αの愛し子の黙示録(完結)

ビスケット

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小山田 梱包されるの巻

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桐生重明は腕に抱いた芋虫を横抱きに運びながら生徒会室での騒動を思い出していた。



生徒会室で、桜花を待っていた筑葉生徒会の面々は、暇に飽かせて小山田をからかって遊んでいた。

小山田がいつも適当な感じの髪を整髪し、そわそわと浮ついた様子なのが面白すぎて格好の玩具だったからだ。

もう間もなく桜花が到着するというときに、小山田にラットがきた。
小山田は前を押さえると、そこに向かって血反吐に塗れた恨み節をぶつけていた。

「このドラ息子!よりにもよってなんで今日なんだぁぁ!この親不孝ものぉぉ~!!
うう・・・せっかくこれからΩが来るのに!
一目だけでも見たかった・・・」

皆こいつ馬鹿だなと思いながら、会長が指示を飛ばしたその時、ノックの音が聞こえ、蝶子さんの少し不機嫌な声が扉越しに聞こえた。
桜花生徒会が到着したのだった。

その時、小山田の喉からヒュっと変な音がしたので目を向けると、発情して真っ赤なのに真っ青という相反する様相を呈していた。

会長がドア越しに対応し、桜花に先に行って貰うようにと話して扉は閉められ、とりあえず事なきを得た。

すぐに俺は言った。
「さっさとこいつを隔離室に連れて行きます。おい庄司片方手伝え。」と。
両側から肩を担いで引きずっていく、いつもの運搬スタイルで小山田を隔離室送りにするつもりだった。
だがここで小山田の馬鹿が炸裂した。

「嫌だ、こんな前腫らしながら出て行って、もし、もし、万が一、桜花の子に見られたらどうするんだ!
もしそうなったら俺は・・・終わる!」

「そうか、それなら自分のジャケットを腰に巻いとけ。庄司行くぞ。」

そう小山田を軽くいなして庄司に声を掛けた。
すると小山田が吐き捨てるように言った。

「はっ、これだから男子校は!
お前は何にも分かってない!
男ばっかだから、女の子のことが何にも分かってないんだ!」

「・・・」
いや少なくともお前よりは知っているつもりだ。皆の声が聞こえた気がした。

「共学にいた俺には分かる!
俺がはぁはぁ言いながらちんこ抑えているところをちょっとでも見られてみろ、それが桜花全体に知れ渡るのは時間の問題なんだよ!女子の発信力舐めんなよ!
そんで交流会が開かれる頃にはなぜか、俺はΩ相手にちんこ腫らした変態αだって事になって、まともに相手して貰えなくなるんだ!」

「・・・何を言っているんだお前は。」
俺のつぶやきは恐らくここに居る皆の総意だったに違いない。
すると、それを敏感に察したのか、小山田は悲痛な声を震わせた。

「ちゃんと言うことを聞いてくれる利口なちんこを持ったお前達に、俺の気持ちは分からない!」

 確かにな。
小山田のアホな言葉に、皆がつい そう思ってしまったその時、

「・・・じゃあどうする。」
庄司が冷静に問うた。

「頼む! 周りから俺が見えないように、何かで隠して運んで欲しい。ちんこに伸びる この手を抑えられている今のうちに・・・っ!!」

・・・えぇ~めんどくさ。
皆そう思ったはずだが、副会長の柘植つげさんが深いため息をついて動いた。

「仕方が無い。
桜花をあまり待たせるわけにはいかないだろうし、さっさと小山田を何とかするぞ。
確かその奥の書庫に大判のブランケットがあったはずだ。それで隠してやれ。どちらにしろ書記が二人とも居ないのは困る。小山田を持ちやすいように梱包したら、桐生だけで運んでくれ。」

「はい。」

そうして、あまりと言えばあまりな柘植さんの指示により、小山田はブランケットにぐるぐる巻きにされることになった。
皆で小山田の梱包作業をしているうちに思いのほかそれが楽しくなってきて、つい力が入ってしまった。
その結果、ミイラのようにきっちり隙間なく完璧な仕上がりになってしまったのだった・・・。


俺の腕の中で、小山田は発情なのか、梱包されて暑いせいなのか、つるんとした鼻の頭にかすかに汗をかいていた。
それが小さな子供のようで俺はつい声を掛けてしまった。

「小山田、すぐに保健室に連れて行ってやるからな。落とされたくなかったらそのまま大人しくしていろよ。」

小山田は目をぎゅっとつぶって逃げ場のない熱に浮かされたように、時折うめき声を立てていた。
本格的なラットが始まりかけているようだった。

その時急に、シャワールームでの小山田の姿が頭の中にフラッシュバックした。

「小山田?・・・もう聞こえてないか。」

俺は小山田の鼻の汗をそっと舐め取ると、赤く濡れたような唇をかつてのように貪ったのだった。
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