モリタリン

MORITARIN

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MORITARIN 5

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Episode -2 B
♢ ♢ ♢ ♢ ♢

暗く湿った森から吹きつける冷たい風が、気絶していたイートを目覚めさせる。

意識を取り戻したイートは、きょろきょろと周囲を見回した。

「おかしい……全身が痛いのに、何も思い出せない。」

「なんで俺、ここにいるんだ……なんでこんなに痛いんだ?」

「俺、何をしてて……どうしてここに……?」

いくら考えても、どうにも記憶が繋がらない。

虫どもに受けた衝撃で、一時的に記憶が飛んだらしい。

頭を絞っても、結局――何も出てこない。

その瞬間――イートの背後で、巨大なバラクが拳を天高く振り上げた。

今のモンドは、イートに大怪我を負わされた『メロン』のことで、理性を失っている。

モンドが合図を送ると、巨大な拳が空からイートの頭へ向かって一気に振り下ろされた。

切迫した、その刹那――その時に——

距離の見当もつかないほど遠い空中に浮かぶ“誰か”が、すべてを見下ろし、状況を監視していた。

彼は狙った場所へ、桃色の光線を放つ。

その細い光は、驚くほど正確に巨大なバラクの腕を一撃で切断した。

茶色い鷲のマントを羽織ったその男は、遠距離射撃の結果に満足したように独り言を漏らす。

「……頭を狙ったんだが……」

そして唐突に、イートのいる場所へ向けて、凄まじい速度で移動した。

すでに到着していた暗い紫のマントへ、茶色いマントが声をかける。

「よう。準備はできたか? さっさと片付けよう。ポルン様が来る。」

紫のマントは、禍々しい黒紫の光を放つエネルギーの球体を三つ、用意しているところだった。

「準備はできてる!」[ちらりとバラクたちを見る]

バラクたちはイートをいたぶることに夢中で、近くにオルピンが来ていることに気づかなかった。

だが、オルピンと目が合った瞬間――本能的に凍りつく。まるでカエルが蛇に睨まれたみたいに。

ドド:「お……お……オルピンだ!」[悲鳴を上げる]

