αの愛し子の黙示録(完結)

ビスケット

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起きたら、病院のベッドの上だった。

目覚めた途端、くそ医者が
「おはよう、慎吾君!
発情と処女のダブル卒業おめでとう!
ついに大人のαの仲間入りだね!?」

なんて事を満面の笑顔で言ってきた。

「・・・後の方、良く聞こえなかったみたいなので、もう一回聞いて良いすか?」

「え、ああ、君も無事にαの大人に・・・」

「違う!その前の!」

「もしかして処女卒業の事?」

・・・むしろそれ以外に何がある。
そして、意識を飛ばしていた間に隔離室の中で何があったのかを聞いたのだった―――。


「・・・というわけで、普通なら半日、ごくまれに長くても一日で終わるはずのラットが、君の場合終わりそうもなくて。あのまま自然収束をまっていても、終わらなかった可能性もある。」

俺は衝撃で言葉を失っていた。
そんなことはお構いなしでペラペラおしゃべりが止まらないクソ医者。

「あのままだったら腹上死ならぬ、発情死、なんてことになってたかもね!?」
それは愉快なジョークのつもりなんだろう、クソ医者は今日もクソが絶好調だった。

「なんで。なんで抑制剤打ってくれなかったんすか・・・!!!」
俺はクソ医者に詰め寄って言った。

「それは抑制剤は体に良くないから…」

そんなの分かってる。でも。
「でも、緊急のヒート対策では使うんすよね!?今回だって緊急だったじゃないすか!」

「あのね、君はαだけど、エクストラなんだ。
僕はこれからも、君の体のことを正確に知ることを何よりも優先する。
それが最終的に君を守ることになるからだ。
未だ成長途中の君の体に どんな影響が出るか分からない抑制剤を投与することは 医師として絶対に許可しないよ。」

「でも、でも、そのせいで桐生が…」

「ああ、それなら気にしなくて大丈夫さ。
αやΩにとって、性衝動というのはどうにも抗えないものだからね。
悪意がない相手を責めても意味がないということは共通認識なんだ。

自分ではどうしようもない大災害に巻き込まれたとしたら、君はただ受け入れるしかないだろう?
それとおんなじなんだよ。
君はもともとβだから、αやΩの性の在り様を理解できないのかもしれないね。
重明君はただラットに苦しむ君を助けた。それ以上でも以下でもないから君もいつも通りにしていればいいよ。
・・・というわけで。重明君入ってきていいよ!」

入ります、という声がドア越しに聞こえて、ガラッと扉が開いて桐生が病室に入ってきた。

「・・・小山田。目が覚めたみたいで良かったな。」
桐生は穏やかに俺を見ながらそう言った。

「桐生・・・ごめん、俺のせいで、お前に・・・」

「小山田、城田さんの話は本当のことだ。
俺はあの時のことは人助けだったと思っている。
だから謝るな。お前はただありがとうって一言いえばいいんだよ。」

「なんだよ、お前 心までイケメンとか、どんだけだよ・・・。」
勝手に涙がじわじわ染みてきて。

「ありがとう・・・桐生・・・」

そういって俺は顔を手で覆いながら言ったのだった。
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