79 / 80
第十章 2年生 2学期
1
しおりを挟む
9月からの2学期は俺にとって勝負の時期になる。
起業の準備と武内家との協議、土地探しなど問題は山積みになっている。
「毅君、話があるんだけど」
純喫茶加藤の常連客、ヨーコさんからの呼び出しだ。
放課後に真っ直ぐ店に行くと、ヨーコさんと同年齢の女性が一緒に座っていた。
「毅君、彼女が持っているテナントが半年間も空いてるの。
一度、見てくれないかしら」
「場所と条件次第では、こちらからお願いしたいくらいです」
直ぐに見に行く事になり、家主さんのベンツに乗って現場に向かった。
表通りにはマンションが立ち並び、裏側には賃貸マンションや個人宅が雑然と建っている場所に古い貸店舗が2軒並んでいた。
「人通りが無いところですね」
「昔は賑やかだったけど、今はこんな調子よ」
表通りには大手のファミリーレストランがあり、コンビニが2軒、ドラッグストアが1軒くらいしか店が無い。
居酒屋やレストランもこぢんまりとやっている程度だ。
最寄り駅から天神まで地下鉄で14分だから、みんな食事や買い物を済ませて帰ってくる。
交通の便利さが良すぎて、ビジネスがやりにくい場所だった。
空きテナントの隣で営業している古着屋さんで話を聞くと、居住者の所得水準は高い。
しかし、店の売り上げよりネット通販で食べていると笑って話してくれた。
「近所にベーカリーは無いから、どうかなって思った」
ヨーコさんが俺に紹介した理由を話している。
「悪くはないですね、条件次第でしょうか」
出された条件は4年契約で家賃総額600万円、契約開始は来年の1月1日から。
今から3か月間の家賃が免除される特典が付いて、敷金はアパート並みの3か月に抑えられている。
この場所の賃貸相場から見れば、安いのは間違いない。
「共同経営者と相談しますから、2週間ほど時間を下さい」
すぐに武内女史と連絡を取る。
明日、放課後に一緒に見に行くことにした。
「絵美里、俺の会社に来る気はあるのか?」
「もちろん、そのつもりです。誘われないから心配してました」
「今、店舗を借りる話が進んでいる。
お前と貴大に任せるつもりだが、一緒に見に行かないか?」
「絶対、行きます。いつですか?」
「授業が終わったら直行するよ」
結局、俺と武内女史、実習班の3人と貴大、涼介、健太まで付いてきた。
天神から地下鉄で14分、駅から歩いて8分という好立地だ。
だが相変わらず、静かな裏通りだった。
「表から一本入っただけで、随分と静かですね」
「表のビルが壁になってるんだろう。ここだ」
俺がテナントのシャッターを上げると、中はガランとした空間だった。
隣の店との壁がコンクリートで、上は鉄骨がむき出しのままだ。
「ああ、結構広い。店は自由に設計出来ますね」
武内女史には好印象のようだ。
「ここにベーカリーカフェを作りたい。
貴大が焼いたパンと絵美里がカフェを仕切る。どうだ?」
「いきなり経営なんて無理です」
二人共及び腰だ。
「もちろん、俺と武内女史で支えるさ。
第1号店は大きな店じゃなくて、小さくスタートさせる。
ここでみんなが経験を積んで、大きな店を作るんだ」
起業の準備と武内家との協議、土地探しなど問題は山積みになっている。
「毅君、話があるんだけど」
純喫茶加藤の常連客、ヨーコさんからの呼び出しだ。
放課後に真っ直ぐ店に行くと、ヨーコさんと同年齢の女性が一緒に座っていた。
「毅君、彼女が持っているテナントが半年間も空いてるの。
一度、見てくれないかしら」
「場所と条件次第では、こちらからお願いしたいくらいです」
直ぐに見に行く事になり、家主さんのベンツに乗って現場に向かった。
表通りにはマンションが立ち並び、裏側には賃貸マンションや個人宅が雑然と建っている場所に古い貸店舗が2軒並んでいた。
「人通りが無いところですね」
「昔は賑やかだったけど、今はこんな調子よ」
表通りには大手のファミリーレストランがあり、コンビニが2軒、ドラッグストアが1軒くらいしか店が無い。
居酒屋やレストランもこぢんまりとやっている程度だ。
最寄り駅から天神まで地下鉄で14分だから、みんな食事や買い物を済ませて帰ってくる。
交通の便利さが良すぎて、ビジネスがやりにくい場所だった。
空きテナントの隣で営業している古着屋さんで話を聞くと、居住者の所得水準は高い。
しかし、店の売り上げよりネット通販で食べていると笑って話してくれた。
「近所にベーカリーは無いから、どうかなって思った」
ヨーコさんが俺に紹介した理由を話している。
「悪くはないですね、条件次第でしょうか」
出された条件は4年契約で家賃総額600万円、契約開始は来年の1月1日から。
今から3か月間の家賃が免除される特典が付いて、敷金はアパート並みの3か月に抑えられている。
この場所の賃貸相場から見れば、安いのは間違いない。
「共同経営者と相談しますから、2週間ほど時間を下さい」
すぐに武内女史と連絡を取る。
明日、放課後に一緒に見に行くことにした。
「絵美里、俺の会社に来る気はあるのか?」
「もちろん、そのつもりです。誘われないから心配してました」
「今、店舗を借りる話が進んでいる。
お前と貴大に任せるつもりだが、一緒に見に行かないか?」
「絶対、行きます。いつですか?」
「授業が終わったら直行するよ」
結局、俺と武内女史、実習班の3人と貴大、涼介、健太まで付いてきた。
天神から地下鉄で14分、駅から歩いて8分という好立地だ。
だが相変わらず、静かな裏通りだった。
「表から一本入っただけで、随分と静かですね」
「表のビルが壁になってるんだろう。ここだ」
俺がテナントのシャッターを上げると、中はガランとした空間だった。
隣の店との壁がコンクリートで、上は鉄骨がむき出しのままだ。
「ああ、結構広い。店は自由に設計出来ますね」
武内女史には好印象のようだ。
「ここにベーカリーカフェを作りたい。
貴大が焼いたパンと絵美里がカフェを仕切る。どうだ?」
「いきなり経営なんて無理です」
二人共及び腰だ。
「もちろん、俺と武内女史で支えるさ。
第1号店は大きな店じゃなくて、小さくスタートさせる。
ここでみんなが経験を積んで、大きな店を作るんだ」
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる