借金返済の為、ヤンデレ彼女とデスゲームに参加してみた【彼女が強すぎて運営が涙目】

ひふみ黒

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第4話 ジョーカーの告発

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重厚な扉が開くと、そこには「最後の晩餐」を模したような長いテーブルが用意されていた。

キャンドルの炎が揺らめき、銀食器が不気味なほどの輝きを放っている。

残った六組のカップルが、互いに距離を取りながら席に着く。

空気は張り詰めていた。

誰もが疑心暗鬼の目を周囲に向けている。

無理もない。

僕のポケットの中にあるメモが真実なら、この中に一人、運営側の犬である「ジョーカー」が紛れ込んでいるのだから。

皆様、第二ゲーム「沈黙の晩餐会」へようこそ。

キルケゴールの声が響く。

ルールは簡単です。これからフルコースのディナーを楽しんでいただきます。

ただし、メインディッシュの前に、皆様には「投票」を行っていただきます。

投票?

はい。この中で最も「ふさわしくない」と思うペアを指名してください。

最多得票のペアは、即座に退場となります。

ざわめきが広がる。

つまり、人気投票による処刑だ。

論理もへったくれもない。

単なる集団心理と、コミュニケーション能力の勝負。

だが、キルケゴールは続けた。

ただし、もし皆様が協力して「ジョーカー」を見事追放できた場合、残りのペア全員にボーナス一億円を差し上げます。

逆に、無実のペアを追放してしまった場合……ジョーカーは生き残り、次のゲームでの有利な権利を得ます。

なるほど。

単純な人気投票ではない。

「魔女狩り」だ。

誰がジョーカーなのかを探り合い、スケープゴートを吊るし上げるゲーム。

では、食事と会話をお楽しみください。

合図とともに、前菜が運ばれてくる。

だが、誰もフォークを動かそうとしない。

全員が、最初の一手を誰が打つのかを伺っている。

あの。

沈黙を破ったのは、向かいに座っていた初老の男だった。

白髪に黒縁メガネ。大学教授のような知的な風貌をしている。隣には、年の離れた美しい妻が座っていた。

少し、情報交換をしませんか?

男は穏やかな口調で言った。

私はサカキバラと言います。実はお聞きしたいことがあるのですが……皆様の部屋に、「奇妙な贈り物」は届きませんでしたか?

心臓が跳ねた。

贈り物。

あのカクテルに添えられていたメモのことだ。

サカキバラは懐から一枚のカードを取り出し、テーブルの上に滑らせた。

そこには、僕が持っているものと全く同じ文言が書かれていた。

『警告:プレイヤーの中に、運営側に雇われたジョーカーが一人紛れ込んでいます』

やはり、全員に配られていたのか。

僕がポケットに手を伸ばそうとした、その時だった。

あら?

隣でアイリが不思議そうな声を上げた。

そんなカード、私たちの部屋にはありませんでしたよ。ねえ、タクヤくん?

僕は凍りついた。

アイリは平然と、首を傾げている。

嘘だ。

僕は確かにメモを受け取ったし、アイリはその現場を目撃して「何の紙?」と聞いてきたはずだ。

なぜ、ここで嘘をつく?

サカキバラの目が、鋭く光った。

ほう。届いていない、ですか。

ええ。私たちのテーブルには、カクテルしかありませんでした。

アイリは悪びれもせず、無垢な笑顔で答える。

サカキバラの視線が、僕たちを値踏みするように舐め回す。

それは興味深い。

彼はゆっくりとメガネの位置を直した。

実は、他の三組の方々とも話したのですが、全員にこのカードが届いているようなのです。

つまり、カードが届いていないのは、あなた方だけということになりますね。

場の空気が一変した。

周囲のカップルからの視線が、一斉に僕たちに突き刺さる。

敵意。

疑惑。

「なぜ、こいつらだけ特別なのか?」

論理的に考えれば、答えは一つしかない。

ジョーカー本人には、警告文を送る必要がないからだ。

しまった。

アイリの失言だ。

彼女は墓穴を掘ったのだ。

「何も知らない」ことを装うために嘘をついたのだろうが、それが逆に「自分たちが異分子である」ことを証明してしまった。

僕は冷や汗が背中を伝うのを感じた。

弁解しなければならない。

「いや、実は届いていたんだ」と訂正するか?

