教師か、バイトの人だろう。
(……この暑い中、ご苦労なことだ)
俺はポケットをごそごそと探った。
昼間の熱中症対策で持っていた「塩飴」が一つ残っていた。
俺は幽霊に近づいた。
「拓海くん!? ダメよ、近づいちゃ!」
「取り殺されますわ!」
俺は幽霊の目の前で立ち止まり、包み紙を開けた塩飴を差し出した。
「お疲れ様です。暑いんで、これ舐めてください」
「……え?」
幽霊が素っ頓狂な声を上げた。
俺は半ば強引に、幽霊の手に塩飴を乗せた。
「塩分補給しないと倒れますよ。頑張ってください」
その瞬間だった。
ジュワァァァァァッ!!!
幽霊の手から、激しい光と蒸気が噴き出した。
「ギャアアアアッ!? 熱い! 熱いけど……清らかぁぁぁッ!?」
幽霊が苦しみながらも、どこか恍惚とした表情で天を仰いだ。
その体から黒い霧が抜け出し、光の粒子となって空へと昇っていく。
「あ、ありがとう……ございます……。私、やっと……成仏できます……」
幽霊(?)は光に包まれ、そのまま空の彼方へと消えていった。
後に残されたのは、抜け殻となった白い着物だけ。
「……え?」
俺は立ち尽くした。
着物を着ていた先生(?)が逃げたのか?
いや、なんか光ってたけど。
ふと振り返ると、ヒロインたちが腰を抜かして震えていた。
「……信じられない」
ミアが眼鏡をカチャカチャといじった。
「あの悪霊を……『塩』一粒で浄化したというのですか!?」
「塩……? いえ、あれはただの塩ではありません!」
シャルロットが叫んだ。
「あれは『聖者の涙』を結晶化させた、至高の破魔アイテム『ホーリー・ソルト』! しかも拓海様は、それを悪霊に『与える』ことで、怨念を感謝の念で上書きしたのです!」
「力ずくで祓うのではなく、慈悲の心で救済したのね……!」
陽菜が涙ぐんでいる。
「『お疲れ様』……その言葉こそが、この世に未練を残した霊魂にとって一番の救いだったんだわ! なんて優しい除霊なの……!」
ガサガサッ!
草むらから、お化け役の剛田(フランケンシュタインの仮装)が飛び出してきた。
「うおぉぉ! 驚けぇぇ……って、あれ?」
剛田は、地面に落ちている白い着物と、拝んでいる女子たちを見て固まった。
「アニキ……? 何があったんすか?」
「剛田さん! 見て! 拓海様が、彷徨える魂を天国へ送ったのよ!」
「なっ……!? まさか、この森に巣食っていた『本物の地縛霊』を!?」
「え、あれ本物だったの?」
俺が驚くと、剛田は震えながら俺の足元にひれ伏した。
「やっぱりアニキには敵わねぇ……! 物理攻撃だけじゃなく、霊的攻撃(スピリチュアル・アタック)まで完璧だなんて! 俺の背後霊もついでに除霊してください!」
「俺も! 私も憑いてる気がします!」
「拓海様の塩飴……私も舐めたいですわ!」
結局、俺は残りの肝試しコースを「移動式パワースポット」として歩くことになり、他のお化け役の先生たちが俺の顔を見ただけで「あ、お疲れ様です」と道を譲ってくれるという、まったく怖くない夜になってしまった。
_____________________
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バーベキューが終わり、辺りは漆黒の闇に包まれていた。
臨海学校の夜のイベントといえば、これしかない。
『肝試し』だ。
「怖い……。私、お化けとか無理かも……」
陽菜が俺の制服の袖をギュッと握りしめている。
ミアとシャルロットも、青ざめた顔で身を寄せ合っていた。
「非科学的ですわ。霊魂など存在するはずがありません……」
「王家の騎士団がいれば斬り伏せられますが、丸腰では……」
「大丈夫だろ。どうせ先生たちが脅かしてくるだけだ」
俺たちは4人1組(なぜか俺+ヒロイン3人)で、指定されたコースである「夜の森」へと足を踏み入れた。
木々が風でざわめき、不気味な影を落としている。
ヒュ~……ドロドロ……。
「きゃああっ!?」
