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第19話 リモートワークの罠(前編:その騒音は確変です)
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【10:00:00】
パチンコ店『パーラー・ダイナマイト』。
爆音と電子音が渦巻く、鉄火場。
その一角、新台『北斗の拳・世紀末救世主伝説』のシマ(列)に、異様な客がいた。
葛城 湊(かつらぎ みなと)。
彼はスーツ姿でハンドルを握りながら、膝の上に『ノートパソコン』を広げていた。
「……よし。……完璧だ」
湊は、パソコンの画面に映る『Zoom会議室(待機中)』を見つめながら、ニヤリと笑った。
今日は、全残協の本部による『リモート定例会議』の日だ。
だが、今日は新台入替の初日。
湊の優先順位は、会議よりもケンシロウ(救世主)にあった。
「……二階堂(にかいどう)。……防音壁(バリア)の展開は?」
「イエス・ボス! ……段ボールと吸音材で、完全個室化完了です!」
隣の席の二階堂アリスが、二人の席を囲むように巨大な段ボールを設置していた。
外からは見えない。
中からはパラダイス。
まさに移動式要塞だ。
「……さらに、この『AI背景合成アプリ』を使えば……」
湊がキーボードを叩く。
画面の背景が、リアルな『鉄工所』の映像に切り替わった。
火花が散り、作業員が動き回るループ動画だ。
「……勝つ。……会議もこなし、万枚も出す。……これぞ『DX(デジタルトランスフォーメーション)』だ」
湊がハンドルを回す。
その時。
ピロリン♪
聖(ひじり)からの入室リクエスト。
湊は深呼吸をし、マイクの『ノイズ除去設定』をMAXにして通話を開始した。
「……お疲れ様です、監査官殿」
画面に、聖の冷徹な顔が映し出された。
背景は事務所だ。
『……おはようございます、所長。……背景が騒がしいようですが?』
聖が眉をひそめる。
当然だ。
段ボール越しでも、100デシベルの爆音が微かに漏れている。
だが、湊は動じない。
「……ああ、申し訳ない。……今、依頼の調査で『鉄工所』に来ているんだ」
『鉄工所?』
「そうだ。……プレスの音がうるさくてね。……ガシャンガシャンと」
その瞬間、隣の台(知らないおじさん)が大当たりのファンファーレを鳴らした。
ピピピピピピーン!!
『……今、電子的なファンファーレが聞こえませんでしたか?』
「……最新のプレス機だ! ……製品が完成すると祝福してくれるんだ!」
『……そうですか』
聖は無表情のまま、手元の書類に目を落とした。
『……では、今月の収支報告を始めます』
会議が始まった。
湊は「うんうん」と真剣な顔で頷きながら、視線はパチンコ台の液晶に釘付けだった。
今、激アツの『キリン柄(信頼度90%)』が出現したのだ。
(……来い! 来いケンシロウ! ……会議中に世界を救え!)
『……次に、旅費交通費の件ですが……』
「……(ああっ! そこで百裂拳!? 熱い!)」
『……聞いていますか? 所長』
「……き、聞いてる! ……百裂……いや、白熱した議論だな!」
湊の心拍数が上がる。
ハンドルを握る手が汗ばむ。
画面の中で、宿敵ラオウが倒れる。
『……ユワッシャー!!(効果音)』
「!!」
当たった。
大当たりだ。
しかも『777(スリーセブン)』。
最高継続率84%のバトルモード突入だ。
台が激しく振動し、極彩色の光が湊の顔を照らす。
湊は歓喜のあまり、ガッツポーズをしそうになり、慌てて「伸び」のポーズに誤魔化した。
『……所長。……顔が七色に光っていますが?』
「……よ、溶接の光だ! ……近くで作業が始まったんだ!」
『……なるほど』
聖が、ゆっくりと眼鏡を外した。
その瞳が、獲物を追い詰める蛇のように細められる。
『……所長。……鉄工所の映像ですが』
「……な、なんだ?」
『……後ろで作業しているおじさん。……さっきから5秒おきに「同じ場所で転んで」いますね』
「……っ!?」
湊が背景動画を見る。
ループ設定が短すぎた。
背景のおっさんが、延々とパイプに躓いて転び続けている。
「……あ、あれは! ……ドジっ子なんだ! ……この工場の名物おじさんで……」
『……言い訳は結構です』
聖が、パチンと指を鳴らした。
『……GPS情報は確認済みです。……場所は「パーラー・ダイナマイト」ですね?』
「!!」
バレていた。
最初から。
湊は凍りついた。
『……そして、貴方が打っているのは「305番台」。……現在、確変突入直後』
「……な、なぜそれを……?」
『……画面を見なさい』
「え?」
湊がZoomの画面ではなく、目の前の『パチンコ台の液晶画面』を見た。
そこには、ケンシロウはいなかった。