いや、今さら前言撤回すれば、余計に怪しまれる。

アイリ、君はどうして……。

僕が横を見ると、アイリは優雅にフォークを手に取り、前菜のテリーヌを口に運んでいた。

そして、艶やかな唇をナプキンで拭うと、サカキバラに向かって微笑んだ。

おじ様。

鈴が転がるような声だった。

そのカード、裏側も読みました?

え?

サカキバラが眉をひそめる。

カードの裏側? 何も書いてありませんでしたが。

そうですか。

アイリは楽しげに目を細めた。

じゃあ、やっぱり私たちの勝ちですね。

どういうことだね?

だって、簡単な理屈じゃありませんか。

アイリは、場を制圧するような圧倒的な「何か」を纏っていた。

運営側が、ジョーカー本人に「あなたがジョーカーです」なんて通知を送るわけがないでしょう?

そんな証拠を残せば、誰かに見られた時に即座にバレてしまいますから。

だから?

だから、運営側はジョーカーには「何も送らない」か、あるいは「全員と同じ偽のカードを送る」かのどちらかを選ぶはずです。

アイリはフォークの先を、サカキバラに向けた。

もし私がジョーカーなら、周りに話を合わせて「届きました」って嘘をつきますよ。そうすれば紛れ込めるんですから。

「届いていない」と正直に言うことは、自分がジョーカーではないという証明にはなっても、ジョーカーであるという証明にはなりません。

論理のすり替えだ。

詭弁に近い。

だが、彼女の堂々たる態度は、周囲の疑惑をわずかに揺らぎさせた。

それにね。

アイリは声を潜めた。

私、さっきから気になっていたんです。

何がだ。

おじ様、そのカード。いつ懐から出しました?

サカキバラが言葉に詰まる。

ここに来る前、廊下で他のカップルと話している時は、ポケットに入れていましたよね。

ええ、まあ。

その時、手袋をしていましたか?

いや……。

なら、指紋がついているはずですよね。

アイリはサカキバラが出したカードを指差した。

でも、そのカード、やけに綺麗すぎませんか? まるで、今さっき印刷されたみたいに。

サカキバラの顔色が、微かに変わった。

もしかして、おじ様。

アイリは残酷なほど無邪気な瞳で、彼を射抜いた。

そのカード、運営から配られたものじゃなくて、あなたが自分で作った偽物なんじゃないですか?

私たちを陥れるために。

静寂が、ホールを支配する。

逆転の発想。

アイリは「自分たちが怪しい」という状況を利用し、告発者であるサカキバラに「捏造」の疑いをかけたのだ。

もちろん、そんなのはハッタリだ。

あのカードは本物だ。僕も持っているのだから。

だが、他のカップルは僕のポケットの中身を知らない。

彼らにとって、サカキバラのカードが本物かどうかなんて、確認しようがないのだ。

疑心暗鬼の種は、蒔かれた。

ねえ、タクヤくん。

アイリがテーブルの下で、僕の手を握った。

私の言ってること、間違ってるかな?

彼女の手のひらは、汗ばんでいた。

見上げた横顔は、必死に強がっているようにも、計算通りにことを運んで悦に入っているようにも見えた。

僕は、喉の奥で唾を飲み込む。

アイリ。

君は今、僕を守るために嘘をついたのか。

それとも、サカキバラという邪魔な芽を摘むために、嘘を利用したのか。

どちらにせよ、もう後戻りはできない。

僕は覚悟を決めて、サカキバラを睨みつけた。

奇遇ですね。僕も妻と同意見です。あなたのそのカード、少し紙の質感が安っぽい気がします。

共犯成立。

サカキバラの額に、脂汗が浮いた。

晩餐会はまだ始まったばかり。

だが、このテーブルの下では既に、血で血を洗うような足の引っ張り合いが始まっている。

僕はポケットの中の「本物のカード」を、指先で強く握りつぶした。




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