20 / 82
ありがとう
しおりを挟む
起きたら、病院のベッドの上だった。
目覚めた途端、くそ医者が
「おはよう、慎吾君!
発情と処女のダブル卒業おめでとう!
ついに大人のαの仲間入りだね!?」
なんて事を満面の笑顔で言ってきた。
「・・・後の方、良く聞こえなかったみたいなので、もう一回聞いて良いすか?」
「え、ああ、君も無事にαの大人に・・・」
「違う!その前の!」
「もしかして処女卒業の事?」
・・・むしろそれ以外に何がある。
そして、意識を飛ばしていた間に隔離室の中で何があったのかを聞いたのだった―――。
「・・・というわけで、普通なら半日、ごくまれに長くても一日で終わるはずのラットが、君の場合終わりそうもなくて。あのまま自然収束をまっていても、終わらなかった可能性もある。」
俺は衝撃で言葉を失っていた。
そんなことはお構いなしでペラペラおしゃべりが止まらないクソ医者。
「あのままだったら腹上死ならぬ、発情死、なんてことになってたかもね!?」
それは愉快なジョークのつもりなんだろう、クソ医者は今日もクソが絶好調だった。
「なんで。なんで抑制剤打ってくれなかったんすか・・・!!!」
俺はクソ医者に詰め寄って言った。
「それは抑制剤は体に良くないから…」
そんなの分かってる。でも。
「でも、緊急のヒート対策では使うんすよね!?今回だって緊急だったじゃないすか!」
「あのね、君はαだけど、エクストラなんだ。
僕はこれからも、君の体のことを正確に知ることを何よりも優先する。
それが最終的に君を守ることになるからだ。
未だ成長途中の君の体に どんな影響が出るか分からない抑制剤を投与することは 医師として絶対に許可しないよ。」
「でも、でも、そのせいで桐生が…」
「ああ、それなら気にしなくて大丈夫さ。
αやΩにとって、性衝動というのはどうにも抗えないものだからね。
悪意がない相手を責めても意味がないということは共通認識なんだ。
自分ではどうしようもない大災害に巻き込まれたとしたら、君はただ受け入れるしかないだろう?
それとおんなじなんだよ。
君はもともとβだから、αやΩの性の在り様を理解できないのかもしれないね。
重明君はただラットに苦しむ君を助けた。それ以上でも以下でもないから君もいつも通りにしていればいいよ。
・・・というわけで。重明君入ってきていいよ!」
入ります、という声がドア越しに聞こえて、ガラッと扉が開いて桐生が病室に入ってきた。
「・・・小山田。目が覚めたみたいで良かったな。」
桐生は穏やかに俺を見ながらそう言った。
「桐生・・・ごめん、俺のせいで、お前に・・・」
「小山田、城田さんの話は本当のことだ。
俺はあの時のことは人助けだったと思っている。
だから謝るな。お前はただありがとうって一言いえばいいんだよ。」
「なんだよ、お前 心までイケメンとか、どんだけだよ・・・。」
勝手に涙がじわじわ染みてきて。
「ありがとう・・・桐生・・・」
そういって俺は顔を手で覆いながら言ったのだった。
目覚めた途端、くそ医者が
「おはよう、慎吾君!
発情と処女のダブル卒業おめでとう!
ついに大人のαの仲間入りだね!?」
なんて事を満面の笑顔で言ってきた。
「・・・後の方、良く聞こえなかったみたいなので、もう一回聞いて良いすか?」
「え、ああ、君も無事にαの大人に・・・」
「違う!その前の!」
「もしかして処女卒業の事?」
・・・むしろそれ以外に何がある。
そして、意識を飛ばしていた間に隔離室の中で何があったのかを聞いたのだった―――。
「・・・というわけで、普通なら半日、ごくまれに長くても一日で終わるはずのラットが、君の場合終わりそうもなくて。あのまま自然収束をまっていても、終わらなかった可能性もある。」
俺は衝撃で言葉を失っていた。
そんなことはお構いなしでペラペラおしゃべりが止まらないクソ医者。
「あのままだったら腹上死ならぬ、発情死、なんてことになってたかもね!?」
それは愉快なジョークのつもりなんだろう、クソ医者は今日もクソが絶好調だった。
「なんで。なんで抑制剤打ってくれなかったんすか・・・!!!」
俺はクソ医者に詰め寄って言った。
「それは抑制剤は体に良くないから…」
そんなの分かってる。でも。
「でも、緊急のヒート対策では使うんすよね!?今回だって緊急だったじゃないすか!」
「あのね、君はαだけど、エクストラなんだ。
僕はこれからも、君の体のことを正確に知ることを何よりも優先する。
それが最終的に君を守ることになるからだ。
未だ成長途中の君の体に どんな影響が出るか分からない抑制剤を投与することは 医師として絶対に許可しないよ。」
「でも、でも、そのせいで桐生が…」
「ああ、それなら気にしなくて大丈夫さ。
αやΩにとって、性衝動というのはどうにも抗えないものだからね。
悪意がない相手を責めても意味がないということは共通認識なんだ。
自分ではどうしようもない大災害に巻き込まれたとしたら、君はただ受け入れるしかないだろう?
それとおんなじなんだよ。
君はもともとβだから、αやΩの性の在り様を理解できないのかもしれないね。
重明君はただラットに苦しむ君を助けた。それ以上でも以下でもないから君もいつも通りにしていればいいよ。
・・・というわけで。重明君入ってきていいよ!」
入ります、という声がドア越しに聞こえて、ガラッと扉が開いて桐生が病室に入ってきた。
「・・・小山田。目が覚めたみたいで良かったな。」
桐生は穏やかに俺を見ながらそう言った。
「桐生・・・ごめん、俺のせいで、お前に・・・」
「小山田、城田さんの話は本当のことだ。
俺はあの時のことは人助けだったと思っている。
だから謝るな。お前はただありがとうって一言いえばいいんだよ。」
「なんだよ、お前 心までイケメンとか、どんだけだよ・・・。」
勝手に涙がじわじわ染みてきて。
「ありがとう・・・桐生・・・」
そういって俺は顔を手で覆いながら言ったのだった。
42
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です
ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」
「では、契約結婚といたしましょう」
そうして今の夫と結婚したシドローネ。
夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。
彼には愛するひとがいる。
それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
αが離してくれない
雪兎
BL
運命の番じゃないのに、αの彼は僕を離さない――。
Ωとして生まれた僕は、発情期を抑える薬を使いながら、普通の生活を目指していた。
でもある日、隣の席の無口なαが、僕の香りに気づいてしまって……。
これは、番じゃないふたりの、近すぎる距離で始まる、運命から少しはずれた恋の話。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる