日本でモブだった俺、レベルの低すぎる異世界では「顔面国宝」兼「全知の賢者」らしい

葉山 乃愛

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第24話 バーベキューで「炭の配置」を変えたら、炎の精霊王だと崇められました

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「うおぉぉっ! 肉だ! 肉の宴だぁぁぁっ!」

日が暮れ始めた砂浜。
剛田の野太い声が響き渡った。
夕食は、キャンプの定番・バーベキューだ。
コンロには山盛りの炭、テーブルには高級肉(シャルロット提供)が積まれている。

「火力が弱いですわね……。これではお肉が焼けませんわ」

シャルロットが団扇でパタパタと仰ぐが、炭は燻るばかりで炎が上がらない。
異世界の住人は魔法で火をつけるのが常識らしく、炭火の扱いには不慣れだ。

「貸してくれ。俺がやる」

俺はトングを手に取り、コンロの前に立った。
バーベキューは火加減が命だ。
俺は乱雑に放り込まれていた炭を、一度端に寄せた。
そして、空気の通り道を作るように、「井桁(いげた)」に組み直していく。
中央に空間を作り、そこに着火剤を投入。

ボッ!
一瞬で美しい炎が立ち上がった。

「なっ……!?」

剛田が後ずさった。

「み、見たか!? アニキが炭に触れた瞬間、死にかけていた炎が蘇ったぞ!」
「ただ積んだだけじゃない……。あれは『魔法陣』の構築だわ!」

陽菜が目を輝かせて解説を始める。

「炭同士の隙間を数ミリ単位で調整し、酸素という名の『マナ』を効率よく循環させているのよ! これは科学を超えた、精霊との対話だわ!」

(ただの煙突効果だよ)

俺はさらに、コンロの中を「強火ゾーン」と「弱火ゾーン」に分けた。
炭を片側に寄せ、もう片方は保温用にする。BBQの基本テクニックだ。

「……信じられませんわ」

ミアが眼鏡の奥で目を細めた。

「一つの炉の中に、『灼熱の地獄(インフェルノ)』と『安らぎの聖域(サンクチュアリ)』を同時に作り出すなんて……! 拓海様は、この小さな箱庭の中で世界の気候をコントロールしていますの!?」

「すごい……! 炎が拓海くんの指図に従って踊っているみたい……!」

準備は整った。俺は網の上に肉を並べた。
ジュゥゥゥゥ……!!
脂が炭に落ち、香ばしい煙が立ち昇る。

「いい音……。これは肉の悲鳴ではありませんわ。歓喜の歌(オラトリオ)です!」

シャルロットがうっとりと煙を吸い込む。

「拓海様の炎に焼かれることで、ただの牛が『神の使い』へと昇華されているのです……!」

俺は肉の表面に肉汁が浮いてきたタイミングを見計らい、サッと裏返した。
絶妙な焼き色。メイラード反応の極みだ。

「今だッ!!」

剛田が叫んだ。

「完璧なタイミング……! 0.1秒早くても遅くてもダメな、奇跡の瞬間(クリティカル・ポイント)を見切った!」
「焼き色が……黄金に輝いているわ! 錬金術よ! アニキは肉を金塊に変えてしまったんだ!」

俺は焼けた肉をタレに潜らせ、ヒロインたちの皿に乗せた。

「ほら、食え」

「い、いただきます……ッ!」

三人は震える箸で肉を持ち上げ、口に運んだ。
その瞬間、彼女たちの動きが止まった。

「んんっ……♡」

「はぁ……ッ♡」

「とろけるぅ……♡」

三人が同時に崩れ落ち、砂浜に座り込んだ。

「な、なんなのこの味……! 噛んでないのに、口の中で肉が解けていく……!」
「肉汁の洪水が……私の脳髄を洗い流していくわ……! 拓海様の『愛の炎』が、体の中から燃え上がってくる感じ……!」
「熱い……! 体が熱いですわ拓海様! 責任取ってくださいましぃぃぃっ!」

「アニキ! 俺にも! 俺の口にもその『黄金の塊』を放り込んでくれぇぇぇ!」

剛田が口を開けてアヒルのように待機している。

「自分で焼けよ」

俺は自分の分の肉を育てながら、ビール(に見せかけた麦茶)を煽った。
ただ炭を並べて肉を焼いただけ。
なのに、俺はこの夜、「炎の精霊王(サラマンダー・ロード)」として、キャンプファイヤーの火が消えるまで崇められることになった。
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