代わりに、仁王立ちした『聖』が映し出されていた。
「ひいいぃぃぃぃ!?」
<第19話(前編)・終わり>
パチンコ店『パーラー・ダイナマイト』。
爆音と電子音が渦巻く、鉄火場。
その一角、新台『北斗の拳・世紀末救世主伝説』のシマ(列)に、異様な客がいた。
葛城 湊(かつらぎ みなと)。
彼はスーツ姿でハンドルを握りながら、膝の上に『ノートパソコン』を広げていた。
「……よし。……完璧だ」
湊は、パソコンの画面に映る『Zoom会議室(待機中)』を見つめながら、ニヤリと笑った。
今日は、全残協の本部による『リモート定例会議』の日だ。
だが、今日は新台入替の初日。
湊の優先順位は、会議よりもケンシロウ(救世主)にあった。
「……二階堂(にかいどう)。……防音壁(バリア)の展開は?」
「イエス・ボス! ……段ボールと吸音材で、完全個室化完了です!」
隣の席の二階堂アリスが、二人の席を囲むように巨大な段ボールを設置していた。
外からは見えない。
中からはパラダイス。
まさに移動式要塞だ。
「……さらに、この『AI背景合成アプリ』を使えば……」
湊がキーボードを叩く。
画面の背景が、リアルな『鉄工所』の映像に切り替わった。
火花が散り、作業員が動き回るループ動画だ。
「……勝つ。……会議もこなし、万枚も出す。……これぞ『DX(デジタルトランスフォーメーション)』だ」
湊がハンドルを回す。
その時。
ピロリン♪
聖(ひじり)からの入室リクエスト。
湊は深呼吸をし、マイクの『ノイズ除去設定』をMAXにして通話を開始した。
「……お疲れ様です、監査官殿」
画面に、聖の冷徹な顔が映し出された。
背景は事務所だ。
『……おはようございます、所長。……背景が騒がしいようですが?』
聖が眉をひそめる。
当然だ。
段ボール越しでも、100デシベルの爆音が微かに漏れている。
だが、湊は動じない。
「……ああ、申し訳ない。……今、依頼の調査で『鉄工所』に来ているんだ」
『鉄工所?』
「そうだ。……プレスの音がうるさくてね。……ガシャンガシャンと」
その瞬間、隣の台(知らないおじさん)が大当たりのファンファーレを鳴らした。
ピピピピピピーン!!
『……今、電子的なファンファーレが聞こえませんでしたか?』
「……最新のプレス機だ! ……製品が完成すると祝福してくれるんだ!」
『……そうですか』
聖は無表情のまま、手元の書類に目を落とした。
『……では、今月の収支報告を始めます』
会議が始まった。
湊は「うんうん」と真剣な顔で頷きながら、視線はパチンコ台の液晶に釘付けだった。
今、激アツの『キリン柄(信頼度90%)』が出現したのだ。
(……来い! 来いケンシロウ! ……会議中に世界を救え!)
『……次に、旅費交通費の件ですが……』
「……(ああっ! そこで百裂拳!? 熱い!)」
『……聞いていますか? 所長』
「……き、聞いてる! ……百裂……いや、白熱した議論だな!」
湊の心拍数が上がる。
ハンドルを握る手が汗ばむ。
画面の中で、宿敵ラオウが倒れる。
『……ユワッシャー!!(効果音)』
「!!」
当たった。
大当たりだ。
しかも『777(スリーセブン)』。
最高継続率84%のバトルモード突入だ。
台が激しく振動し、極彩色の光が湊の顔を照らす。
湊は歓喜のあまり、ガッツポーズをしそうになり、慌てて「伸び」のポーズに誤魔化した。
『……所長。……顔が七色に光っていますが?』
「……よ、溶接の光だ! ……近くで作業が始まったんだ!」
『……なるほど』
聖が、ゆっくりと眼鏡を外した。
その瞳が、獲物を追い詰める蛇のように細められる。
『……所長。……鉄工所の映像ですが』
「……な、なんだ?」
『……後ろで作業しているおじさん。……さっきから5秒おきに「同じ場所で転んで」いますね』
「……っ!?」
湊が背景動画を見る。
ループ設定が短すぎた。
背景のおっさんが、延々とパイプに躓いて転び続けている。
「……あ、あれは! ……ドジっ子なんだ! ……この工場の名物おじさんで……」
『……言い訳は結構です』
聖が、パチンと指を鳴らした。
『……GPS情報は確認済みです。……場所は「パーラー・ダイナマイト」ですね?』
「!!」
バレていた。
最初から。
湊は凍りついた。
『……そして、貴方が打っているのは「305番台」。……現在、確変突入直後』
「……な、なぜそれを……?」
『……画面を見なさい』
「え?」
湊がZoomの画面ではなく、目の前の『パチンコ台の液晶画面』を見た。
そこには、ケンシロウはいなかった。
代わりに、仁王立ちした『聖』が映し出されていた。
「ひいいぃぃぃぃ!?」
<第19話(前編)・終わり>
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