【生存確率0%】S級ダンジョンのボス部屋で、唯一表示された「生存ルート」が『ボス(美少女)にプロポーズすること』だった件。

ひふみ黒

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第5話 総理大臣vs俺の嫁

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狭い四畳半の玄関先で、日本のトップと対峙する。
そんな人生設計、俺にはなかった。

「……総理大臣と、電話ですか」

俺が聞き返すと、黒スーツの男――内閣府の佐々木と名乗った――は、滝のような冷や汗を拭いながら頷いた。

「はい。事態は一刻を争います。……貴方が連れている『彼女』は、単体で国家転覆が可能な戦略兵器そのものです。政府としては、彼女の『管理権』が誰にあるのかを確認したいのです」

管理権。
物騒な言葉だ。
要するに、「飼い主はお前で本当にいいのか? 政府で管理(監禁)しなくて大丈夫か?」という意味だろう。

その時。
背後からペタペタと裸足の足音が聞こえた。

「――ダーリン? 誰よ、その男」

ドス黒い殺気と共に、ルナが現れた。
俺のぶかぶかのYシャツを一枚だけ羽織った、いわゆる「彼シャツ」姿だ。
太ももが眩しい。
だが、その目は笑っていなかった。

「……私の朝の挨拶(キス)を邪魔するなんて。死にたいのかしら?」

ヒュッ。
空気が凍りついた。
佐々木氏の後ろにいた自衛隊員たちが、反射的に銃に手をかける。

「ひぃッ! か、構えろ! 対象が敵意を見せたぞ!」

ガチャガチャッ!
狭い廊下に、無数の銃口が向けられる。
最悪だ。
ルナの眉がピクリと動く。彼女にとって、銃弾など豆鉄砲ですらないが、「向けられた」という不敬だけで国を滅ぼすには十分な理由になる。

『……ふーん。人間風情が、私に武器を向けるの?』

ルナの背後に、漆黒のドラゴンの幻影が立ち昇る。
アパートがミシミシと悲鳴を上げた。
このままでは、ひまわり荘が「グラウンドゼロ」になってしまう。

【緊急選択肢発生】

【A:自衛隊を止めるよう説得する】
→ 生存確率:5.00%(間に合わず、ルナがブレスを発射)

【B:ルナを止めるよう説得する】
→ 生存確率:10.00%(「ダーリンは私の味方じゃないの?」と拗ねて暴走)

【C:全員を無視して、ルナの『着崩れたシャツ』を直し、「他人の前で肌を見せるな」と独占欲を見せる】
→ 生存確率:100.00%

俺は無言でルナに歩み寄った。
銃口の前を平然と横切る俺に、隊員たちが息を呑む。

俺はルナの目の前に立ち、はだけていたシャツのボタンを丁寧に留めた。

「……ルナ。ダメだろ」

「え?」

「そんな無防備な格好、俺以外の男に見せるな。……嫉妬するだろ」

その瞬間。
立ち昇っていたドラゴンの幻影が、シュンと霧散した。
ルナの瞳から殺気が消え、代わりにハートマークが浮かぶ。

「……っ! だ、ダーリン……♡」

彼女はとろけるような顔で、俺の胸に飛び込んだ。

「ごめんなさい……私、ダーリンだけのものなのに……うふふ、嫉妬されちゃった♡」

【危機回避成功】

俺は心の中でガッツポーズをした。
そして、呆気にとられている佐々木氏の方を向き、冷ややかに告げた。

「見ての通りです。彼女は俺の言うことしか聞きません。……もし政府が彼女を『管理』したいなら、まず俺を排除する必要がありますが?」

「そ、それは……!」

佐々木氏が青ざめる。
俺を排除すれば、制御を失ったルナが日本を焦土に変える。
つまり、俺の安全こそが日本の安全保障そのものなのだ。

「……わかりました。総理には『相川カズト氏による単独管理が現状の最適解』と報告します」

佐々木氏は震える手でスマホを取り出し、どこかへ連絡を入れた。
数分後。
スマホを渡される。

『……あー、もしもし。内閣総理大臣の阿部です』

疲弊しきった声が聞こえた。

『相川くん、と言ったね。単刀直入に頼む。……どうか、そのドラゴンさんの機嫌を損ねないでくれたまえ。君の生活費、住居、その他必要なものは全て国家予算で賄う。税金も免除しよう。だから……』

総理大臣が、電話越しに懇願してくる。

『絶対に、彼女を「野放し」にしないでくれ。これは日本国からの正式な依頼だ』

俺はチラリとルナを見た。
彼女は俺の腕に絡みつき、「ねえ、早く続きしよ?」と耳元で囁いている。
野放しにするどころか、離してくれそうにない。

「……善処します。その代わり、俺たちの生活に干渉しないでください。平穏に暮らしたいんです」

『も、もちろんだ! 最高レベルの警護……いや、「隔離」措置を取らせてもらう!』

通話が終わった。
佐々木氏たちが、逃げるように撤収していく。

「し、失礼しましたーッ!!」

嵐が去った四畳半。
俺はドッと疲れが出た。
家賃2万のアパート住まいだった俺が、たった一日で「国家公認のヒモ」になってしまった。

「ダーリン? 邪魔者は消えた?」

ルナが首を傾げる。

「ああ、消えたよ。……これからは、誰にも邪魔されない」

「本当? ……うふふ。じゃあ、さっきの『嫉妬』の続き……してくれる?」

ルナが妖艶に微笑み、俺を布団に押し倒す。
日本の危機は去ったが、俺の貞操の危機はここからが本番だった。

   ◇ ◇ ◇

数日後。
俺とルナの生活環境は劇変していた。

政府が用意した、都内の超高級タワーマンション。
最上階のペントハウス。
広すぎて落ち着かないリビングで、俺はスマホを見ていた。

俺の探索者ライセンスのカード。
そこには、ありえない記載変更がなされていた。

**【 名前:相川カズト 】**
**【 ランク:SSS(測定不能) 】**
**【 称号:魔王の飼い主 / 国の守護者 】**

「Fランクから、一気にSSSランクかよ……」

飛び級にも程がある。
しかも、俺の銀行口座には、勇者パーティーから巻き上げた「慰謝料」と、国からの「協力金」で、見たことのない桁の数字が並んでいた。

「ダーリン! 見て見て、制服着てみたの!」

寝室から、ルナが飛び出してきた。
彼女が着ているのは、ブレザータイプの制服。
スカートが短すぎて、絶対領域が眩しい。

「……なんで制服?」

「政府の人から聞いたの。『日本の学生は学校に通う義務がある』って。だから私、ダーリンと一緒に学校に行きたいなと思って!」

ルナが目を輝かせる。
嫌な予感がした。
俺はまだ20歳だが、探索者になるために高校を中退している。
今さら学校?
しかも、魔王連れで?

【選択肢発生】

【A:断る】
→ 生存確率:20.00%(「ダーリンと青春できないなら世界を壊す」と駄々をこねる)

【B:「国立探索者学園」への編入を受け入れる】
→ 生存確率:100.00%

どうやら俺の安息の日々は、まだまだ遠いらしい。
次の舞台は、エリート探索者たちが集う学園。
そこで待っているのは、俺をゴミ扱いしていた元同級生たちと……新たな「攻略対象」だった。
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