紫のマント:「時間がない。ポルン様が来る。だから消えろ、虫ども!」

彼は用意していた三つの球体を、同時にバラクへ放った。

球体は円を描きながら、モンドとドドへ向かって猛スピードで飛んでいく。

モンドとドドは恐怖に震える。飛行できるドドは、咄嗟に翼を広げた。

そして全力で、空高く舞い上がる。

そんなドドを見ていたモンドは、羨ましそうに手を伸ばした。

「俺たちは……どうすりゃいいんだ……」

だがドドは、すでに遥か遠くへ飛び去っていた。

その時、モンドの危険を察した巨大バラク――ウグが、迷いなく駆け出し、自分の体でモンドを包み込んだ。

モンド:「おい、ウグ……これから俺たち、どうなるんだ……?」

ウグ:「ウグ……ウググ……」

最初の球体がウグの背甲で爆ぜると、光の柱が高く噴き上がった。

その光に触れたウグは、体の奥底から激痛が突き上げてくる。

体内の体液が、涙のように流れ落ちるウグを見て、モンドは胸が裂けるような痛みを覚えた。

ウグも死を覚悟したように、悲しい瞳でモンドを見つめ返す。

それを見た紫のマントは、ひどく動揺し、動きを止めた。

普通、バラクは危険を察すれば、逃げるか隠れるのに必死だ。

その単純な行動のせいで、オルピンたちにとってバラクは、ただの虫と大差ない存在に見えていた。

だからこそ――ウグの“身代わり”の行動は、紫のマントを強く驚かせた。

極限の痛みの中でも最後までモンドを守ろうとするその姿に、紫のマントの胸に「なぜ?」が生まれる。

だが、その疑問を考える時間すらない。

体が反射で動いた。

両手に力を集め、三つ目の球体の軌道を変えようとする。せめて三つ目だけでも、止めたかったのだ。

二つ目の球体はすでにウグの尾に触れて爆発し、今のウグには叫ぶ力すら残っていない。

それでも――決して逃げようとはしない。

残った三つ目の球体の軌道は、紫のマントの力で無理やり停止させられ、ねじ曲げられた。

その一瞬の停止で圧縮されたエネルギーにより、球体は爆発的な速度を得て、夜空のどこかへ撃ち上げられた。

そして――球体が飛んだ方向から、ほどなく遠くでドドの悲鳴が聞こえてきた。

「ナイスショット~」

♢ ♢ ♢ ♢ ♢

勉強部屋の授業が終わり、子どもたちは――

村の中にある、もう使われなくなった“川が流れていた場所”に集まっていた。

子どもたちはロギに『お話遊び』を説明している。

今日はダビの担当で、物語のタイトルは『宇宙勇者』。

今の話はエンディング直前で、宇宙魔王役はレオとエリが担当している。

残りの子どもたちは宇宙勇者として強力なロボットに乗り込み、レオとの最後の戦いを続けていた。

時間の都合で結末まで行けず、今日が最終章だと言っていた。

ロギ:「うん、ここまでは分かった。じゃあ、私は何をすればいいの?」

ダビ:「そう! 話を始めたら、ロギはすぐ私たちの後ろに回って、さっき言った場所に行って、

戦闘スーツを探して着て! 装備を――」

パイはダビの焦った説明に、順番をはっきりさせるため言葉を足した。

パイ:「待って! 始める前に“物語の扉”を開けなきゃ。扉を開く命令は『ドトリ』だよ。」

ロギ:「ドトリ? ここがドトリ村だから『ドトリ』なの? ……なの?えへへ」

ヨナ:「『ドトリ』は“ドトリ”と“ストーリー”を合わせた、私たちの暗号。始める前に『ドトリ』って叫ぶの。」

ロギ:「なるほど~。『ドトリ』って叫べばいいんだ?」

ヨナ:「扉を開く命令の名前が『ドトリ』で、扉を開ける時は――」

パイ:「『ドリトリ トリス』って叫ぶの!」

ロギ:「それ、また何なの?」

レオ:「俺たちだけの暗号だよ。」

[ロギの表情が固まる……]

ロギ:「そうなんだ……扉を開くために『ドトリ』を叫んで、『ドトリ』は『ドリトリ トリス』ってことね。」

エリ:「じゃあ、とりあえず始めよう。やりながら分かる方が早いよ。」

みんな:「よし! じゃあ始める! ほら、みんな自分の位置、分かって立って~!」

子どもたちは慌ただしく動いた。各自の位置があるらしい。

レオとエリは魔王チームとして、勇者チームの反対側――向かい合う場所へ走っていった。

残りの子たちは、見えない想像の――壊れた構造物の陰に隠れるため、ほどよい場所へ移動していく。

ロギはとりあえず適当に立ってから、気まずそうに周りを見回した。

捨てられた木の枝が数本と鍋を見つけたロギは、子どもたちが言っていた“装備”ってこれかな、と思った。

鍋を頭にかぶり、木の枝を武器にして、みんなの方へ歩いていく。

物語を始めるために『ドトリ』を叫ぼうとした、その瞬間――

ダビが、鍋を頭にかぶってのろのろ歩くロギを見つける。

驚いたのと同時に、腹を抱えて笑い出した。

ダビ:「うははははは~~!」

パイとヨナは笑うダビに、どうしたのかと尋ねたが、ダビは笑いで言葉にならない。

パイ:「どうしたの?」

ヨナ:「ダビ、何~?」

ダビ:「あははは~……!」

ダビは笑いながらロギを指差した。

子どもたちは一斉にロギを見たが、誰も笑わなかった。

別に大したことじゃないと思ったのだ。

だがダビだけが、やけに大きな声で笑い続けて――

「なにそれ」と、転げ回るみたいに笑った。

パイ:「ダビ、やめて!」

ダビ:「あははは~!」

ロギは急に足を止めた……何か、傷ついたみたいだ。

そして――頭の鍋をダビに向かって投げつけ、叫んだ。

ロギ:「なにそれ! もうやらない! 私、やらない!」[手に持っていた木の枝も投げ捨てながら]

そして振り返りもせず、どこかへ走りながら叫ぶ。

ロギ:「もう行く! あんたたちだけで遊んで!」

子どもたちは、そんなロギを見て心配になり、切なくなった。

その中でもダビは腹を抱えて笑いながら、鍋を拾い上げ、また笑い出す。

そんなダビを見たパイの胸に、怒りが込み上げた。

パイ:「ダビ、やめろって言ったでしょ!!」[もっと大きな声で叫ぶ]

ダビ:「え?」

ダビは、なぜみんなが恨めしそうな目で自分を見るのか分からなかった。

なんで? ダビは理解できない顔だ。パイがダビを責め立てはじめる。

パイ:「相手が嫌がるまで笑うなんて、どういうこと!? 考えあるの? ないの!?」

レオ:「ダビ、お前ひどいよ。これからどうするんだ?」

エティ:「お兄ちゃん、マジ最悪~」

ダビ:「え? 俺、何か悪いことした?」

パイ:「は?」

パイが本気で怒ってると気づいたダビは、パイを避けて逃げはじめた。

そのダビを追いかけながら、パイは大声で怒鳴る。

パイ:「ダビ! 待て! そこで止まれ~!」

ダビ:「はぁ~? なんで俺にそんな怒るんだよ~」

子どもたちは、そんなダビを呆れた目で見ている。

パイ:「分かってて聞いてんの!?」

ダビ:「分かんない!!」

パイ:「なんで分かんないの! 捕まったら覚悟しなさいよ~!」

ダビ:「うわぁぁ~! 助けて、みんな~!」

……誰もダビを助けたくなかった。

ただ、早く捕まってほしかった。

-2 B END
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