「な、今の音!?」
どこからともなく聞こえる効果音に、女子たちが悲鳴を上げる。
俺は懐中電灯(ペンライト)で足元を照らしながら、淡々と進んだ。
(凝ってるなぁ。スピーカーまで仕込んでるのか)
その時だった。
道の先にある古い井戸から、白い着物を着た髪の長い女がゆらりと現れた。
「う……うらめしやぁ……」
「「「ぎゃあああああああああっ!!!」」」
三人のヒロインが俺にしがみつき、絶叫した。
「出たぁぁぁ! 本物よ! 足がないわ!」
「怨念の塊ですわ! 視線だけで呪い殺されます!」
「拓海様、逃げましょう! あれは勝てない相手です!」
俺は懐中電灯を幽霊に向けた。
顔色が白塗りで、目の下に隈がある。
蒸し暑い中、厚手の着物を着て大変そうだ。
あれはたぶん、若手の女性教師か、バイトの人だろう。
(……この暑い中、ご苦労なことだ)
俺はポケットをごそごそと探った。
昼間の熱中症対策で持っていた「塩飴」が一つ残っていた。
俺は幽霊に近づいた。
「拓海くん!? ダメよ、近づいちゃ!」
「取り殺されますわ!」
俺は幽霊の目の前で立ち止まり、包み紙を開けた塩飴を差し出した。
「お疲れ様です。暑いんで、これ舐めてください」
「……え?」
幽霊が素っ頓狂な声を上げた。
俺は半ば強引に、幽霊の手に塩飴を乗せた。
「塩分補給しないと倒れますよ。頑張ってください」
その瞬間だった。
ジュワァァァァァッ!!!
幽霊の手から、激しい光と蒸気が噴き出した。
「ギャアアアアッ!? 熱い! 熱いけど……清らかぁぁぁッ!?」
幽霊が苦しみながらも、どこか恍惚とした表情で天を仰いだ。
その体から黒い霧が抜け出し、光の粒子となって空へと昇っていく。
「あ、ありがとう……ございます……。私、やっと……成仏できます……」
幽霊(?)は光に包まれ、そのまま空の彼方へと消えていった。
後に残されたのは、抜け殻となった白い着物だけ。
「……え?」
俺は立ち尽くした。
着物を着ていた先生(?)が逃げたのか?
いや、なんか光ってたけど。
ふと振り返ると、ヒロインたちが腰を抜かして震えていた。
「……信じられない」
ミアが眼鏡をカチャカチャといじった。
「あの悪霊を……『塩』一粒で浄化したというのですか!?」
「塩……? いえ、あれはただの塩ではありません!」
シャルロットが叫んだ。
「あれは『聖者の涙』を結晶化させた、至高の破魔アイテム『ホーリー・ソルト』! しかも拓海様は、それを悪霊に『与える』ことで、怨念を感謝の念で上書きしたのです!」
「力ずくで祓うのではなく、慈悲の心で救済したのね……!」
陽菜が涙ぐんでいる。
「『お疲れ様』……その言葉こそが、この世に未練を残した霊魂にとって一番の救いだったんだわ! なんて優しい除霊なの……!」
ガサガサッ!
草むらから、お化け役の剛田(フランケンシュタインの仮装)が飛び出してきた。
「うおぉぉ! 驚けぇぇ……って、あれ?」
剛田は、地面に落ちている白い着物と、拝んでいる女子たちを見て固まった。
「アニキ……? 何があったんすか?」
「剛田さん! 見て! 拓海様が、彷徨える魂を天国へ送ったのよ!」
「なっ……!? まさか、この森に巣食っていた『本物の地縛霊』を!?」
「え、あれ本物だったの?」
俺が驚くと、剛田は震えながら俺の足元にひれ伏した。
「やっぱりアニキには敵わねぇ……! 物理攻撃だけじゃなく、霊的攻撃(スピリチュアル・アタック)まで完璧だなんて! 俺の背後霊もついでに除霊してください!」
「俺も! 私も憑いてる気がします!」
「拓海様の塩飴……私も舐めたいですわ!」
結局、俺は残りの肝試しコースを「移動式パワースポット」として歩くことになり、他のお化け役の先生たちが俺の顔を見ただけで「あ、お疲れ様です」と道を譲ってくれるという、まったく怖くない夜になってしまった。
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