αの愛し子の黙示録(完結)

ビスケット

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小山田泣いたってよ

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筑葉高校のカフェテラスで、優雅にお茶を飲みながら歓談する青年たちがいた。

「今年の交流会、夜会ではなくなったって?」
「ああ。昼間に茶会になったらしいじゃないか。しかも制服着用。」
「始まって以来じゃないか?そんな交流会は。」
「なぜ夜会じゃないのかと、桜花学園の生徒会と相当揉めたとか聞いた。」
「そりゃあ めんどくさそうだな。それでなんでそんなことになったんだ?」
「仕方が無い、小山田がな、会費が高すぎるって駄々をこねたらしい。」
「小山田が?」
「今年はそんなに高額だったのか?」
「いや、例年通りだった。」
「すると、5万だろう?」
「ああ、小山田には厳しいのか・・・。」
「だがそんなの何とでも・・・何なら俺が出してやるが。」
「皆そう言ったんだがな、あいつ怒りだしたらしい。自分と同じ 親のすねかじりのくせにってさ。」
「いや皆それなりに資産を持ってるし、何かしら稼いでるだろ。」
「ああ。譲り受けた株の配当やら何やらで投資してない奴なんていない。」

馬鹿だな、小山田は・・・。そんな空気が流れる。

「それでも適当に理由つけて何とでもしてやれたはずだ、あいつは一応主催者側の生徒会役員やってるんだ。」
「それが、ドレスコードのところでな。」
「ドレスコード?」
「ドレスコードあり、の意味が分かってなさそうだったんで去年の写真を見せられて。」
「・・・泣いたらしい。」

皆の目が、目に見えて険しくなる。
「・・・どういうことだ。」

「スーツがないから参加できないと。」
その言葉に、すぐに空気が緩む。

「・・・は?それだけ?」
「ウチはブレザーなんだ、それで参加すれば良いじゃないか。」
「大して違わないだろ。」
「そう言ったんだが、小山田の中ではそれでは問題があったらしい。」

なんなんだ、小山田は・・・
皆が首をかしげる。

「それで、Ωと番えないのは諦めたのに、見ることも出来ないって男泣きした、と・・・」

仕方が無い奴だなぁ・・・。皆がため息をつく。

「それで。誰も礼服を作ってやると言わなかったのか?なら俺が作ってやるか。交流会まで、それくらいの時間はまだあるだろう。」
「仕立てる時間がなければ中等部にいる俺の弟のスーツを小山田にやっても良い。袖と裾を詰めれば着れるだろ。」

「いや、制服が嫌なら作ってやるって生徒会の奴らも言ったみたいだ。
ポケットマネーが嫌なら生徒会活動の一環だから、生徒会活動費から出すと。
そしたら、施しはけっこうだと小山田が。」

へそを曲げて恨みがましい目でしくしく泣く男が目に浮かぶ。
そんな小山田を残して、交流会を楽しめる気がしなかった。

・・・しょうがない。
・・・じゃあ、仕方が無いな。

そんなやりとりがそこかしこで繰り広げられて、
特に反対の声が上がることなく制服交流会が決定したのだった。
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